PSU小説

ミュラさんが活躍する、PSUの二次創作小説です。

PSU学園小説 プロローグ

                おことわり

 

この作品は、セガから発売されているオンラインゲーム。ファンタシースターユニバースシリーズを元に、勝手な解釈と設定を持ち込んで書かれた二次創作物です。

そういったものが苦手という方や、不愉快に思うファンの方もいるかと思います。

まして、作者は素人であり文章もあまり読みやすいものではありません。全ては作者自身の自己満足のために書かれたものですので、本来読むことをお勧めはいたしません。

それでも、読んでやる!!という方だけお読みください。                                             

                                                                                                                      

                   迎える者たち

 

ガーディアンズ訓練校の設備は、最新かつ最高のものが揃えられている。

それは訓練場の、環境設備にしても例外ではない。

このGコロニーで、赤く燃えるような夕日が見たかったら、訓練場にくればそれが叶う。

「美しい」

その光景を遠くから眺め、ヘビーガンは誰聞こえることなくつぶやく。

真っ赤な太陽がそこにあった。

太陽は赤茶けた荒野をさらに赤く染め、灼熱の大地を作り出す。

大気がゆがんで見えるほどの強烈な暑さ、と乾いた空気。しかしそれは本物ではない。すべて再現されたものである。

高性能の設備は、決してその風景を楽しむためのものではない。それは過酷なモトゥブの環境を再現するためのものであるはずだった。

ヘビーガンはキャストである。

そして多くのキャストは、自分のように感じることは無いことを彼は知っている。

この光景も、肌で感じる暑さも、焼けるような土の匂いも、全て造られたものだ。そんなものに感慨を持つことなど彼らの中では考えられないことだろう。

しかしヘビーガンは自分はそれでいいと思っている。

赤く染まった訓練場の500メートルトラックでは、今も何人もの訓練生が鍛錬に励んでいる。

トラックを走っていた、訓練生の少女が転んだ。

すると、同じチームの仲間なのだろう。先を走っていた集団から少年1人、転んだ人少女に駆け寄って手を差し伸べる。

しかし少女はその手を振り払うと、自分の力で立ち上がりまた走り出す。そして少年はその少し後ろを少女のペースにあわせて走る。

「美しい・・・・・・」

訓練生の足元に伸びた長い影ぼうしを眺めながら、彼の口からまた同じ言葉が漏れる。

彼が心打たれたのは、高性能な機械が見せる風景だけでは決して無い。

ヘビーガンは、同盟軍第13独立部隊所属の中尉であった。

SEED事件以前では考えられなかった事だが、昨今ではガーディアンズと同盟軍の間で連携作戦が行われることも多くなってきている。

そのためにガーディアンズでは、訓練校の教官として同盟軍から顧問を招き、軍隊式の訓練をそのカリキュラムに取り込むことになった。

ガーディアンズ側から持ちかけられたこの話に、ヘビーガンは志願してその役割を引き受けた。彼はその当時の同盟軍キャストの中では珍しく多種族に対して偏見をもっていなかったのだ。

いや、むしろ彼は、キャスト種族としては極めて珍しいことに「人」が好きだった。

「中尉。訓練生の様子はどうかの?」

背後から声がした。振り返ると小柄な老キャスト。もし自分が女性であったならここで一騒動あったところだろうなと、ヘビーガンは思う。しかし、幸い男性である自分は尻をガードする必要は無い。

「ネーヴ校長。お戻りになられていたのですか」

ルカイム・ネーヴ。このガーディアンズ訓練校の校長だ。

しかし彼はここ最近ガーディアンズとして現場へ赴くことが多く、訓練校を留守にしがちにしていた。

「こっちはようやく一区切りついての。留守中、中尉には迷惑をかけてすまんかったの」

「いえ。こっちも日々色々学ばせてもらってますよ。熱意ある若者を見るのはいいものですね。確かに効率的では無いかもしれ無いが、ここには軍の士官学校には無かったものがあります」

ふぉふぉふぉと、ネーヴが笑う。

「今からそう老け込むこともなかろう?ところで、最近の様子はどうじゃ?しばらく見れんかったが、訓練は進んでいるかの?」

「それなのですが・・・・・・」

ヘビーガンは携帯ビジフォンから入学予定者のデータを取り出した。

その中から、一人のデータを開く。中肉中背で、穏やかで人のよさそうな男がその場に映し出された。

「なぜ教会の守護騎士がここに来るのですか・・・・・・?」

ネーヴはそれに対して、やや言いづらそうに、「むぅ・・・・・・」とうなる。

「・・・・・・それについては一応教会側にも問い合わせてみたんじゃが。どうも教会はこの件にはなんの意図も無いらしくての。処遇は任せるから好きにしてくれと返してきおった」

『騎士』。それは古今東西さまざまな物語の主人公として、時に悪役として描かれてきた、最強無敵のヒーロー。

元の存在は今より遥か昔、今の文明がまだ幾つもの国家に分かれていたころ、教会騎士といわれる者たちが、ある地方を治めていたのがはじまりとされる。

長い時代の変化の中で彼らも姿を消していったとされているが、実際のところ、『騎士』は今でもその役割を変えて現存しており、ときおり気まぐれのようにグラールの歴史に介入する。

その強さはまさに一騎当千。たった一人で戦局を左右するとまで言われ、その活躍はかつて在った数々の戦場で多くの伝説を残している。

そして履歴書に堂々と『守護騎士』と書いてきたのが、フェイト・アストレイという男である。

ただのホラ吹きかとも思われたが、面接や入学試験を担当した者に言わせると、どうも本物らしい。

「そうですか。ならば、早々に卒業いただき、現場で存分にその腕を振るっていただきたいですな」

「アストレイ氏がそれを望めばの。どんな経歴を持とうと、ここでは一介の訓練生にすぎん。全ては当人の意思しだいじゃて・・・・・・」

「ははは。まぁ、そうなのですが」

世界がSEEDの脅威に晒されている今日、せっかくの技能を何故活かさないのか?

彼が噂どおりの力を持っているならば、いったいどれだけの人を救えるのだろう。それを思うとヘビーガンは歯がゆくて仕方が無い。

「ふぉふぉ。こん期の新人はなかなか変り種がそろってるのぅ。守護騎士殿の他にも、モトゥブの狩人に、各機関にブラックリスト入りしているA級ハッカーまでいおる。SEED事件以来ガーディアンズには各方面から人材が集まってきておる。そういったのは頼もしいが、クセも強い・・・・・・。果たして使えるように出来るか、我々の腕のみせどころじゃ」

「ええ。また、財界や同盟軍に強いコネクションを持っている者もいます」

「大手カスタムガンメーカー。ガン・マイト・ウェッソンの御曹司に、外宇宙艦隊指令、マゼラン・モガミ提督のご息女か・・・・・・。こりゃ、やりづらいのぅ」

ガン・マイト・ウェッソン社。

銃器類のカスタムパーツメーカーとして、有名な会社である。フォトンリアクターの製造こそしていないが、この会社の製品は実用的で質が高いため、世界中から支持されている。実際、テノラ・ワークスの銃では、フォトンリアクター以外の大半の製造を、ガン・マイト・ウェッソンに委託することでその品質を保っているとさえ言われていた。

そして、統合軍屈指の名将として知られるマゼラン・モガミ准将。

キャスト社会の同盟軍において、ニューマンでありながら優れた知略と人柄によって外宇宙艦隊指揮官にまでなった人物である。

「そして、あの、吉乃 アレクの妹・・・・・・」

やれやれといった感じでヘビーガンが言う。

ネーブの高笑いが、訓練場の高く見える空へと響いた。

「姉の方は、結局気づかんと卒業していったようじゃが、今度来る妹の方はどうなることか・・・・・・。見ものじゃのう」

訓練生を統括する組織。それが学徒会である。その業務はアルバイトの斡旋や、訓練生の間すごす寮内でのまとめ役といったものであったが、何年か前に吉乃 アレクという男がその代表に就任してからその様相は一変した。

彼は賛同者を集うと、非合法すれすれな危険な依頼や、利益無視の奉仕活動など、企業であるガーディアンズでは受けることのできないような仕事を、訓練生のアルバイトの斡旋を名目に、引き受け始めたである。

今では彼等を、裏のガーディアンズと人は言う。

もちろん教官陣からしてみれば、卒業を放棄して勝手な活動に明け暮れる不良集団なわけだが、

ガーディアンズ本社がようやくその活動の実態を掴み始めたころには、彼らが作り上げていったコネクションは各分野にひろがり、その影響力、活動資金も馬鹿にならないものになっていた。

現在で寮の運営や、訓練校の備品管理などは学徒会が行っており、ガーディアンズ本社もその活動を容認せざるをえなくなってしまった。

この訓練場の基材も、学徒会の提供によるものだ。

「吉乃 メリアは将来有望な訓練生です。人格的に問題無く、素質も高い。そして確固たる目標を持っています。おそらく学徒会に関わることはないでしょう。しかし、彼女に姉がいたとは・・・・・・。さぞ優秀なガーディアンズなのでしょうね」

「んむ。あれはいいものじゃった・・・・・・」

つぶやくように言うネーヴ。

恍惚、遠くを見つめるかのようなネーヴの表情は、そう呼ぶのがふさわしいものだった。

何かの感触を思い出すかのように、ネーヴが後ろで組んだその手がわきわきと動かしてていることに、ヘビーガンが気づくことは無かったが、その様子から、メリアの姉がすばらしい逸材であったとヘビーガンは解釈する。

「ほう。その姉君には、機会があればわたしも会ってみたいですな。」

「そうじゃのう。今、どこで何をしておるのかのう・・・・・・」

 

そのころ。

「弱った・・・・・・」

ガーディアンズ訓練校。その一角にある訓練生寮。

その最上階には、訓練生を統括するための組織、学徒会のためのフロアがある。

そして、その最も奥。会長室のプレートがかかる豪奢な扉の向こう側。上等な調度品がそろえられたその部屋で、部屋の主。学徒会長である吉乃 アレクはため息をついた。

「次女は長女にべったりだったからな。ここに来ることは当然予想しておくべきことではあったか・・・・・・」

舞い込んできた悩みの種に、頭を抱え、傍らにたつキャストの少女にぼやくように言う。

“Fi-fa” F2000Proto吉乃家に仕えていた教育係であった彼女は、現在アレクの補佐役として訓練校に在籍している。

「やはりまた、メリア様には秘密になさるのですか?」

「当たり前だろう。俺はパルムで真面目に会社員やってることになってるからな」

「はぁ・・・・・・」

妹達が笑って暮らせる世界を創る。それは、妹達に知られること無く行うことが彼の美学だった。

「フィー。おまえこそ、俺の傍にいつまでもいなくていいんだぞ?長女が卒業するとき、一緒についていくものだと思っていたんだが?」

「いえ、貴方を手助けすることが結果的にお二人のためになると信じていますので」

一番将来が心配で、目が話せないのは貴方です。とは、思っても口には出さない。

「うむ。わかってるじゃないか。妹達が幸せに暮らせる世界をつくるには、俺が世界の王様になるのが一番だからな」

そのため、必要な人脈作りのためにと入ってみたガーディアンズだったが、そこで始めた学徒会の活動にすっかりのめりこみ、いつしか数年が経つ。今では裏ガーディアンズと呼ばれるほどまでの規模にまで組織を拡大することができた。

「また、影からこっそり手助けなさるのですか?」

かつてメリアの姉が在学していた時、その卒業のため散々奔走させられたのは彼女だ。

「まさか。次女のことなら心配なんてするだけ無駄だ。手を貸さずとも、すぐ卒業して長女の所にとんでいくだろう。あいつは昔から出来が良いからな」

「さすがアレク様。メリア様のことをよくわかっていらっしゃるのですね」

「そりゃ、お兄ちゃんだからな」

「しかし、いかがいたしましょう?メリア様がご在学の間、アレク様も学徒会長として姿を見せないわけにはいかないでしょう?」

「それはそうだ。新人歓迎のスピーチはちゃんとやるぞ。今回は、ぜひお友達になっておきたいVIPのご子息、ご令嬢もおられるからな」

アレクは腕を組み、しばらく考えていたがやがて顔を上げて言った。

「そうだな。しかたない。また、あの手で行くか」

「クレア様の時に使ったあの手ですか?」

「そうだ。何、また半年ほどの辛抱さ」

アレクは席を立つと、部屋の隅へと足を運ぶ。そこには骨董品の壷や皿、武具といったものが並べて飾られている。

アレクが手に取ったのは、派手な装飾された仮面だった。

前に使ってからほったらかしていたが、掃除や手入れは“Fi-fa” がまめにやってくれているからぴかぴかだ。

それを被り、振り返る。

「皆に伝えてくれ、今日から俺はマスク・オブ・カイチョーだ!!」

“Fi-fa” は小さくため息をついて、自分用の仮面を取り出した。

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PSU二次創作小説「星霊の守護者・上」

                  おことわり

この作品は、セガから発売されているオンラインゲーム。ファンタシースターユニバースシリーズを元に、勝手な解釈と設定を持ち込んで書かれた二次創作物です。

そういったものが苦手という方や、不愉快に思うファンの方もいるかと思います。

まして、作者は素人であり文章もあまり読みやすいものではありません。全ては作者自身の自己満足のために書かれたものですので、本来読むことをお勧めはいたしません。

しかし、どうしても読んでやる!!という方は、後の感情の処理は全て自己責任でお願いいたします。

 

              ~星霊の盾・上~

 

早朝の支天閣に鋭い音が響く。

それは二人の少女が、激しく剣を打ち合わせる音だ。

一人は活動的なショートカットの髪型に、10代とは思えない大人びた雰囲気を持つ少女。カレン・エラ。

小ぶりの一対の小剣と、しなやかな身体から繰り出される体術を組み合わせた、アクロバティックな動きは、まるで舞を舞うかのように優雅だ。

相対するのは、警衛士の制服を着た、仮面をつけた少女だった。カレンより頭ひとつは背の低い小さな身体に、細い両手に不釣合いな二刀流。長い黒髪をなびかせながら、俊敏で縦横無尽な動きでカレンへと打ち込んでいく。

カレンが優雅に宙を舞う蝶ならば、仮面の少女は小刻みに高速で飛び回るトンボといったところだろう。

深く身体を沈ませ、低い姿勢から強く踏み込む。ばねが跳ねるかのような急加速。一瞬で間合いを詰めて必殺の突きをカレンに放つ。

しかしカレンも、その突きを小剣に沿わせる用にいなして交わすと、そのまま身体をひねり片足を軸に、まるでコンパスのように身体を回転させた、強烈な回し蹴りで返礼する。

その蹴りが少女のちょうど仮面の鼻先を捕らえる寸前のところで、少女は身体を後方へと大きくそらせて回避。ばく転で後方へと距離をとると、攻防が逆転。

追撃をかけるカレン。次々繰り出されるカレンの攻撃。それを仮面の少女は巧みにかわす。
一進一退の激しい攻防が続く。傍目には互角に見えるが、カレンの表情にはまだ余裕がある。

かすかに笑みを浮かべたカレンは少女との勝負を心から楽しんでいるようだ。

相手の顔は仮面に隠されて見えないが、もしこの場に達人と呼ばれるものがいたならば、この少女に余裕がないことを見抜くことができただろう。

生き生きと剣を振るうカレンに対し、少女の動きは次第に単調なものへとなってきている。

やがて、一瞬の隙をついたカレンが、相手の剣をかいくぐり、その眉間に小剣の切っ先を突きつけた。

数秒の沈黙。

やがて仮面の少女が力なく剣を降ろした。

「まいりました・・・」

その声はまだ幼い。おそらくカレンより幾つか年下なのだろう。

「こちらこそ有意義だった。ありがとうミュラ」

そしてカレンも両手に持った小剣を納めた。

 

パチパチ・・・。

カレンとミュラと呼ばれた仮面の少女が、互いに向き合い礼をしたところで小さな拍手が鳴った。

その場にいたもう一人の人物からだ。

カレンの双子の妹であり、教団の象徴。現幻視の巫女。ミレイ・ミクナである。

双子であるがゆえに、ミレイはカレンに背格好と顔立ちがよく似ている。傍目につく大きな違いは、その長い髪くらいだろうか。

しかし細かく言うなれば、カレンよりやや女性らしく丸みを帯びた身体つきや、カレンより柔和で穏やかな雰囲気など、並んで見比べなければ双子であるどころか、姉妹である事さえ気が付くものは少ないだろう。

「今日もお見事でしたわ、姉さん、ミュラ」

ミュラと呼ばれた仮面の少女は、ミレイを前にして深く頭を下げて礼をする

彼女、ミュラ・ルルホは近衛警邏隊に所属する少女である。

「恐れ入りますミレイ様。申し訳ありません。また勝てませんでした・・・」

教団の象徴たるミレイを前にして、一武官としての一定の敬意こそはらってはいるものの、ミュラの口調やしぐさはどこか砕けていて、それはまるで学校生活における先輩、後輩の関係での話し方に近い。

ミレイにしてもそんなミュラの態度を気にする様子も無いようだ。

カレンは詳しく聞いているわけではないが、ミレイとミュラは幼いころからの知り合いらしい。

「うぅ・・・、連敗記録がまた更新です・・・」

カレンが客人として来てからの二週間、ミュラは傍付きの護衛官としてミレイ、カレンと共にここ支天閣で生活している。

カレンとの朝稽古もそれ以来続いているが、それはミュラの連敗記録と一致する。

守るべきミレイの前で客人であるカレンに、連日負け続けているのだから、護衛官としてミュラは立つ瀬が無い。

その表情は仮面で見えないが、肩を落としたその様子から、それなりにへこんでいるようだ。

カレンはそんな彼女に優しく笑いかける。

「ふふ、その歳でそれだけの腕がありながら、ミュラは欲張りだな」

現在ミュラは14歳。カレンとは3つ歳の開きがある。

しかし、ただの年月の差だけでは無いとミュラは感じていた。

身体能力や技量にそれほどの差は感じないのだが、彼女の剣には底の見えない懐の深さがある。

おそらくそれが、経験してきた修羅場の差なのだろう。

過酷な現場、極限状態で培われてきた判断力や応用力、また精神的な余裕。それらが技術だけでは越えられない、厚い壁となってミュラの前に立ちふさがっているのだ。

カレンがガーディアンズになったのは、今の自分と同じ14歳だったらしい。

あと数年歳を重ねたとき、自分は彼女に追いつけているのだろうか?

「それにしても、ガーディアンズは本当に腕がたつのですね。この本山でもミュラに勝てるものはそうはいないというのに」

ミュラの心境など、お構いなしに、ころころと穏やかに微笑むミレイに、ミュラも息を荒げて反論する。

「笑い事ではありませんミレイ様!!わたしには近衛警邏隊の名誉がかかってるです!!」

近衛警邏隊は巫女を守るために存在する。

しかしそれは、名誉職としての意味合いが強く、また危険も少ないことからその大半は名家の出身者などで占められており、その能力にはかねてから疑問視する声も多かった。

その上先日、ミレイの暗殺未遂事件が起こり、それをガーディアンズに助けられるということがあったことから、近衛警邏隊は現在教団内で、肩身の狭い思いをしているのだ。

しかもここ数日は、一般庶民の出身ではあるが、腕と才能を買われて入隊した、期待のホープであるミュラが、ガーディアンズの客人に連敗続きであるという噂がすでに広がっており、ばつの悪さにさらなる拍車をかけることになっていた。

「ん・・・。最近ごはんのおかわりがしづらいんです・・・」

「あはは。それは大変だな」

「カレン様まで・・・。もう、笑い事じゃないのに・・・。最近食堂で、ごはんの盛り方が少ないような気がするんです・・・」

しょんぼりと声を落とすミュラ。それを見てカレンとミレイが同じタイミングで同時にふき出す。

「ん・・・?何がおかしいんですか?」

声を上げて笑う二人にむすっとした声で言う。仮面の下にわずかに見えるミュラの頬が、やや赤みを帯びて膨れているのが見て取れた。

ミレイとカレンは、ひとしきり笑うとミュラをなだめる。

「すまない。笑ってわるかった。ふふふ・・・」

「うふふ、ごめんなさい。でも、食堂の方たちは決してミュラを悪く思ってはいませんよ?ミュラは姉さんと稽古するようになって、食べる量増えたでしょう?」

「ん・・・。それは、力使うんですから仕方ないじゃないですか」

「ああ、そうだな。でも丼で食べるならせめて3杯までにしておけということだ」

 

「そういえば、私たちガーディアンズと、ミレイが関わった事件のとき、ミュラの姿が見えなかったが、

あのときミュラがいたなら事態が変わっていたかもしれないな」

そう、たしかにガーディアンズがミレイの危機を救ったのは二度あった。

一度目は星霊祭の最中に暴漢が襲い掛かるという事件。

二度目がミレイの乗るシャトルに細工が施され、危険な原住生物が生息する森深くに墜落するという事件。

偶然にも二度ともカレンとその仲間が関わっていたのだが、いずれの事件にもミレイの傍らにこの小さな少女はいなかった。

カレンはミュラを励ますつもりで言ったのだろう。しかし、ミュラとミレイはそれについては苦笑することしかできない。

それはどちらも、星霊祭などの重要な場での警護では、名家出身の者が警護を勤めているという、教団と警邏隊の古い伝統が招いた失態だったからだ。

腕が立つとはいえ、庶民の出身で職歴も浅いため、近衛警邏隊内でのミュラの立場は低い。そのためにミュラは星霊祭期間中、警護仕事を外されていたのである。

だがさすがに事件以降、その体質も変わろうとする動きも出始めている。ミレイの休養期間中、ミュラがミレイの傍突きの護衛官として、共に生活していたのもそのためだ。

「ん・・・。ごめんなさい・・・」

「いや、ミュラがあやまることじゃないだろう?」

「そうですよ。それにミュラには他に大事な用があったでしょう?」

ミレイが携帯ビジフォンをいじると、星霊祭中の映像が映し出された。

それは社で行われた巫女神楽の様子だった。大勢の大衆のまえで、舞う白と赤の巫女装束を着た少女が伝統音楽にあわせて舞い踊る。

「ほう?これはもしかしてミュラなのか?」

舞手の少女の顔はこれまた仮面で隠されてはいたが、小柄な体つきはミュラのものと一致する。

「わわわっ!?ミレイ様、なぜそれを!?」

慌てて声を上げたミュラが、空間投影された画面を必死に手で覆い隠す。

「うふふ。妹弟子の晴れの舞台ですもの。本当はわたしも見に行きたかったのですけれど、どうしても予定が合わなかったので、ナズナ先生に頼んで送ってもらったんですよ」

ミレイの言う「ナズナ先生」というのは、彼女達が師事するナズナ流作法の現家元のことである。

一流の礼儀作法だけでなく、巫女として必要不可欠な雅楽、芸能ごとを彼女達はその「ナズナ先生」に仕込まれた。

「たいしたものじゃないか。こういったものはわたしにはよくわからないが、すごく綺麗だと思う」

「ええ、本当に」

「恥ずかしいです・・・。わ、わたしは不器用で楽器とか全然だめだったから・・・。ナズナ先生も仕方なくわたしにやらせたというか?・・・そんな感じで・・・」

二人にほめられて、ミュラは照れているのか居心地悪そうに体を縮める。

「うふふ。そろそろ食事にいかないと、朝議に遅れてしまいますね。行きましょうか、ミュラ」

「はい。ミレイ様」

暗殺未遂事件から二週間。ミレイは支天閣で療養していたが、今日から公務に復帰することになっていた。

「そうか、ならここでお別れだな」

「え?カレン様帰ってしまわれるのですか?」

「ああ、わたしもそういつまでも仕事休むわけにはいかないからな。」

「そうですか。朝食まではご一緒できるとおもってましたのに」

ミレイはカレンが今日帰ることを聞いていたのだろう。残念そうでは会ったがミュラのように驚いた様子は無かった。

「すまない。これから少し人と会う約束をしているんだ」

「ん・・・。またお会いできますか?」

「ああ、もちろん。また手合わせしよう」

「はいっ。絶対、絶対ですよ!?」

そういってカレンが差し出した右手。ミュラはそれを握り返す。

「ああ、絶対だ。ふふ、あいつらもお前ほどの可愛げがあればいいんだが」

「ん?あいつら?」

「いや、こっちの話だ」

「ガーディアンズは危険な任務も多いと聞きます。どうか、お気をつけて。姉さん」

姉妹は真剣なまなざしでしばし見詰め合う。

ミレイの言葉は祈るかのようだ。

無理も無い。ガーディアンズは今、統合軍と共にSEED事件解決に向けて最前戦で戦っている。

しかし、得体の知れないSEEDウィルスに対して、有効な解決策を見つけられないまま、後手に回らざる得ない状況が続き、ガーディアンズは相当な犠牲をだしつつの消耗戦を強いられている。いくらカレンといえど、確実に生きてまた会える保障なんてないのだ。

「ここへ来てよかった。ミレイやミュラに会えたからな」

カレンはミュラを見て言った。

「守りたいものがたくさん増えた。守りたいものが多ければ多いほど、私は強くなれる気がするんだ。大切な約束もできたしな。だから、また会おう。ミレイ、ミュラ」

 

そしてその日事件は起きたのである。

                                 ・・・続く?

 

                 あとがき

月初めに宣言したとおり、小説を一本とりあえずお届けです。
今まで書き溜めたものの中から、一番完成が早そうなものを、削ってまとめてとにかくでっち上げました!!
この「星霊の盾」は、ミュラさんがガーディアンズになる原因になった事件。PSU無印のエピソード、「幻視の巫女」を別サイドから見た話になります。ですから、原作ファンにはかなり不快に思う方もかなり多いかと思っています。
本当にごめんなさい。
趣味でやってることなので、大きな心で流していただけると幸いです。
とりあえず、今後月一回は、小説もあげていきたいとおもいますので、よろしくお願いいたします。

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第三幕あとがき

かなりやっちまった感がある第三幕。「ポニてく誕生!!」お届けです。

本当はこの話の前にミュラの事件編を入れたかったのですが、わたしの技術不足で完成が相当遅れそうということで、とりあえず話だけ先に進めることにしました。

この事件編。戦闘シーン多いし、結構残酷な描写も書かないといけないのです・・・。完成無理かも・・・。

さて、まずは念のため言いますと、わたし相撲のことなんてさっぱりですので・・・。

ミュラの性格やら設定考えるとき、初期にあった日本かぶれといった設定の名残です。

あと、髪型の用語もわからないのでてきとうです。

法学も中略でごまかして・・・。そんな感じの第三幕でした。

それから・・・。

Oratorioお兄さんと、コッコ先生。勝手に出てきちゃ駄目じゃないですか・・・。

いえ、ゴメンナサイ。勝手に変な役で出しました。

不都合がありましたらご連絡くださいませ・・・。

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PSU二次創作小説学園編第三幕

                  おことわり

この作品は、セガから発売されているオンラインゲーム。ファンタシースターユニバースシリーズを元に、勝手な解釈と設定を持ち込んで書かれた二次創作物です。

そういったものが苦手という方や、不愉快に思うファンの方もいるかと思います。

まして、作者は素人であり文章もあまり読みやすいものではありません。全ては作者自身の自己満足のために書かれたものですので、本来読むことをお勧めはいたしません。

しかし、どうしても読んでやる!!という方は、後の感情の処理は全て自己責任で読んでくださいませ。

 

            第三幕「ぽにテク誕生!!」

今日は遅くなっちゃったな。その日、吉乃 メリアはいつもより遅い時間に寮の自室へと戻ることになった。

午後9時。チームメイトとの勉強会が思いの他長引いて、こんな時間になってしまったのだ。

それにしても・・・。

メリアはさっきの勉強会での出来事を思い出す。

元々は、チームメイトであるスキュラ・コルセスカのためにこの勉強会は催された。

それは彼女が、今日初めて受けた法学の講義のとき、「法律って何?」などと言い出したのが始まりだった。

無法地帯とよばれるモトゥブの荒野で育った彼女は、法律という言葉すら知らなかったのである。

「法律とは、各惑星の議会で制定された・・・(略)・・・現在では、ニューデイズ、パルム間では法律、条令の共通化が進んでおり・・・(略)・・・つまりは、人が共同生活をする上で守らなければならないきまりのことなのですが、分かっていただけましたか?コルセスカさん」

と、親切に、分かりやすく、コッコと名乗ったその座学の講師は解説してくれたのだが・・・。それを彼女は「なんだ、仁義のことか」などと言い出し、その日の法学の講義は中止となった。

コッコ講師曰く、

「まずは、コルセスカさんとのカルチャーギャップを、埋めることから始めなければいけませんね。いえ、この訓練校では稀によくあることです。はい・・・。では、ワタシはブリタニアに帰りますので・・・」

と言い残して、コッコは立ち去ってしまい、その時間は自習となった。

そして始まった、スキュラの文化圏での常識度を測る勉強会。

その後、放課後になっても勉強会は続き、この時間になってしまったのである。

それにしても面白かったな・・・。

スキュラの珍回答の連発を思い出し笑いしながら、ドアの鍵を開けようと、暗証番号をいれようとして、普段との違いに気がついた。

鍵が開いてる・・・。そうか、ミュラちゃんが帰ってるんだ。

ミュラ・ルルホ。講義のサボタージュを繰り返している彼女は、普段何をしているのか知らないが、いつもメリアより遅くに帰ってくる。自分の方が遅くなるのは始めてだ。

「ただいま~♪」

久しぶりに言うこの言葉がうれしくて、つい声が弾んでしまった。

「あ、お帰りなさい」

と、挨拶が返ってくる。お帰りと誰かにいわれるのも久しぶりだ。

「うん、ただいま、ミュラちゃん」

と、気分良く部屋に入ると、見知らぬ少女がそこにいた。

「誰・・・?」

小柄で可愛い子だった。やや吊り目がちなのが印象的な、幼い顔立ち。白い寝巻き姿で、黒い髪にバンダナを巻き、黒い瞳がこっちを向いている。この顔に見覚えがないのだけれど・・・。

「えっと・・・。わたしですけれど」

たしかに、声とその珍しいニューデイズ様式の寝巻きには覚えがある。

「え?ミュラちゃん?全然わかんなかった」

ミュラの顔は普段長い前髪に隠されている。この1ヶ月、同じ部屋に暮らしていたがメリアでさえ、その前髪の下を見ることはなかったのだが・・・。

結構可愛い顔してるんだ・・・。

「あ・・・」

ミュラの顔が赤く染まる。

照れた様子でミュラが頭のバンダナを取ると、またその顔は長い前髪に隠されてしまった。

「ご、ごめんね。じろじろ見ちゃって。気を悪くしたなら誤るよ」

「ううん。顔見られるの慣れてなくて。こっちこそごめんなさい」

「そっか。よかった・・・。でも今日はどうしたの?わたし、ミュラちゃんの顔始めてみたよ?」

「テレビ、見てたから」

「え?テレビ?」

なるほど、テレビを見ようと視界をあけてたわけだ。しかし普段ミュラはそんなことはしない。前が見えてるのか怪しいくらい長い前髪で、普通に本も読めば、外を出歩いている。

つまりそのテレビ番組は、ミュラが視界を開けて、しっかりよく見たいほどのものということだ。

「ふぅん。ミュラちゃんって、どんなの見るの?」

「ん」

ミュラが手元の空間に投影された映像を拡大する。

 

「解説のOratorioさん。本場所の頑龍は、いい感じですね」

「そうだねー。今場所行けるかもね。優勝。でも対する居斬も結構キテルよ?これはいい勝負になるんじゃないかな?」

「体格では居斬に分がありますが、そんな相手をこれまで幾度となく跳ね除けてきた頑龍。・・・今日はどんな取り組みを見せてくれるのでしょうか?」

「どうでもいいけど、何で俺、こんなことしてるんだろうねー?お兄さんぐれちゃうよ?」

 

NHK(ニューデイズ放送協会)の相撲中継!?

「おすもう、好きなんだ?」

「ん」

コクンとうなずく。なんだかとても楽しそうだ。

「なんか、すごく以外かも」

「そう?」

「うん。だってミュラちゃん、いつも物静かで、おとなしそうだったから。こういう格闘技とか見てるんだって、ちょっと驚いたよ」

ミュラは「あはは・・・」と少しだけ笑う。

「そんなことないです。わたし、これでも結構やんちゃなんですよ?わたしニューデイズの田舎で育ったんですけど、うちの近所男の子ばっかりだったから、遊びといえば相撲とかチャンバラとかそんなのばっかりで」

「そ、そうなんだ」

彼女のそんな幼少期を、メリアはまったく想像できなかった。

「ほら。大関の頑龍。わたし好きなんです」

「え?どれどれ?」

メリアも覗き込む。

取り組みが始まっていた。

ミュラが好きだと言っていた、力士は自分より大きな相手に押されているようだ、それでも必死にそれに耐えているのがわかる。

がんばって!!とつい応援したくなる。そんな光景だ。ミュラも表情は見えないが、小さな拳をぎゅっと握り、画面に集中している。

それでも体格差はいかんともしがたく、頑龍はじりじりと押され、やがて土俵際へと追い詰められる。

固唾をのんで見守る中、頑龍の体がついに傾く。観衆の声援と悲鳴。メリアも息を呑む。

しかし、ぐらりと揺らいだのは追い詰めていた居斬も同じだった。

一気に押し倒そうと体重をあずけてきた居斬に対して、頑龍が逆転を狙い投げに打って出たのだ。

もつれ合うように倒れる。

そして、倒れる瞬間、下になっていたのは居斬の方だった。

軍配が頑龍に上がった。

会場が熱狂に包まれた。歓声と拍手が巻き起こり、座布団が飛び交う。

「うわぁ、すごい!やった、やったね、ミュラちゃん!!」

「ん♪」

彼女も嬉しそうだ。いつもより声のイントネーションが微妙に高い。

「でも、負けたほう応援してたからって、座布団をあんなに投げなくたっていいよね」

「あの・・・。あれは、そういう意味じゃないです」

 

「面白かったね」

「ん」

相撲中継を見終わり、ミュラが持ってきた団子を茶請けにお茶をすする。今日の団子は内側に餡を包み込み、その外側に塩漬けにした桜の葉を巻いた、とても凝ったものだった。

とても香りが良く、上品な味わい。

薄い紅色の見た目も美しい。ミュラの団子はこれまでも何度か食べたことがあったが、これほどのものは初めてだった。

「とっておきです」

とミュラが言うだけのことはあり、すごく美味しい。

「なんだか悪いな。わたし、何かお返ししなきゃだよ」

と、メリアは逆に申し訳なくなってしまう。

「ううん。メリアの淹れるお茶、おいしいからおあいこです」

ずずっと、堂に入った仕草でお茶をすするミュラ。なんだか今日のミュラはやけに機嫌がいいように見える。

普段は、穏やかそうでも、どこか態度が硬かったりするのだが、今日は憑き物が取れたかのように、リラックスしているように見える。

「なにか良いことあった?」

お気に入りの力士が勝ったから。というだけではないと思う。

「ん・・・」

ミュラはお茶を軽く一口すすって、湯飲みをテーブルにおく。

「実はわたし、少し前にある事件に巻き込まれたんです。その時の聴取や、法的な後始末があって今まで講義に出られなかったんですけど、今日それが終わって、次の講義からは出られるかもって・・・。今更、迷惑かもですけど」

「ええっ!?そうだったんだ・・・」

「特別な事件で、ガーディアンズとも機密保持契約とかがあって、今まで言えなかったんです。ごめんなさい・・・」

「ううん、それはいいんだけど・・・」

初めて聞いた、ミュラの事情。

自分は構わない。ミュラが講義に参加することに何も異論は無い。むしろ大歓迎だ。たしかに今から初めて、他のみんなについて来れるのかという不安はあるが、自分でよければ、全力でそれをサポートするつもりである。

ただ、他の皆はどうだろうか?うまく受け入れてもらえるだろうか?

いや、きっと大丈夫だ。最初は少しくらい抵抗はあるだろうけど、ミュラがいい子だって、きっと皆分かってくれる。

「じゃあ、明日時間ある?」

明日は1日センチュリーは講義が無い。休養するも良し、自習するも良し。つまりはお休みだ。

「ん。あるけど?」

「明日の午後、センチュリーのみんなで試験に向けて自主トレしようって話してたんだ。それにミュラちゃんも来ないかなって」

「え?試験、受けるの?」

ガーディアンズ訓練校では、月に5日間のテスト期間がある。その期間内になら、自由に望んだ学科の試験が受けられる。そして、試験で合格点がもらえれば、例え講義を受けていなくても、単位がもらえるのだ。逆にどれだけ講義を真面目に受けていても、この試験の結果が悪ければ、単位はもらえないのである。

「うん。必修の射撃と剣術に挑戦してみようって。この二つはそんなに厳しくなくて、基礎さえ出来ていれば、合格もらえるらしいよ?それでも、半分駄目もとだけど」

入学して一ヶ月。基礎を習得したというには、実際まだ早い段階だとは思う。試験は在学中のどの時期に受けてもかまわないのだから、じっくり技術と自信をつけてから臨んでも良いのだが、気の早いスキュラや、バーシィの希望と、自分のレベルを確認するためにもいいんじゃないかな?という、チームリーダーのフェイトの意見で、受けてみようということになったのだ。

とはいえ、メリアが「駄目もと」というだけあって、全員が合格する見込みはかなり薄い。

そこで、明日の午後に訓練場を借りて、自習しようと計画されたのである。

「ん・・・」

ミュラは考える様子をみせた。

これは望み薄かな?とメリアは考える。皆とは少しずつ馴染んでいってもらった方がいいのかもしれない。

「あの・・・」

やがてミュラが口を開く。

「都合悪かった?無理にとは言わないよ?」

「いえ、それって午後からですよね?もしよかったら午前中少し付き合ってもらえませんか?」

「え?いいけど、なんで?」

するとミュラは言いづらそうに小声で。

「あの、わたし女の子らしい服とか、髪型とか、そういうのよくわからなくて。いい美容院とか、服屋さんとか知ってたら、教えてもらいたいなって・・・」

「ええっ!?」

ミュラは伸びた髪をいじりながら、

「他の皆さんの前でこの身なりでは、さすがに失礼だと思って・・・」

それは全く考えもしなかった。てっきり人見知りしてるのかと思ったら、そんなことを気にしていたのかと可笑しくなって、「ぷっ」と吹き出してしまった。

「笑わないでください!!結構気にしてるんです・・・」

これまで誘っても来なかったのは、案外そのためだったのかもしれない。

「ごめん。じゃあ、明日午前中クライズシティへ行こう?わたし案内するね」

「本当ですか?ありがとうございます!!」

前髪に隠されたミュラの表情が、ぱっと華やいだ。・・・のがメリアには見えた。

「ん」

「ん・・・?」

「えへへ、真似してみました」

 

そして次の日。

メイアの案内で訪れたガーディアンズ御用達のエステLumilass

「ど、どうですか?」

ミュラは別人のように見違えていた。余分な毛と、重苦しい前髪をカットしたロングヘア。

「うわぁ、よく似合ってるよ」

「あ、ありがとうございます」

照れくさそうに、はにかむミュラ。

「ちょっと、後ろいい?」

「ん?」

ミュラの背後に立ち、そっとその黒い髪に触れる。

その髪を後ろで束ねてリボンで止める。紫色のリボン。彼女に似合うような気がして、ミュラがカットしてもらってる間に買っておいたのだ。

「ポニーテール。おそろいだよ。リボンはプレゼントね」

「え?」

ミュラは尻尾に束ねた、自分の髪に手をやる。

「よくお似合いですよ」

お店の人が気を利かせて鏡を持ってきてくれた。ミュラはそれを見ながら色々眺めたり触ったりたりしていたが、やがて納得すると、丁寧にお礼を言って鏡を店員に返す。

「どうかな?」

「うん。ありがとうメリア」

会ってから一ヶ月。それはメリアが始めて見たミュラの笑顔だった。

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PSU二次創作小説学園編第二幕

                 おことわり

この作品は、セガから発売されているオンラインゲーム。ファンタシースターユニバースシリーズを元に、勝手な解釈と設定を持ち込んで書かれた二次創作物です。

そういったものが苦手という方や、不愉快に思うファンの方もいるかと思います。

まして、作者は素人であり文章もあまり読みやすいものではありません。全ては作者自身の自己満足のために書かれたものですので、本来読むことをお勧めはいたしません。

しかし、どうしても読んでやる!!という方は、後の感情の処理は全て自己責任で読んでいただけると助かります。

             面接2「フェイト・アストレイ」 

なぜ貴方はガーディアンズに入りたいのですか?

「・・・世界が大変なときに、うちでごろごろしてるなってエトが・・・。いや、妻が怒るから。しかも娘まで一緒になって、ニートのお父さんは嫌だとか言うんです。それで半ば無理やりに・・・。ぼく、ニートなわけじゃないんだけどな・・・。」

・・・それは、大変ですね・・・。では、次の質問です。あなたの護りたいものはなんですか?

「そりゃ、父親としての尊厳と立場!!・・・コホン。失礼・・・。妻と娘が笑顔でいられる世界。でしょうか?これは、本当ですよ?そのためなら何だってします」

・・・貴方の護りたいもの、確かに聞かせていただきました。ようこそ、ガーディアンズへ・・・。 

 

               第二幕「センチュリー」

寮の朝食時間は6時から8時まで。朝7時、朝食へと向かう寮生の流れの中に、メリアの姿もあった。

ここ数日で仲良くなった、同じクラスの女の子二人と一緒である。

「うぅ・・・。今日は午前中から実技か。それも射撃・・・やだなぁ」

苦手科目にぼやいたりするのは、ガーディアンズの訓練校の生徒であっても変わらない。やや舌足らずな口調で、陰鬱な声を上げているのは、三人の中で最も小柄なサラミス・モガミである。

小さな身体に、栗色の髪をシュートカットにした彼女は清潔な小動物を思わせる。

確かに、こんな子が「わたし、射撃得意です!!」とか言い出したら、逆に驚く人のほうが多いだろう。

「わたしも射撃は苦手だよ。終わったあと腕上がらなくなっちゃうし」

メリアはこの一ヶ月でやや筋肉のついた腕を見る。射撃だけでなく、剣術に格闘術と、厳しい訓練を受けてるうちに全身ムキムキになっちゃったらどうしようと、メリアは心配になる。

ガーディアンズになっても、前と変わらず女の子らしく、やわらかな身体をしていた姉は、彼女にとっては一種の化け物だ。

「メリアはいいじゃない。ちゃんと的に当てれるもん。あたし全然当たんないのに・・・」

それでも最近は幾らか的に当てれるようにはなってきているのだから、撃つたびに尻餅をついていた最初数日間からみれば、大きく進歩しているといえるだろう。

サラミスは射撃だけでなく、実技全般が大の苦手だ。いや、苦手というより向いてない。だからといって、運動が苦手なわけでも、極端に体力が無いわけでも無い。なぜ向いていないかと聞かれれば、『普通の女の子だから』に尽きるだろう。

「わたしなんてまだまだだよ。キラちゃんみたいに遠くはまだ全然だし」

「当然!!こっちは生まれて16年マタギの中で育ったんだから。簡単に追い抜かれてたまりますか」

と、言うのはスキュラ・コルセスカ。キラは彼女の愛称である。やや浅黒い肌に薄い金色の長い髪。三人の中で最も背が高く、恵まれたスタイルを持つ。

彼女は、モトゥブの狩猟を生業とする部族の出であるために、メリアやサラミスと違い武器の扱い方や戦闘における知識を最初から持ち合わせていた。

そのために、現在のところ実技面では彼女がクラスでトップの座に位置する。

そんな彼女でもメリアは、一目置く存在だった。

「でも、メリアは、本当に飲み込むの早いよね。そういえば、テクニックも元々つかえてたみたいだし。ほんと、あんた何者?」

「そんな、別に普通だよ。テクニックはお姉ちゃんの練習によくつきあってたからで、射撃だって教官の言われた通りにやってるだけだよ?」

「ぶー。あたしは当たんないのにぃ・・・」

メリアの言葉に、さらにふてくされた様子を見せるサラミスの頭をスキュラがぐりぐりとなでつけた。

この二人は寮の同室で、とても仲が良い。

「サラミはもっと力つけないとね。反動抑えられない分、下の方は狙ってるんでしょう?」

「うん・・・。教官に言われた通りにしてるよぅ」

「だったら・・・」

「ひゃあ」

スキュラはサラミスの背後に回ると、その小さな身体を抱えあげた。そのままくるくると回転。

「あんた、軽すぎんの。もっと、太れ!!ほら、今日の講義終わったらパフェ食べに行こ。カフェ・deSNOWに新作のが出てるんだって。メリアも行こう?」

「うん」

「よし、決まり」

気っ風が良く面倒見がいいスキュラと、おとなしそうに見えて、実は言うことは言うサラミス。この二人は入学して以来仲良くなった友達であり、同じチームメイトだ。

このガーディアンズ訓練校では、同期に入学した者同士でチームを組んで卒業を目指すというスステムをとっている。メリアが所属するするチームはセンチュリーと呼ばれ、男女合わせて7人。女子はこの3人と、あと一人。

食堂の前で、出てきた少女とすれ違う。

「あ、おはようミュラちゃん」

センチュリーに所属する女子の最後の1人。ミュラ・ルルホ。

メリアはルームメイトであるその少女にあいさつする。ルームメイトでありながら、メリアは彼女と朝、部屋で挨拶したことがない。いつもミュラは彼女より早く起きてどこかへ行ってしまっているからだ。

「おはようございます」

静かな声で、ちょこんと腰を折ってあいさつするミュラ。メリアがミュラと朝挨拶するのは、決まってこのタイミングだ。ミュラはいつもメリアたちが来る前に食事を終えて、またどこかへ行ってしまう。

「あの子。講義サボっていつも何してんのかな?」

スキュラの言うとおり、今ミュラはほとんど講義を受けていない。座学の講義を受けているのをたまに見かけるが、実技の方は一切受けていない様子だ。

どこで何をしているのかはメリアも知らないが、部屋に戻ってくるのはいつもメリアより遅く、門限ぎりぎりだった。

「メリアのルームメイト悪く言いたくはないけど、あの子ちょっと気味悪くない?」

「え?そうかな?」

「あたしも、あの子ちょっと怖い・・・」

スキュラもサラミスも彼女のことをあまり良く思っていないとは感じていた。何を誘ってもまず断られるし、一人前のガーディアンズになることを真面目に目指す彼女らにとって、サボタージュを繰り返すミュラを受け入れられないのも理解できる。

けれど・・・。

「そんなことないよ?礼儀正しいし、いい子だよ?初日に挨拶したとき、とっても美味しい手作りのお団子をお土産に持ってきてくれたし」

「あんた、団子で手なずけられちゃったわけ?」

そうかもしれない。とても美味しいお団子だったし、お礼にとメリアがお茶をいれると、彼女はそれを美味しいといって、飲んでくれた。

たしかに、変わったところがあるけれど、メリアにはそんな彼女が悪い子だとは思うことが出来なかった。

「そうかもね。それに洗濯物とかきちんと自分で片付けるし、おやつ食べ散らかしたりしないし・・・」

実はそこは少し物足りなく思っているところである。1人で生活しているみたいで寂しいのだ。

「そうなんだ・・・。なら結構いい子かも」

スキュラに抱えられたままのサラミスが、上目で同居人を見る。

「・・・なんでこっちを見るのよサラミ」

「ううん、別に~」

「あはは・・・。そっちは楽しそうだね」

「メリアもこっち来なよ。三人で過ごしたら楽しいよ?」

「そうだね。でもベットは2つしかないよ?どうするの?」

「それなら、大丈夫。この子はあたしのとこで預かるから、メリアはこの子のベッドを使えばいいよ」

だが、こちらを見るサラミスの表情は明らかに助けを求めるものだった。

「あはは・・・。でも、本当にそんなことしたらきっと怒られちゃうから、遠慮しとくね」

「それもそうか」

かしましく、話を弾ませる少女達。

そんな彼女達を温かい目線で、見つめるものがいた。

それはまるで、運動会でカメラを片手に娘を見守る父親のように・・・。

「サラミスたん・・・。今日も可憐だ・・・。あぁ、拉致りたい・・・。ハァハァ・・・」

少年の名はハーバー・チェスター。メリアたちと同じ、チームの訓練生であり、自他共に認める変態である。

そして、その彼の背後にこっそりと忍び寄る影。

「お巡りさん、お巡りさ~ん。こっちですよー」

もちろん、この場に警官などはいない。しかし、効果は抜群だった。動揺でサンドイッチ・・・に偽装した隠しカメラを取り落としそうになったほどに。

「うわっ!脅かさないでくださいよ。おはようございます、フェイトさん」

「おはよう」

フェイト・アストレイは悪びれる様子も無く、穏やかな顔であいさつすると、朝食ののったトレイをテーブルに置き、彼の向かいにすわった。

「まったく、毎朝飽きもせず、何やってるんだか」

そして、その横にもう1人の赤毛の少年。バレンシィ・ウェッソン。ハーバーのルームメイトだ。

背負っていた巨大な剣を傍らに立てかけて、フェイトの横の席に座る。一角の戦士を思わせる風貌だが、彼はまだ剣を持つようになって一ヶ月である。

『大事な武器をナノ粒子に分解するなんて考えられない』と言って愛用の大剣をナノトランサーに入れることを頑なにこばみ、彼はどこへ行くにも大剣を背負って持ち歩く。

本人は硬派な戦士タイプを気取っているが、バレンシィはここにくるまで普通の少年だったのだ。そのスタートラインはメリアやサラミスと変わらないが、今のところ実技、座学ともやや水をあけられてしまっている感がある。おかげで彼は周囲からはすっかりコスプレイヤー扱いだ。

彼ら三人もメリアたちと同じチームに所属している。

ハーバー、バレンシィは10代半ばでメリア達と同年代だが、フェイトは彼らより幾らか年上にみえる。

人柄がよく、博識な彼はチーム内はもちろん、他の生徒からも慕われていた。

「今日もかわいいね、我らが姫君たちは。ハーバー君が夢中になるのもわかるよ」

「ほう?フェイトさんも興味ありますか?」

「フェイトさんまで、こいつに感化されないでください」

「感化されるまでもなく、魅力的な子達だと思うけど?バーシィ君は気になる子はいないのかい?」

「お、俺はそんなことに興味は・・・。今は強くなることしか考えてません!!」

実際彼は今必死だった。残念ながら今の彼の成績は、講義に参加していないミュラは除き、チーム内最下位。振れもしない巨大な剣を使うことに拘っているため、実技面でサラミスにも劣っている。

「そっか、さすが」

バレンシィは真っ赤な顔で、声もうわずっていて明らかに動揺していたが、フェイトはそれに気づいているのか、気づいていないのか、穏やかな顔を崩さない。

「いやいや、そいつはただむっつりなだけですよ。ほら」

ハーバーが指で何かをはじく。何かの画像データだ。

「ぐぅ・・・。こ、これは・・・」

画像にバレンシィの目が釘付けになる。

どれどれとフェイトも覗き込むとそれは、訓練中のスキュラの画像だった。豊かなバストが強調されるアングルで撮られた画像は、明らかな隠し撮りだ。

「500メセタでどうだ?ルームメイトのよしみで格安にしておいてやる」

彼が隠し撮りで商売しているのは有名な話だ。ばれたらタダではすまない犯罪だが、半ば黙認されている。

確かに問題だが、その技術は一部で高く評価されているのだ。

「よくとれてるなぁ。そっか。バーシィ君はコルセスカさんに気があるんだ。うん、いい子だよね。彼女」

「俺は別に!!」

バレンシィの声に食堂中の視線が集まる。

「まぁまぁ・・・。落ち着いて」

「はい・・・」

「そういうフェイトさんは気になる子はいないんですか?」

「そうだね・・・。みんないい子だからなぁ。コルセスカさんは綺麗だし、頼りになるよね。吉乃さんは気立てが良くてお嫁さんにするなら彼女かな?見た目的にはモガミさんが・・・はっくしょん!!」

唐突にくしゃみをしたフェイト。食べさしのソーセージを取り落とす。

「大丈夫ですか?」

向かいに座るハーバーが心配して聞いてくる。それほど珍しいことにフェイトの顔が引きつっていた。

「い、いやなんでもないよ。ちょっと寒気がしただけだから」

そう言うフェイトの顔はいつもの穏やかな顔だ。

「でも気になるといえば、今ここにいない黒髪の子かな」

「まさかあの、座敷わらしですか?」

バレンシィが顔をしかめる。

「それは、ルルホさんのことかい?さすがに失礼だけど、うまい表現だね」

「ミュラ・ルルホか。たしかに興味深い存在ではあるな。前髪に隠された素顔がどんなものなのか・・・」

「おや?ハーバー君でも、彼女の顔は知らないんだ?」

この訓練校の女子のことなら、彼が知らないことは無いとまで言われているほどだ。もちろん男子生徒の中だけでの話しだが・・・。

「ええ・・・。でも素顔だけじゃありません。ミュラ・ルルホに関しては一切の経歴が非公開になってるばかりか、それらを辿ろうとすると、ガーディアンズ側からのガードがかかります。・・・あれは、そうとうヤバイことにかかわってますよ?」

普段は盗撮に注がれている彼の情報収集能力だが、実際にそれはかなりの水準にある。各種機器の製造、扱いはお手の物。また、およそ一般人ではありえないような伝手や情報網ももっているようである。

「ほう・・・?」

「でも、ここにいる限りは一訓練生だろう?講義も出ないで卒業できるほどここは甘くないぜ?」

「お前も人のことを言っていられる常態ではないと思うが?」

「ぐ・・・」

この訓練校の講義は実技にしろ、座学にしろ、カリキュラムはチームごとに組まれている。

ただし、メンバーの中で単位が取得できず、チーム内で足並みをそろえることが出来なくなると、そのメンバーはそのチームから外され、後発のチームに組み込まれ最履修を受けることにななってしまうのだ。

メリア達のチームセンチュリーは、間も無く最初の試験を迎えようとしていた。

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PSU二次創作小説学園編第一幕

                  おことわり

この作品は、セガから発売されているオンラインゲーム。ファンタシースターユニバースシリーズを元に、勝手な解釈と設定を持ち込んで書かれた二次創作物です。

そういったものが苦手という方や、不愉快に思うファンの方もいるかと思います。

まして、作者は素人であり文章もあまり読みやすいものではありません。全ては作者自身の自己満足のために書かれたものですので、本来読むことをお勧めはいたしません。

しかし、どうしても読んでやる!!という方は、後の感情の処理は全て自己責任で読んでいただけると助かります。

               面接1「吉乃 メリア」

貴方は何故ガーディアンズに入りたいのですか?

「わたしのお姉ちゃ・・・、いえ、姉がガーディアンズなんです。最近事件とか多いし、SEED騒ぎとかもあって、危ないこととかにあってるのかと思うと心配で・・・。お姉ちゃんだから、できるだけ姉の傍にいられるようにガーディアンズに入りたいって思いました」

あなたは、とてもお姉さん思いなんですね。では次の質問です。

貴方の護りたいものは何ですか?

「はい。お姉ちゃんが笑顔でいられる世界です」

 

               第一幕「ぼろぼろ・・・」

 「あなたの護りたいもの。確かに聞かせていただきました。ガーディアンズはあなたを歓迎します。吉乃メリアさん」

メリアの正面で微笑む若い女性。面接の担当官だ。彼女の言葉でガーディアンズ(候補生)吉乃メリアが誕生した。

「はい!!ありがとうございます!!」

来週からは訓練校での生活が始まる。正式なガーディアンズになるまでには、そこを卒業しさらに現場実習を経なければならないが、メリアは今この瞬間、ガーディアンズとしての第一歩を踏み出したのだ。

「寮のほうには、訓練校の入校式までに入っておいてね」

薄い冊子を渡された。表紙に寮生の心得と書かれた、パンフレットだ。

「はい」

「でも、そんなにお姉ちゃん大好きだと大変ね。しばらくはなかなか会えなくなるわよ?大丈夫?」

きっと、面接官の女性に悪意があったわけではないのだろう。

しかし、その言葉にメリアは冷水をかけられたかのような衝撃を受けた。

・・・そんなこと考えてもいなかった・・・。

姉と一緒にいたいがためにガーディアンズを目指してたのだ。その過程で会えなくなるなんて考えてもいなかったのだ。

そうだ、しばらく寮暮らしになるんだ・・・。その間お姉ちゃんと会えなくなるんだ・・・。

今でも、ガーディアンズの姉は忙しくてなかなか会うことができないでいた。それでも、家で待っていれば姉はひょっこりと帰ってきた。しかし、これからは自分は家にいない。寂しさでメリアの目頭が熱くなる。

「吉乃さん?どうしたの?」

面接官の女性が心配して訊ねてきた。

いけない・・・。わたし、ガーディアンズになるんだから。こんなことで泣いてちゃいけない!!

もう、待っているだけは嫌だった。SEEDの被害や、ガーディアンズの活躍をニュースで見るたびに姉のことが心配で仕方が無かった。

そんな日々に戻るくらいなら、ちょっとくらい寂しくたってがんばれる!!

メリアは受け取ったパンフレットをぎゅっと、両手で抱きしめる。薄っぺらいパンフレットは彼女の腕のなかでクシャリとひしゃげた。

「いえ、なんでもないです」

「そう?訓練校は厳しいけど、がんばってね。それじゃあ、次の人を呼んできてくれるかな?」

「はい、失礼しました」

にこやかに手見送ってくれている面接官に、丁寧にお辞儀をして部屋を出る。

「・・・あ」

廊下では、女の子が1人、窓の外を眺めていた。

他には誰もいないから、この女の子が次に面接を受ける子なのだろう。

「あの、次に面接を受ける方ですか?」

女の子の顔が、メリアに向けられる。しかしその顔は伸びた前髪に隠されて、その表情を見ることは出来ない。

「担当官の方に、次の人呼んで来てほしいって言われたんですけど・・・」

女の子は小さくうなずく。

なんか、ぼろぼろだ・・・。気力を感じさせない儚げな背中を見送りながら、メリアが抱いた女の子の印象だった。

面接に備えて、しっかり身仕度してきたメリアと違い、女の子は顔が見えないほど伸びた前髪に、背中まで伸びた黒い髪を手入れした様子もなく、メリアより二周りほど小柄な身体を包む、ニューデイズ様式の服もくたびれた様子だ。

「あの・・・」

扉を叩こうとした女の子を、メリアは呼び止めた。そして胸元で小さく拳を作ると。

「あの・・・。がんばってね」

女の子は一瞬手を止めたが、それ以上の反応を見せることなくドアの向こうへと消えてしまう。ノックの音も、「失礼します」と言う声も、小さく掻き消えそうなものだった。

静かな廊下に1人、拳を作ったままのポーズで取り残されたメリア。

・・・うぅ、変な子に思われたかも・・・。

つい、放っておけずに声をかけてしまったが、入学すれば、同期生としてよく顔を合わせることになるかもしれない、できれば仲良くなりたかっただけに、メリアは少し落ち込む。

・・・あ、そうだ。お姉ちゃんに訓練校に入学が決まったこと、メールしよう。

メリアがPDAを取り出したその時だ。閉じたばかりのドアが再び開く。

「・・・失礼しました・・・」

出てきたのはさっきの女の子。

早っ!?

今、入っていかなかったっけ?

ひょっとして、一目で落とされちゃったとか・・・?

女の子はメリアを気にすることなく、その前を通りすぎていく。周囲を拒絶するかのようなその雰囲気に、今度は言葉をかけることが出来なかった。

・・・そうだ、メール。

 

『お姉ちゃんへ。無事訓練校への入学が決まりました。面接緊張したよ~。お姉ちゃんの時はどうだった?お姉ちゃんが護りたいもの、何て答えたのかちょっと気になります』

 

送信・・・。

 

お姉ちゃん、今どこにいるのかな・・・。おとといはモトゥブにいて、その前はニューデイズ。

でも、昨日の晩御飯の時には家にいたっけ・・・。

間も無く返信のメールが届く。

 

『おー。入学おめでとう。いっぱい勉強してくるんだよ?ボクの時?昔のことはわすれちった・・・。変わりにこのレア画像を進呈しよう』

 

添付されていた画像ファイルを開く。

「なにこれ?ボルティの足の裏?」

続いて、もう一枚画像が送られてきた。

 

『若葉マーク!!』

 

ふっくらした頬にポルティの足型がくっきりとスタンプされた姉が、同僚に囲まれて笑っていた。

お、お姉ちゃん!?

なにがあったかは想像に難くないが、当の本人が笑っているのだから、大したことはないのだろうけれど・・・。姉が大きな怪我をしたりするかも知らないと思うとメリアは心配で仕方が無い。

今、姉はメリアの知らない世界にいる。危険と隣りあわせで、実際に命のやりとりが行われている世界。

わたしもすぐそっちへ行くからね。それまで絶対に無事でいてね。・・・お姉ちゃん。

・・・続く

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二次創作SSに向けて・・・。登場人物の設定を確認

毎日少しずつですけど、進めている小説の番外編。このシリーズでは友人の皆さんからキャラクターをお借りして進めますので、ここで簡単に設定を確認。訂正、追加の要望、アイデアの提供はお早めにお願いします。

・・・あまり期待はしないでほしいですけれど・・・。

 

吉乃 メリア

種族ニューマン。15歳。成績優秀で性格が良く、誰からも好かれているが、ガーディアンズである姉が心配で、ガーディアンズを目指すほどのお姉ちゃん至上主義者。

 

ミュラ・ルルホ

種族ニューマン。15歳。メリアのルームメイト。ほかの訓練生から距離を置き、講義や訓練もサボりまくっている。

 

フェイト・アストレイ

種族ヒューマン(?)。外見は二十歳くらい。穏やかな性格の青年だが、謎が多い人物。訓練校では全く本気を出さず、卒業するつもりも無いらしい。妻帯者で娘もいるが、訓練校ではそれを隠している。

 

スキュラ・コルセスカ

種族ビースト。16歳。モトゥブのマタギの中で育った少女。真面目に講義を受けているクラスメイトの中では実力は最も高いが、座学は苦手。愛称はキラ。

 

サラミス・モガミ

種族ニューマン。14歳。スキュラのルームメイト。クラスメイト中、最も小柄でマスコット的存在。座学は出来るが、実技は苦手。愛称はサラ、サラミ等。

 

バレンシィ・ウェッソン

種族ヒューマン。17歳。SEED襲来による世界の危機に、「俺の出番だ!!」とガーディアンズ入隊を目指す。熱血漢だが成績は最低レベル。愛称はバレス。

 

ハーバー・チェスター

種族ビースト。15歳。サラミスたん・・・ハァハァ。何しに来てるのかは分からないが、情報収集能力が高い。

 

ガーディアンズ訓練校は、大学と専門学校と自動車学校をかけ合わせたようなところを、想像してます。以上7人が同じクラスという設定。

スキュラ、サラミス、バレンシィ、ハーバーはこの話のためにわたしが創作したキャラクターです。変わりにやってやる!!という方がいれば再検討ですけど・・・。

次にその他の関係者。

 

吉乃 アレク

種族ニューマン。19歳(?)メリアの兄。充分な実力を持ちながら卒業せず、数年にわたり訓練校に居座り続けている困った人。同士を集めて秘密結社「学徒会」を組織して何かを企んでいる。

 

ヘビーガン中尉

種族モビルスーツ。キャスト。同盟軍から特別顧問としてガーディアンズに出向している。当時の同盟軍軍人としては珍しく、ガーディアンズや、多種族への偏見を持たない。

 

以上がメインキャラクターです。アレクお兄さんは先輩さんで、ヘビーガンさんは、指導教官。

舞台が訓練校ということで、友人の皆さんのキャラクターにも、そこで登場するために独自の設定を追加させてしまいました。

特に、アレクお兄さん・・・。この設定以外で登場させる手段が思いつきませんでした。問題があるなら言ってくださいね?

ヘビーガンさんも、勝手に大尉から中尉に降格させてしまいましたが、時期がPSU無印半ばくらいなのであしからず・・・。

あ・・・。コメントだと公開されちゃうので、それが嫌な人はPSUのミュラにメールしておくのもいいかもしれません・・・。一応1日一度はスタンプもらいに、グラール行きますからね。

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PSU二次創作SS第3話あとがき

昨日、出勤前にとりあえず出来てた分を上げてみましたが・・・。

今回も、相変わらず痛い内容してますね・・・。自分でも分かってますが、後悔はしてません。ある程度書いてから、改訂をくりかえして、行き詰って悩みぬいた末、どうしようも無いと、諦めて上げてますからね・・・。

かなり話が走りすぎな上に、表現が未熟なために分かりずらく、自分でも満足いく出来ばえではありませんが、今はもうどうしようもなかったのです・・・。

さて、今回はミュラの設定を中心に話を作りました。

実はずっと前からイメージしていた設定で、数年の構想を経てようやく誰かに知ってもらう機会を作ることが出来ました。

出来ればもっといい出来栄えのお話で、伝えたかったのですけれど、そこは今の限界ですのでこれで我慢です。

もっとも、ちょこちょこと手直しはこっそりやっていきます。どのみち未完成の話なのですから、長い目で見ていただきたいかと・・・。

さて、一応あとがきですので幾つか解説を・・・。

正直今回のお話・・・。

「逃げ出した後、戦いになったんです。犯人は教団の重鎮だったから・・・。その人の護衛や、その場にいた警邏の人たちと。戦いの中でわたしは・・・、仲間だった人たちを何人も手にかけて、それでもミ・・・ィ様を護れなくて・・・。わたしは罪には問われなかったけど、教団にはいられなくなって・・・。ガーディアンズに入ったんです。救出されたお姉さま。・・・カレン様が・・・レィ様の後を引き継がれたから、わたしはその方の後を引き継ぎたかったから」

ミュラにこの台詞言わせるためだけに書きました。だから話の流れや、バランスが結構変になってしまいました。起承転結ってなんですか?といった感じです。

まあ、誰も気にしないでしょうけれど・・・。

自己満足でやってますから・・・。でもこれですっきりしました。

あとは、ミュラの訓練のところ。

『飛燕の型』とか気取った名前で大仰に書きましたが、剣道の基本的なすりあげ系応じ技を、必殺技級に脚色してみただけです。

だから、これだけはしっかり言って置かなければいけません。

PSUでグラールうろついている、ミュラさんはこんなこと出来ませんから!?

オンライン上のミュラさんがいくら弱くても、嘘つき呼ばわりしないでくださいね!?あれと、これ、別人ですからね。別人!!

・・・オンライン上のミュラさんはお団子誰にもあげないし・・・。意地悪だから。

・・・今回も何人かの友人の名前を借りました。

この場にて、感謝と謝罪を申し上げておきます。

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PSU二次創作SS第3話「渚のガーディアン」

                 おことわり

この作品は、セガから発売されているオンラインゲーム。ファンタシースターユニバースシリーズを元に、勝手な解釈と設定を持ち込んで書かれた二次創作物です。

そういったものが苦手という方や、不愉快に思うファンの方もいるかと思います。

まして、作者は素人であり文章もあまり読みやすいものではありません。全ては作者自身の自己満足のために書かれたものですので、本来読むことをお勧めはいたしません。

しかし、どうしても読んでやる!!という方は、後の感情の処理は全て自己責任で読んでいただけると助かります。

      

         

            第3話「渚のガーディアン」

   

「前方ニ見エマスノハ、マタラ支局自慢ノ発電塔デアリマ~ス!壁面ニハ130枚ノ太陽光発電ノパネルガハメ込マレテイルデイルデアリマスヨ」

ほほう・・・。と、僕は発電塔をみあげた。

「全高17.5メートル。最大デ920kwノ電力ヲ生ミ出セルデアリマスヨ~」

ミズチはといえば、僕の前を元気に飛び回っている。いや、比喩でなくて実際に飛ん出るからこっちもなかなかついていくのが大変だ。

どんどん進んでいくミズチの後を僕はやっとの思いで着いていく。

「ココヲ見テ欲シイデアリマス。パネルノ間ニ隙間ガアルノガワカルデアリマスカ?」

ようやくミズチに追いついた。

なるほど。ミズチに言われた通り近くでみると、太陽光発電パネルは隙間を空けて配置されている。

へぇ・・・。実は中は空洞なんだ。

遠目には陽の光を反射してピカピカ光ってにみえたけど、近くで見ると実は塔の反対側が見えるくらいに隙間が開いていて、鉄骨もむき出しだ。

中を覗いてみると、たくさんの「短冊」のようなプレートが並べられていて、中を拭きぬける風がそれらのプレートを回している。

「中が風力発電の装置なんだね」

「ソウデアリマス。コノ支局ニハ、コレト同ジ物ガアト3基アルデアリマスヨ。コノ支局ハコレラ4基ノ発電塔カラノエネルギーデ、機能シテルノデアリマス」

フォトンよりも安定したエネルギーということで、電気エネルギーの研究は、最近なって見直されてきている分野のひとつだ。

グラール太陽系における資源不足は近年深刻化してきており、GRMを始め、幾つかの企業は共同して、太陽系外に向けての新天地開拓に向けた準備を着々と進めている。

そのための大型移民船の建造も、すでに始められているのだけど、その中にはフォトンを使わない完全に別のエネルギーだけで航行する宇宙船も開発されている。

それが、外宇宙への移民計画は実はダミーで、本命は別世界への進出を考えているのではないかという噂の根拠となっているのだけど、現在の所どの企業もそういったコメントを出してはいない。

「でも、夜や天気の悪い日はどうするんだい?出力はずっと一定じゃないだろう?」

「大容量ノコンデンサーニ、普段カラ電力ヲ溜メテイルノデ、非常時ニハソレヲ使ウノデアリマスガ、ソノタメニ、普段カラ電気の節約ヲシテルノデアリマス」

「なるほど、節約ね」

「ソウデアリマス。部屋ヲ出ルトキヤ、寝ルトキハ、チャント余計ナ灯リハ消スデアリマスヨ?夜更カシモ良クナイノデアリマス」

エネルギーの精製量の少ない夜間は、早く寝て無駄にエネルギーを使うなということだろう。

明日から大変だし、今日は早くに休むつもりだから、それは問題ない。

「そうだね、そうするよ」

ミズチは「ウム」と偉そうにうなずいている。

「自分ノ目ノ黒イウチハ、寝落チトカ許サナイデアリマスヨ?」

何だろう寝落ちって・・・?

 

ルウ達と別れた後、「局内ヲ案内スルデアリマス」とのミズチの言葉に甘えてみたものの・・・。

「次ハコッチデアリマスヨ~」

と、せわしなく飛び回るミズチには、着いて行くこっちは一苦労だ。

何度か、もっとゆっくり行くように頼んでみたけれど、どうもこのマシナリー。途中で言われたことを忘れるという機能が付いているらしい。

いつの間にか、元のペースに戻っているので、こっちも諦めて好きなようにさせている。

「ふぅ・・・」

発電施設から、支局の裏手へと回り、僕は大きく息を吐く。目の前には半球体の透明な建物。

「温室?」

「ウイッス。マタラ支局自慢ノ温室デアリマスヨ」

そういえば、このマタラ支局は

でも、局員でもない僕が入ってもいいのだろうか?

「僕が入ってもいいのかな?」

「大丈夫デアリマスヨ~。デモ、持チ出シタリ、食ベタリスルノハ禁止デアリマスヨ?」

「や、食べたりはしないって・・・」

ドアを開けて中にはいる。鍵を使わずともドアは開いたが、もしかしたらミズチが開けたのかもしれない。

ガラス張りの温室の中は蒸し暑く、土と葉っぱの匂いが鼻についた。

「うわ・・・。結構あるな」

「ココノ温室デハ、島デ見ツカッタ特有ノ植物ガ約100種類ホド栽培サレテイルデアリマスヨ」

ほほ~っと、眺めて見るだけでも、大小さまざまなプランター無秩序に置かれ、見たことも無い花や草が相当数栽培されているのがわかる。

「ソノ白イ花ノ根ッコニハ猛毒ガアルカラ、持ッテ行ッチャ駄目デアリマスヨ?ソッチノ花ノ種子ハ気分ガ良クナル薬ガ作レルトカデ、今研究中デアリマス」

中には可憐な草花もあったりして、僕がそれらに目が引かれると見るや、ミズチがすかさず解説してくれる。こういったところは、とても優秀なガイドだと思う。

「ミズチ、これは?」

隔離されたゲージの中におかれている、親指大の鮮やかな黄色い花。黄色い花の中に白くて丸い綿のようなのが混じっている。

「ソレハデアリマスナ~」

と、そのときだ。

「誰だ!?そこにいるのは!!」

急に男の声が響いて、僕は心臓が飛び出すかと思った。

みると、ヒューマンの男が一人こっちを睨んでいる。長く伸びた前髪から見えるシャープな顔立ち。

武闘家を思わせる、スマートな引き締まった身体に白いエプロンとゴム手袋があまりに似合っていない。

「ア、シェフ~~」

「お?ミズチか?じゃあ、あんたが今日来た客か」

若い男だ。僕と同じくらいじゃないだろうか?

ミズチがシェフと呼んでいたけど、見た目の印象は、料理人というより気の荒い、戦士か格闘家といったところだ。

「あ・・・。ディテクス・バーソロミューです。すみません。勝手に入ってしまって」

鋭かった視線が若干和らいだように見えた。

「ああ、ミズチと一緒だったなら勝手に入ったとは言わないさ。別にかまやしない。俺はソウライ。ここの厨房とこの温室を任されている」

「ソウライ・・・さん?立派な温室ですね。ガーディアンズの支局にこんな設備まであるとは思わなかった」

「ん?ああ・・・。俺のことはソウライでいい。お前のことは、何て呼べばいい?

「よければディックと」

よかった、ややぶっきらぼうな口調。目つきも悪いが、なかなか気はよさそうだ。見た目よりずっと話しやすい。

「この温室では、この島で見つかった植物で食用や、薬草として使えそうなものを集めて栽培している・・・が、難しいのは局長や他の研究員たちの仕事だ。俺はというと、主にこっちが担当だ」

ソウライは畝に植に植えられた植物の前で何か作業中だったようだ。見たこと無い種類だったが野菜を育てているようだ。

「菜園ですか?」

「ああ。ここで必要な分は、ほとんどこの菜園でまかなっている。まあ、ここで育ててるのはちょっと特殊だから、本土からも運んでもらってはいるんだが」

そして、鮮やかな濃い緑色の葉っぱの前でかがみこんで作業を始めた。

覗いてみると葉っぱの影に、細長く伸びた実が見える。

ソウライはそれを一本一本丁寧に鋏で切って籠にいれていく。

見たことの無い野菜だった。

「どうだ?食ってみろ」

その実を一本渡された・・・。

って・・・。

「イテテ・・・」

なんだこれ!?棘が生えてるじゃないか!?

「ああ、悪い悪い」

ソウライはごついゴム手袋をした手でその実をこすって、棘をこそぎ落とす。

嫌がらせかと思った・・・。

あらためて受け取ると、艶やかな濃い緑色の表面はでこぼこだが、すべすべだ。

恐る恐る端っこをかじってみる。

ぽりっと、音がして最初に感じたのは微妙な青臭さ。

だが、意外と水分を含んだそれは、咀嚼するとほのかな甘みと、清涼感が口の中に広がる。

・・・ミズチに振り回されていたので喉も渇いていたから、ちょうど良かった。

「なかなか、いけるね・・・これ、名前は?」

「さあな。こいつは、この島で見つかった野菜で名前は今検討中だ。どうもここの土と水でしか、うまく育たないらしい」

それを聞いて、僕は、ぼりぼりとかじるのを止める。

「それって、貴重な物じゃないですか?」

「かまやしないさ。売り物になるほどの知名度も量もないし、ここの連中だけじゃどうせ食いきれん」

「そうですか」

遠慮なく僕は残りを全て平らげる。

ソウライは、それを籠に軽く半分ほど収穫すると立ち上がる。

「さて、俺はまだ夕食の支度があるからこれでいくが、植物はむやみに触ったり、食ったりするなよ?中には毒のあるものもあるからな」

・・・ミズチも言っていたが、勝手に食べるようなのがいるのだろうか?

「いや、勝手には食いませんって・・・」

「そうか?まれにそういうのがいるんだがな・・・」

それは、よほど空腹だったのか・・・。いや、いくらお腹が空いてても、勝手に見ず知らずのものを口に入れたりはしないだろう・・・。

世の中には、チャレンジャーもいたものだ。

「さて、今夜はお前の歓迎もかねて、この島の食材を使ったメニューにするつもりだから、期待していろ」

それは、確かにそれは楽しみだ。さっきの野菜もそうだけど、この島にはまだまだグラールでは知られていない食材もたくさんあるのだろう。

僕はよくフィールドワーク先でその土地の食べ物を食べたりするが、それが結構面白い。今の野菜もそうだが、ここは結構『当たり』が多そうで期待大だ。

「ああ、そうだソウライ」

「うん?なんだ?」

僕は温室を出ようとするソウライを呼び止める。

「ソウライ・・・。下の名前は?」

「本名か、忘れたな」

・・・この男、本当に堅気の料理人なんだろうか・・・?

   

ミズチに支局内を案内してもらった後、僕は支局が接岸している離島の方に足を伸ばしてみることにした。

離島は周囲1キロメートルも無い無人島で、支局とは仮設橋で繋がれていて、自由に行き来することが出来た。

ミズチはあらかじめ『何モナイデアリマスヨ?』とか言っていたけれど・・・。

そんなことは無いと思う。

島の周囲は白い砂浜で囲われ、パルムのリゾート施設、パラパカナ海岸にも勝るとも劣らない美しい景観を作り出していた。

島の中心部は、鬱蒼とした森で、日没も近いこの時間に入るのはさすがにためらわれたので、海岸沿いを一周してみることにした。

波が高く、海からの風も冷たいので今は泳いだりは出来ないが、気候の良い時期に来ていればきっと最高のバカンスが満喫できたのではないだろうか

ふらふらと散歩しながら、そんなことを考える。

・・・さすがに海で遊びたいからという理由では、入島許可が下りないだろうけど・・・。

「ほぅ・・・」

島の西側に来たとき、つい声が出た。

夕日にてらされて、橙色に染まった海岸線。

沈もうとする太陽が、こんな色を出すなんて僕はずっと忘れていた。

すごいな・・・・。

僕はその光景に心をうばわれる。そういえば、以前夕日を見たのはいつのことだろう・・・?

心の奥底から沸き起こる、懐かしいような、もの悲しくなるような感覚。

「ドウシタデアリマスカ?」

不思議そうにたずねてくるミズチの頭をそっとなでる。

高性能なこの子の感情プログラムにも、さすがにセンチメンタルとかノスタルジックというものは無かったようだ。

「オヤ?アレハ?」

砂浜には僕たちよりも先客がいた。

大人が6人子供が1人。

失礼・・・。その子供の頭には見覚えのあるポニーテール。

あれはミュラさんだ。

あとの6人は統合軍の兵士のようだ、無骨な装甲に身を包み、やけに揃った動きをしているようにみえる。

「アソコニ見エルハ、『ミュラ』ト『タマモ』デアリマス。ガイスト君達連レテ訓練中ノ様デアリマスナ」

兵士に見えたけど、違うようだ。たしかにここに統合軍の兵士がいるわけが無い。

なるほど、ガイストね・・・。

ガイストというのはマシナリーのなかで、人型のものに使われる呼び方のひとつだ。

そのため、外見だけではキャストと非常に区別がつきにくいが、実際キャストとと呼ばれる種族の人間は、ガイストなどマシナリーとは中身がまったく違う。

彼らは機械でありながら、非効率なほどにヒューマンに近い身体の構造をしている。見た目、骨格、内蔵、筋肉、脳の構造にいたるまでだ。

それらを捨てれば、以前の種族間戦争で多種族をいくらでも圧倒できただろうけど、彼らがそれをしなかったのは、今ではグラール最大の謎の1つとされている。

実際それをキャストに聞いてみたとしても、彼らはそれに答えてはくれない。たぶん彼らにも合理的な回答が出来ないのだろう。

ただ、キャストのとって、ガイストのような人型マシナリーは、見ていて面白いものではないらしい。

自分たちと似て非なるものが、多種族に使われるのが種族的感情を刺激するのだという。

キャストが本来ヒューマンに労働力として生み出されたことを考えると、分からないこともない。

・・・とはいえ、キャストが支配するパルムでも、ガイストの製造や運用を法で禁止したりしてはいないのは、労働力としての有用性の他になく、そのあたりは感情より合理性を優先するキャストらしいところだろう。

それにしても、無骨なガイストを6体もつれて訓練とは、いったい何をするつもりなんだろう?

「コレハ面白イモノガ見レルデアリマスヨ。コッソリ見学スルデアリマス」

ミズチに促されて僕は砂浜から森の方へと移動する。そして、ミズチに従ってこっそりと様子を伺うことにした。

ミュラさんは身体を曲げたり、伸ばしたりと準備運動中だ。これから何か激しい運動をしようとしているのはわかる。

前屈・・・。結構身体は柔らかいみたいだ。

「戦闘訓練?何を始める気なんだろう?」

見た目小さくて、清楚な感じのする彼女だ。フォトンの扱いに長けたニューマンであることだし、テクニックが得意だったとしてもおかしくない。

訓練校を短期間で卒業したことを考えると、相当な使い手だと予測もできるけど、そんな使い手がこの穏やかな島に配属されているのは、人手不足のガーディアンズにおいては少し説明が付かないところではある。

正直、彼女が戦うところなんて想像できないのだけれど・・・。

「『ミュラ』ハ結構何デモ出来ルデアリマス。デモ好キナノハ近接格闘戦デアリマスヨ?」

・・・今なんていいました?・・・このマシナリー、冗談まで言えるらしい。

「『ミュラ』ハ剣豪デアリマス」

剣豪って意味分かって言ってますか?ミズチさん。

あの子をどう見ると、そんなごっつい言葉が出てくるというのでしょう?いや、人は見かけによらないっていうけど、さすがにね・・・。

「・・・テクニックとかが得意なんだと思ってたよ」

攻撃とかより、回復とかが。

「第一種戦術法士ノ免許モ持ッテルデアリマスヨ?ケレド、コッチノホウガ好キミタイデアリマス」

テクニック使いとして、実戦レベルということだ。で、攻撃テクニックが撃てるのに、あの小さな身体で剣を使うというのだろうか?

彼女が剣を振り回す姿を想像・・・出来なかった。いや、振り回そうとしている姿なら簡単にできたけれど。

『剣豪のミュラさん』は、さすがにあの清楚でおとなしそうな彼女とはイメージが合わない・・・。 

 

・・・しかし、僕がミュラさんに抱いていたイメージが木っ端微塵に粉砕されるのにその後一分と掛からなかった・・・。

 

「タマモ。近接戦闘プログラム起動。レベル、ベリーハード」

「御意。1本目、始メデゴザル!!ガンバルデゴザルヨ、ゴ主人!!」

6体のガイストと対峙して、一礼。ガイスト達もそれに習う。

ミュラはナノトランサーから実体化した剣を握る。得意の双剣。ガーディアンズに入隊したときから使っているヨウメイ社製の高級品だ。鋭角的な刀身は本来すさまじい切れ味を持つが、今は訓練のため、「真引き」になっている。

ミュラが構えると同じく、取り囲んでいた6体のガイストも、それぞれフォトンセイバーを構える。

ミュラの正面の一体が動いた。

・・・単調だが早い。自我こそ持たないが、身体の性能は生身の種族の比ではない。もしぶつかれば、ミュラの小さな身体など、ひとたまりも無く跳ね飛ばされてしまうだろう。

その勢いで、ミュラへ向けて斬りかかる。

同時に背後からも一体向かってきているのが分かる。

まずは前後からの挟撃・・・。同士討ちを避けるため同時に6体が斬りかかるのでは無く、まずは第一波。

しかし、こっちが攻撃を避けようと左右どちらかに動いたとすれば、必ず取り囲んでいる4体がその背後を狙ってくるだろう。

先にどちらかに狙いを絞り、討ち倒したとした場合、待機している4体のうち2体以上が襲って来ることは間違いない。そうなると後ろのと合わせて最低3体を同時に相手にしなければならなくなる。

ならば、2対1で来てくれてるうちに2体を倒してしまう。

後のことはそれからだ。

前後の敵を同時に対処することを、ミュラは咄嗟に判断する。

正面の相手に半歩踏み出し、後方の敵との接触時間にわずかな誤差をつくる。

相手の剣が振り下ろされようとする瞬間、こちらの剣を振り上げる。わずかに弧を描いて振りあがったミュラの剣が相手の剣をいなし、その機動をそらす。

そして、隙の出来たところに一刀両断に振り下ろす。

これで1体。

振り向いて後ろから来るもう一体に備える。最初に半歩動いたのはこの、この振り返るための時間を稼ぐためだ。

袈裟懸けの一撃を、もう一方の剣を同じように振るい、相手の剣をはじき、首すじを一閃。2体目を倒す。

飛燕の型とよばれる応じ技だ。振り上げる動きで相手の打ち込みをいなし、返す刀で相手をしとめるミュラの得意技。

高い反射神経と動体視力を必要とするが、ミュラは日々の修練と、ある才能で、今では両手の剣でそれを行うことが出来る。

残り4体。ミュラは一番手近にいた1体に向けて加速する。迎え撃とうと繰り出された突きを、身体を深く沈めてかわし、大きく踏み込んで加速。瞬発力が小柄で軽い身体を逆に武器に変えて、その背後に回り込んで斬りつける。

3体目を倒すのと同時に囲みを突破。正面からの3対1。

相手の剣を受けたり、打ち合ったりしないのがミュラの戦い方だった。

それはフィジカルに恵まれなかったミュラ独特の戦法。

日ごろの訓練で、体格の割りに力はあるとはいえ、それでも戦闘モードのガイストとは比べるべくもない。40キロにも満たないミュラの身体など、彼らにとっては風船のようなものだ。

まともに剣を合わせようものなら、ミュラは体ごとはじかれてしまい、まず勝負にならない。

そのためにミュラは剣術を始めて以来、体捌きや、相手の力をいなす技の訓練をずっと続けているのだ。

アンドロイドは今度は3体で同時攻撃を仕掛けてくる。

一体は上段から。一体は横薙ぎに斬りかかり、もう一体は切っ先をまっすぐ向けて突きを放つ。

すれ違いざま、上段から来る相手を「飛燕の型」で倒すと次に一瞬遅れてきた、横薙ぎの一撃をもう片方の剣で同様にそらし、そのまま相手を刺し貫く。

最後に襲ってきた突きを身体をそらしてかわし、ミュラは後方へと大きく跳躍して間合いをとる。

残る一体がミュラへ向かって斬りかかるが、やはりその剣はミュラを捉える事はできず、ミュラの剣が弧を描き、それで勝負は着いた。

「・・・。タマモ、時間は?」

「16秒36。マアマアデゴザルナ・・・」

   

「イツモナガラ見事デアリマス」

ミズチの声に僕は我に帰った。

声も出なかった・・・。というか、息をするのも忘れていた。

あっという間の出来事。

あの小さくて可愛らしかったミュラさんが、大柄なガイスト6体を瞬時に倒してしまったのだから、こっちとしては開いた口を閉じるのもわすれて、驚く他は無い。

ガイスト達にしても、決して弱くはなかったはずだ。動きを見る限り、一般人がどうこうできる物ではなかった。

もし、僕が相手をしていたならば、1対1でもひとたまりもなかったと思う。

とにかく、僕は担当のガーディアンズが可愛い女の子だったことに浮かれていたけれど、認識をあらためなくてはいけない。

担当のミュラさんは、小さくて可愛いけれど、僕なんて足元にも及ばない剣の達人だ。

あれだけの腕があれば、戦闘技術の単位を一発試験で通すことが出来るだろう。

僕がほうけている間に模擬戦は二本目がはじまっていた。

やはり20秒と掛からず決着がつく。

続いて3本目、4本目と見ている間に僕の目もだんだん慣れてきて、戦闘の様子がだんだんとわかるようになってきた。

小柄な身体が、くるり、くるりと機敏に動き回り、ガイスト達を翻弄する。まるで全周囲が見えているかのように、6体の動きに完全に対応しているのがすごい。

まるで、相手の一挙一動を全て把握しているかのようだ。

また、打ち込む時は全身を使って豪快に打ち込む。それが実に躍動的で美しい。

僕はこれで気がついた事がある。

ミュラさんが使っていた剣技。あれは真剣を使うためのものだ。

ガーディアンズの訓練校でも剣術は必修であるが、不殺が原則のガーディアンズでは斬ることより当てることを重視した剣術を教えている。フォトンの武器というのは便利で、非殺傷モードでも当てることさえ出来れば、相手の生体フォトンを乱して気絶させたり、動けなくすることができるからだ。

そのために、ガーディアンズでは、効率よく相手に当てるため、手首を利かせた柔軟で変化に富んだ剣の扱いを教えている。

しかし、ミュラさんの剣の使い方は全くちがう。あれは刃で対象を「叩き斬る」ためのもの。

ミュラさんの打ち込みが、大きく、豪快に見えたのはそのためだ。

疑問に思っていたミュラさんの経歴。

僕はガーディアンズに入る前に、ミュラさんが何をしていたかが推測できた気がした。

真剣を使う剣術は、競技としてなら世界中にあるけれど、実戦で使えるレベルを教われる場所となるとかなり限られる。

その中で最も考えられるのは、グラール教団だ。

実は僕の母方の祖母は、グラール教団の本山である昇空殿で作法の師範をしていたりする。それで僕はよく祖母に連れられて、教団の施設にいくことがあったのだけど、そこで警衛士の訓練をみたことがある。

そこでは、真剣を使った剣術の訓練を行っていた。その時見た、大振りな動きが今のミュラさんの動きに重なって見えたことからの推測だ。

だから、たぶん間違いないと思う。ミュラさんはたぶんガーディアンズに来る前に、教団にいたのではないだろうか?

それなら、戦闘技術の他にも、グラール教に関する講義も試験でパスすることができるはずだ。

ただし、その推測が正しいとなるとまた1つ疑問が出てくる。

それは、教団から出るにしては、ミュラさんはまだ若すぎるということ。

星霊、フォトンを信仰の対象とするグラール教団は、この世界で最大の宗教ではあるが、実際にはニューデイズという惑星を1つ統治する、行政機関でもある。

かなり砕いていうなら、ニューデイズで教団関連の仕事に就くというのは、かなりのエリートとだということだ。

また、治安のいいニューデイズでは、警衛士になるのも狭き門らしい。

さらに付け加えるならば、グラール教では『出会い』をとても重んじる。人との出会いは全て『星霊のお導き』と考えるような宗教なのだから、当然隣人との絆も深く、組織内での結束も堅い。

そんなところから、15歳の若さで民間警備会社に再就職。

・・・よほどの理由がなければ考えられることじゃない。

 

砂浜での6対1の模擬戦は今もう10本目に入っている。

結構ハードに見えるけれど、ミュラさんの動きに陰りは見えない。

それどころか、動きは一層鋭さを増し、攻略のペースも速くなってきているように見える。

訓練の邪魔をするのも悪いけど、このまま立ち去るというのも寂しい。

さて、どうしようかと思っていると・・・。

ああ・・・。何てことだろう・・・。なぜか図ったかのように、足元には振り回すのにちょうどよさそうな棒が落ちてるじゃないか!?

「ミズチ、ミュラさんはシールドラインをつけているかな?」

「ウイッス。ミュラハ準備万端デ訓練シテルデアリマスヨ?」

よし、ならちょっとぐらい無茶しても大丈夫だろう。

「何スル気デアリマスカ!?」

「静かに、ちょっと試してみようかなと」

棒を拾って軽く振ってみる。よし・・・。

別に僕は、「強い奴と戦うのが好きだ」とか言う、バトルマニアとかじゃない・・・。これは好奇心とちょっとした悪戯心。

剣術なんて、訓練校を出てからずっとやってなかったし、成績もそんなに良くは無かった。

背後からの不意打ち・・・。

なんか昔どこかの映画で見たことがあった。

剣の達人の主人公に、悪役が不意打ちをしかけるという、定番のパターン。

大抵それは、邪魔が入ったり、返り討ちに合うのだけれど・・・。

・・・実際やってみたらどうなるんだろう・・・。

幸い、達人をかばったりする邪魔者もいなさそうだし。

ミュラさんが、残心をといた瞬間を狙おうと、そろり、そろりと木の後ろに身を隠しながら僕は少しずつ近づいていく。

息を殺して木の陰からチャンスを待つ。ミュラさんの模擬戦はもう12本目。

もともと真剣を使った剣技は、全身の筋肉を使って打ち込むので体力の消耗が激しいはずだ。

さすがにそろそろ、体力的にもきつくなって来てるころだろう。

・・・最後のガイストが倒れミュラさんが剣をおろした。今だ!!

僕は木の陰から駆け出す。距離は10メートルも無い。

背後からの急襲。どうする?ミュラさん?

「ム、曲者デデゴザル!!」

ミュラさんの傍にいたマシナリーが声を上げるがもう遅い。一足一刀の間合い。僕は力いっぱい地面を踏み込み、上段から振りかぶると・・・。叫ぶ。

「殿中でござるっ!!」

振り返ったミュラさんと目が合った・・・。特に表情は見えなかったけど・・・。

背筋が凍りつくような感覚。

一発で射竦められ、腰が引け足から力が抜ける、けれど今更止められるか!!

「お覚悟ぉぉぉ!!」

気合と共に、棒を振り下ろす。

念のために言っとくけど、良い子も悪い子も、絶対にこんなことはしてはいけない。

しかし、振り下ろした棒はむなしく空振り・・・。ミュラさんの姿は僕の視界から消えていて・・・。

「あら?」

胸のあたりに、何か柔らかいものが当たる感触。

勢いよく世界が回ったと思ったら、僕は地面に転がっていて・・・。

そのまま何秒かが過ぎてから、ようやく投げられたんだと気がついた。ミュラさんを殴らずに済んだのだから、まぁ、よかったのかな。

打ちつけられた衝撃が、じわじわと身体の中へと伝わってくる感覚に、大事なことを思い出した。

・・・そういえば・・・。僕はシールドラインを着けていなかった。

 

「もう!!誤りませんからね!!」

ひっくり返ってる僕を見下ろして、ミュラさんがぷりぷりと怒っている。

頬を膨らませて怒ってるのが、ごめんなさい。悪いけど、かわいいと思ってます。

さっき一瞬、本気で殺されるかと思いましたから・・・。

「ごめんなさい。僕が一方的に悪かったです」

「まったくです」

「ゴ主人ヲ闇討チスルトハ、下手シタラ死ヌトコロダッタデゴザルヨ?」

「ま、まじですか・・・?」

「マジ、デゴザル。」

ミズチでも思ったけど、ここのマシナリーのしゃべり方は何かおかしい・・・。

ご主人と呼んでいるから、このマシナリーはミュラさんの支援機なんだろうけど、この変わったしゃべり方。どこの方言だろう・・・?

「そういえば、君は?」

「拙者ハ、タマモト申ス。以後オミシリオキヲ」

「うん、よろしくね」

しかし、タマモの言うように、もし、ミュラさんが僕の悪戯を、本当に暗殺しようとしたのだと勘違いしたとすれば・・・。僕はどうなっていたのだろう・・・。

今更ながら、自分のしたことがいかに軽率だったかに気づかされて僕は大いに反省する。

ミュラさんはとっさに気がついて、手加減してくれたのだろうか?

「シカシ、サッキノ『スクイ投ゲ』ハ綺麗ニ決マッタデゴザルナ。先日ノオウトク場所千秋楽デノ『居斬』ト『春美音』ノ一番ヲ思イ出シタデゴザル」

「わたしのイメージは2日目の頑龍かな?」

「ムム。ゴ主人ハ『頑龍』ガゴ贔屓デシタナ」

「ん。うまく決まったと思う」

・・・なんですって・・・?

・・・本当は、余裕でもっと穏便な対応が出来たのではないだろうか?

しかし、何と言うか・・・。ミュラさんには年頃の娘さんには珍しい、渋い趣味があるようだ。

もっとも、今は黙っておくことにする。

とにかく許してもらえるまでは、謝罪あるのみ。

「本当に申し訳ございませんでした」

しかし、「ふんっ」とそっぽを向かれてしまう。

ミュラさんの頭のポニテールの跳ねる動きに心を奪われながらも、どう宥めたものかと頭を悩ませる。これは結構難物かもしれない。

また、意外なところでもう1つ奇妙な対立が起こっていた。

「ミズチ殿モ止メナイトハ職務怠慢デゴザルヨ?」

「タマモガアノ距離マデ警告シナイトハ、予測シテナカッタデアリマス。レーダーノメンテナンスヲオ勧メスルデアリマス」

「ム?拙者ノ機能ニ問題ハ無イデゴザル。任務中以デノレーダーノ使用ハ、個人ノプライバシーニ関ワルノデ原則禁止デゴザル」

「訓練場所ノ安全確保ハ我ラノ任務デアリマス」

責任の所在を巡って言い争いを始めている2機のマシナリー。本当に個性的なAIを積んでいるようだ。

面白いから、見ていようかと思った僕に反して、喧嘩をとめたのはミュラさんだった。

「タマモ、ミズチもやめて。悪いのは全部ディックさんです」

「御意」

「デ、アリマス」

争いをやめて、ぴしゃりと、言うことを聞く2機。どうやら責任は全て僕ということで納得したらしい。

・・・まあ、そうなのだけど・・・。

「すみません。つい出来心で・・・」

身体はまだ痛むけど、よっこらせと上体を起こす。少しでも平気に見せようという、ちょっとした見栄だったけど。

「あらら・・・?」

力が入らず僕はまた、仰向けに倒れてしまった。

ちょっとした脳震盪だろうか?頭もふらつくし、まだしばらくは無理そうだ。

「・・・ん」

ミュラさんの手が僕のおでこに当てられた。

「え?ちょっと・・・」

僕は急に頭を押さえつけられて面食らう。

そこへミュラさんの手から、温かい「何か」が身体の中へと流れ込んできた。

それは一瞬で頭のてっぺんから、足の指先まで通り抜けていく。ミュラさんの手が離れたときには身体の痛みがすっかり消えていた。

これは、回復テクニック・・・。訓練校にいたころは何度もお世話になったけど、最近は見ることもあまりなくなった。それは、僕がそれだけ安全なところにいたということだけれど。

彼女の長い耳に目が行く。彼女はテクニックの扱いに長けた種族。ニューマンだった。回復系のテクニックを使えてもおかしくは無い。

「どうですか?」

「ありがとう。もう平気です」

頭のほうもすっきりしていて、僕は、軽い動作で身体を起こしてみせる。

「ん。じゃあ、そこに正座してください」

「え?」

「正座」

「はい・・・」

どうやら、まだ許してくれるわけではなさそうです・・・。

   

僕は砂浜に正座させられていた。正面には同じく正座したミュラさん。しゃんと背すじを伸ばした姿が、なんとも様になっている。両脇にタマモとミズチを従えて、真剣なまなざしでこっちを見つめられて、今冗談とか言ったら、さすがに洒落ではすまないだろう気配だ。

だから、ちゃっかりそっち側にいるミズチに、突っ込むこともできやしない。

かわりに僕の後ろには、何故か、ミュラさんの練習相手だった6体のガイスト達が並んで正座していたりする。たぶんミュラさんの「そこに正座」という言葉に反応したのだろうけど、なんだか親近感が沸いてしまうのは、やられた者同士だからだろうか?

その後僕は、ミュラさんからこんこんとお説教を聞かされることになった。

訓練中に乱入した事がいかに危険だったかに始まり、僕の踏み込みの甘さを指摘されたかと思ったら、いつしか不意打ちに変な掛け声上げるなとか、その掛け声の台詞が変だったとか・・・。

どうも、ミュラさんは結構話が別方向にとんだりするようだ。思いついたことをつい口にしてしまい、いつの間にか論点があらぬ方向へと行ってしまっているタイプ。

「分かりましたか?ディックさん?もう、変なことしないでくださいね?」

結局そこに戻るまでに、たっぷり10分以上は掛かっていたと思う。

もちろん、突っ込みも文句も言ったりはしないけれど・・・。また、長くなりそうだし。

「はい。もう二度としません」

『へへぇ~~』という感じで、平伏するしかないでしょう・・・?後ろのガイスト君たちも何故か付き合ってくれてるし。

「コレニテ一件落着デゴザル」

・・・なんか、オチまでつけられてしまった。

   

「君の剣技だけど・・・。あれって、真剣を使うための技だよね?もしかして前は教団にいたのかな?」

「えっ?」

ミュラさんの驚く顔をみて、僕は自分の推理が当たっていたことを確信する。

「ああ、ごめんね。以前教団の警衛士の訓練を見たことがあったんだ。僕の祖母が、昇空殿で作法の師範してて、僕もよくそれに付き合って遊びにいっていたから」

ミュラさんは無言でじっと僕の顔をみる。

その表情がお説教の時と違って、やや放心した感じでなんだか妙に色っぽかったので、こっちはさっきよりより緊張してしまう。

「いや、そこで真剣の訓練を見たからそう思ったんだけど・・・。ミュラ・・・さん?」

ミュラさんはそれには答えず、じっと僕の顔を見てそして。

「あの・・・。もしかしてお婆様は、ナズナ流作法家元のスズリ・ナズナ先生ですか?」

とても大層な肩書きで呼んでくれましたけど、たしかにうちの婆様・・・、祖母の名前だ。

「ええ、知ってたんですか」

「ん・・・」

なんだかとてもうれしそうな様子で、ミュラさんの顔が綻ぶ。

そうなのか。伊達に『星霊主御用達作法指南役』とか呼ばれてるわけじゃないんだな。うちの婆様。

結構教団内では結構知名度が高いようだ。

「わたし、スズリ先生にお世話になっていたことがあるんです。こっちに来てからはずっとご無沙汰しているんですけど。先生はお変わりありませんか?」

そうだったのか。でも結構意外だな。婆様は肩書きが大層なだけあって、教団内では相応に来賓待遇で、だれでも面倒をみているというわけではない。

つまりミュラさんは、教団内でそれなりの地位にいたということになる。

「うん。最近僕も直接会ってはいないけど、元気にしているよ。相変わらず厳しいけどね」

最後に話したのは、SEED事件の収束が宣言されて、お互いの無事を確認したときのことだ。

婆様は教団本部で保護を受けていたようで、被害の大きかったGコロニーに住む僕や両親の無事を喜ぶ姿をおぼえている。

「そうだ、おやつにしませんか?稽古が終わったら食べようと思っていたお菓子があるんですよ」

おやつ?お菓子?今からですか?もうすぐ夕食なのですけどね・・・。夕食前に間食なんて、婆様が聞いたらきっと二言、三言あるところですよ・・・?

ミュラさんは婆様の教え子では無いのだろうか?関係を聞いてみたかったが、すっかり機嫌をよくしたミュラさんが、僕の横に座りなおす。

その距離が思ったより近く、つい緊張してしまったので、聞くタイミングを逃してしまった。

「はい。お口に合うといいですけど」

ミュラさんの手には、ニューデイズの名産ダンゴモチ。

白いダンゴモチが串に刺して4つ。艶のある、赤黒いこしあんがかけられている。

「あ、ありがとう」

口元に差し出されたそれを、僕はそのまま、ぱくりとくわえる。

うまい・・・。餡子はしっとりとしていて、甘さと舌触りがなんともいえない絶妙さだ。そしてどこか懐かしい風味。

ダンゴモチもやわらかくて、餡子とよくあっている。

「すごく美味しいよ」

・・・お世辞でもなんでもなく、本当においしい。

「お団子はわたしが作ったものですけど、餡子は今日、実家から送ってきたんです。うちのお父さん菓子職人なんですよ」

どんな菓子職人に育てられると、こんな娘さんが出来上がるんだろう・・・?という疑問は心の中にとどめておくことにする。

ためしに、お茶屋で団子やお茶を売っているミュラさんを想像したら、あまりに似合っていあたので笑いそうになった。

「もぐもぐ・・・」

横ではミュラさんもダンゴモチを頬張っている。

その幸せそうなその顔が夕日に照らされて、とてもきれいで・・・。

「ん?どうかしました?」

気がついたら、ついぼ~っと眺めてしまっていた。

「い、いや。どうしてガーディアンズになったのかなと思って。こんなおいしい餡子が作れるお父さんの後を継ごうとは思わなかったのかい?」

見とれてしまっていたのを、ごまかそうと、つい出てしまった言葉だったけど・・・。

・・・言ってから後悔した。

ミュラさんの表情から、幸せそうな顔が消えていたからだ。

「ご、ごめん。変なこと聞いちゃったね」

そうだった、『教団を出るには早すぎる』・・・この謎がまだ残ったままだったのだ。

この少女には、なにか教団にいられなくなった理由があるという可能性に気づいていながら、ずいぶんうかつだったとおもう。

僕は、とんでもない地雷を踏んでしまったのかもしれない・・・。

「いいんです」

ミュラさんは静かに首を振る。

「よかったら、聞いてくれませんか?わたしがガーディアンズに入った理由」

落ち着いた声音。まるで覚悟を決めたかのように、黒目がちな瞳が僕へと向けられる。

半ば虚勢でその瞳を受け止めつつ、僕は戸惑っていた。

あまりいい話ではないだろう事は、ミュラさんの様子から明らかだ。それを僕のような一依頼人に話すというのだろうか?

別にごまかされても、僕は追及したりはしないというのに・・・。

僕はその視線の前に何もいえず、ただうなずくことしかできなかった。

そして、ミュラさんは顔を伏せて、自分の表情を隠すようにして話し始めた。

「わたしには、目標にしてる人がいるんです」

体格さと光の加減で、うつむいたミュラさんの表情は見ることは出来ない。

でも、彼女が笑顔で話しているのではないことが、声から分かった。

「教団でわたしは、ある方の専属護衛官を勤めていました。その方。わたしの主には双子のお姉様がいらしたんです。すごく強い方で、わたしはよく稽古をつけてもらってました。わたしはその方から一本も取れたことがないんですよ?」

ミュラさんが一本も取れないほどって、それはどんな豪傑だろう・・・。

いや、そうじゃなくて・・・。

「その方は、ガーディアンズだったんです。とても強くて、綺麗な方。ディックさんも会ったらきっとびっくりしちゃいますよ・・・?」

ミュラさんが目標にしたいと思うような人なら、会ってみたいかもしれない。別に、綺麗な女性だからというわけではなく・・・。

SEED事件の最中、教団内で事件がありました。一部の幹部がそのお姉さまを誘拐したんです。

わたしは、教団を抜け出しガーディアンズに救助を求めるという、主を手伝って、それが見つかり拘束されました」

教団内で誘拐事件があったというのか・・・。それも、ガーディアンズの隊員を?

・・・そんな話聞いたこともない。

教団についてはそれなりに詳しいつもりだったけど・・・。

隠された?それも外部に漏れないように厳重に・・・何故?

確かに教団は秘密主義ではあるけれど、今の教団のトップ、幻視の巫女ミレイ様は誠実な方だ。

多少教団の名前に傷がつくようなことであっても、教団幹部がひきおこした誘拐事件のような、大きな事件をひた隠しにはしないと思う。

「・・・しばらくして教団から脱出に成功した主が、ガーディアンズの援軍をつれてきてくれました。機会を見て脱出したわたしはそれに合流しようと・・・。でも、間に合わなくて・・・」

話をしているミュラさんの声が、だんだん聞き取りにくくなって、僕は気が着いた・・・ミュラさんが泣いてるということに。

「逃げ出した後、戦いになったんです。犯人は教団の重鎮だったから・・・。その人の護衛や、その場にいた警邏の人たちと。戦いの中でわたしは・・・、仲間だった人たちを何人も手にかけて、それでもミ・・・ィ様を護れなくて・・・。わたしは罪には問われなかったけど、教団にはいられなくなって・・・。ガーディアンズに入ったんです。救出されたお姉さま。・・・カレン様が・・・レィ様の後を引き継がれたから、わたしはその方の後を引き継ぎたかったから」

・・・その後ミュラさんはしばらく黙ったままだった・・・。

きっと泣いているのだろう。嗚咽を押し殺して。

僕はというと、この小さな少女が体験したあまりに大きな出来事に混乱して、掛ける言葉も見つからない。

・・・自分が所詮一介の民間人でしかないことを痛感させられた。すぐ横で泣いてる少女に何を言っていいのかすら分からないのだ。

僕がもし、彼女に負けない歴戦の戦士だったとしたら、彼女の気持もわかってあげられたのかもしれない。

彼女を楽にしてあげられる、言葉の一つもかけられたのかもしれない。

でも、今の僕は、事件の大きさと、話の重さに圧倒されて、何も思いつきやしない。何を言っても陳腐でおこがましく思えてくるのが、たまらなく悔しい。

「君の主、その方は今は・・・?」

「亡くなりました。わたしが着いたころには全部終わっていて、お姉様の方は無事に救出されて、犯人も逮捕されたんですけど・・・。抵抗されて、その時に・・・」

最悪だ・・・。

僕は天を仰いだ。

それは、聞きたくなかったな・・・。

   

ミュラさんが顔を上げたのは、それからすぐのことだった。袖で顔をこすりながら小さく「ごめんなさい」と謝る彼女を、僕は感心せずにはいられない。

本当に強い子だと思う。事件からまだそんなに月日はたってないだろうに・・・。

「そんな話をどうして僕に?まだ会って間もないというのに?」

簡単に人に話せるような話じゃない。少なくとも会って数時間の、仕事の依頼人に話せるような内容では決してない。

なぜミュラさんは、ここまでの話を僕に?

教団とガーディアンズが頑なに口を閉ざしている事件のことを、誰かに話したと知れたら、ミュラさんもただではすまないはずだ。

「・・・はじめて会ったんじゃ無いですよ?ディックさん」

なんだって?

「覚えていませんか?何年か前、先生に連れられて昇空殿にいらしたとき、一緒に指導を受けた子供たちがいませんでしたか?わたし、その中にいたんですよ?」

「・・・そんな・・・」

・・・そんな馬鹿な。驚きに言葉を失う。それは僕にとってあまりに衝撃的な告白だったから。

ミュラさんが、あの中にいた?

そんなはずがない。あそこにいた子達がこんなところでガーディアンズになってるはずが・・・。

・・・いや、さっきの話が本当ならありえるのか・・・!?

あれは今から5年前のこと。

そのころ祖母は何人かの巫女見習いの子供を預かっていた。

僕は祖母から、その子たちの面倒をみるように言われて、昇空殿に行ったんだ。ほんのひと月ほどのことだったけど、僕はその巫女見習いの子たちと勉強したり、遊んだりと、合宿のような感じで過ごしたことがあった。

忘れるはずもない大切な思い出だ。

「じゃあ、君はひょっとして、あの時一番小さくておとなしかった・・・」

「残念でした。わたしはその中では中くらいの背丈でしたから。わたしはつまみ食いしにいって一緒に怒られた子ですよ?」

「な!?」

なんですって!?

あのときのあの子がミュラさんだって!?

勉強も運動もよくできたけど、元気が良くて、一番手のかかった子。

つまみ食いの他にも、ご神木への木登りや、教団の偉い人の部屋に勝手に忍び込んだりと、結構洒落にならないことやらかして、祖母や僕を困らせてくれました。

相撲をして投げ飛ばしてくれたこともありましたね・・・。

あれ、あなただったのですか・・・。

僕は頭をかかえた。

星霊のお導きというのは本当に恐ろしい。

「・・・また君に投げられるとは、思いませんでした・・・」

「あはは。思い出しました?」

「頭が痛くなりそうなことを色々と・・・。でも、すみません。ずっと気が着きませんでした」

「いえ、仕方ないですよ。あのころはみんな同じ服装で仮面までつけてましたし、名前だって・・・」

そう・・・。あの時預かっていた子は、将来幻視の巫女になる可能性のある子供たち。

つまりは太陽系的VIPの候補者たちだった。そのため将来や身の安全のことを考えて、僕は彼女たちの名前や素顔を教えられず過ごしてきた。

彼女たちは僕の前では仮面をかぶり、偽名を使っていた。この子は・・・。

「きみはアキなんだね」

「ん」

なんとも安直で、適当につけたとしか思えない偽名。

ハル、ナツ、アキ、フユ。あのころ本当にこれで呼び合っていたのだから笑えてくる。

「適性が低かったから、わたしはあの後候補者からは落とされて、それからは警衛士として訓練してたんです。わたし、そっちの方が向いてたみたいで・・・」

まあ、そうでしょうね・・・。

正直、あのころ、『こいつが巫女様とか、絶対ありえねー』って、思ってましたから。

それにしてもあのお転婆がね・・・。

餡子職人の娘に生まれて、幻視の巫女候補。でもそれには選ばれずに警衛士になって・・・。

SEED事件を体験し、教団内の陰謀に巻き込まれ、今はガーディアンズになっている。

なんとまあ、忙しい星の定のもとに生まれてきたのだろう。

でも、これでいろいろと腑に落ちました。

女の子なのに、チャンバラや相撲が好きでやたら強かったり、お菓子好きでいつもこっそり持ち歩いていたり。

特にダンゴモチは大好物でしたね・・・。

可愛らしい容姿と言動に騙されていました。

あなた、立ち振る舞いは変わっても、中身は全然変わってないわけですね。あのころと・・・。

「どうしたの?お兄ちゃん?」

「お兄ちゃん言わない!」

絶対わざと言ったに違いない。みんな僕のことをあのころそう呼んでいたから。

変わってない。この子は全然変わってない。

「随分、女の子らしくなりましたね。おかげですっかり騙されました」

ちょっと仕返しに言ってやる。分からなかったくらいに女の子らしくなってたのは事実だから、褒め

言葉なんですよ?これは一応。

でもミュラさん、少し頬をふくらませて。

「む。騙されたとか言わないでください。わたしだって成長してるんですから」

「ふうん、成長ね・・・」

僕はミュラさんの身体をじっと見る。

ゆったりとした服装で、今ひとつ体型が分かりづらいのだけれど・・・。

見た感じ、発育良好とはお世辞にも言えないだろう。

「何が言いたいんですか!?」

心の中で考えていたことを見透かして、ミュラさんが噛み付いてくる。

何がも何も、あなた、あのころと背丈とか変わってないじゃないですか?

もちろん、口には言いませんけどね。怖いから。

でも、今の反応から、当人がそのことを気にしているのは間違いなさそうだ。

「喧嘩なら買いますよ?」

ごめんなさい。調子に乗りすぎました。

思いがけない再会に、僕も浮かれていたのだろう。でもこの程度の軽口を普通にいいあえるくらい以前僕たちは仲が良かったから、たぶん大丈夫だ・・・。

仮面で顔を隠し、偽名で呼び合う奇妙な共同生活だったけど。それでも僕たちは友達になれたんだ。あの時僕たち5人には確かなキズナが生まれていたと、僕は今でもそれを信じている。

だから、別れのときの寂しさは相当なものだった。彼女達とは二度と会うことはありえないはずだったのだから。

でも、これで合点がいった。

ミュラさんが、事件の話しを僕にしたことに合点がいった・・・。

   

「サテ、ソロソロ夕食デゴザルヨ」

いつの間にか結構時間がたってしまっていた。

「ん。いきましょうディックさん。シェフが今日は腕によりをかけるって、気合入れてましたから」

ミュラさんが立ち上がる。

「うん。そうだね・・・あれれっ?」

僕も立ち上がろうとして、それができず僕はまた砂浜に倒れることになった。

「だ、大丈夫ですか!?」

ミュラさんが慌てて声をあげるが・・・。

「すみません。足がしびれて・・・。これも回復テクニックでなんとかなりませんか?」

ミュラさん、僕をじ~っとみて。

「知りません」

ミュラさんはぷいっと後ろを向く。

「では、先に失礼しますね」

と言ってガイストたちを連れて、行ってしまった。

「デハマタ夕食ノトキニ」

タマモがちょこんと一礼するように、体をかたむけ主の下へと続く。

一団が去っても僕はそのまま横になったままでいた。

実は足がしびれたというのは、半分はお芝居だ。ずっと話を聞いていて、体がこわばってしまっていたけれど、動けないほどはなかった。

まあ、ミュラさんも気がついてただろう。自分でもバレバレな演技だったと思ってるし。

まあ、ほっといてくれたんだから、それでいいんだ。

「ドウシタデアリマスカ?夕食ニ遅レルデアリマスヨ?」

ミズチがふわりと、視界をふさぐのを僕はそっとどかす。

「ごめんね、もう少しだけ、このままでいていいですか?」

「フム・・・」

ミズチは僕の横に降りると静かになる。

ありがとう・・・・。と、心の中でミズチにお礼を言って、僕は日が落ちて群青色に染まった空を見上げた。

少し頭の中を、整理するしてみよう。

そして目を閉じる。

静かに深く息をして心を落ち着ける。考えごとをする時、僕はたいていこうしている。

さっき、ミュラさんが話した内容を頭の中で反復して、推測と仮説を交えて教団内でおこったという事件を考察してみる。

ミュラさんは、自分がある「お方」の専属護衛官だったと言っていたけれど、実際僕のような一般人に役職と名前を伏せないといけないような「お方」など、そうはいない。

もっともミュラさんは、つい名前を口に出してしまっていたけれど・・・。

『ミレイ様』ね・・・。

グラール教の象徴、現幻視の巫女ミレイ・ミクナことだと見て、まず間違い無いと思う。

元幻視の巫女候補だったミュラさんは、現幻視の巫女ミレイ様に使えていたということだ。

さて、問題は・・・。

僕は目を閉じて考えに集中する。

SEED事件中に教団内で起きたとされる事件で、ミレイ様が亡くなられていたということだ。

本当にそんなことがあったというのだろうか?

もちろんこれは話の中から、導き出した僕の仮説でしかないけれど、そうでなければ教団とガーディアンズが隠し続けている説明がつかない。

SEED事件の最中、もしミレイ様が亡くなられたことが公になっていたとしたら・・・。

グラールは団結して事件を乗り越えることが出来ただろうか・・・?

そして、ミレイ様に双子の姉がいたという事実。ガーディアンズだったというそのお姉さんというのが、ミレイ様の後を引き継いだというわけか・・・。

SEED事件が落ち着いた今でも、被害の収拾につとめる彼女の姿をメディアでも良く見かけていたけれど、まるで気がつかなかった。

自分を捨てて、幻視の巫女ミレイ・ミクナとして生きていくと決めたんだ・・・。ミュラさんが目標にしたいと思うのも分かる。

・・・さて、ある日突然グラールをひっくり返しかねない大スキャンダルを聞かされた僕はというと・・・。

・・・黙っているしかないだろうな・・・。

話をしてくれたミュラさんも、これが公になって騒ぎになるのを望んではいないだろうし、もし何かの間違いで僕の口から話が広がったとなったら。

ミュラさんはきっと僕を許さない。

敬愛するその人の気持を台無しにすることを、あの子は絶対に許さない。

そして、なぜ重要な秘密であるにもかかわらず、ミュラさんが僕にこの話をしたのか・・・。

それにはまず、この前提が必要だ。

たぶん僕は、ミレイ様と面識がある。

あの時、預かっていた4人の巫女の候補者たち。その中で、おそらく一番年上で、物腰の柔らかい女の子。やさしくて面倒見がよく、他の候補者の子達からとても慕われていた。もちろんお転婆のミュラさんからもだ。「お姉ちゃん」と呼んで懐いていたっけ。

ハルと呼ばれていた、あの子がおそらく・・・。

彼女のことは、今までも「もしかしたら・・・」くらいに考えていたけれど、今なら確信が持てる。

今のミュラさんの立ち振る舞いが、すっかり可愛らしくなったのも、きっとあの子の影響だ。あのお転婆があの子の言うことだけは素直に聞いていたのだから。・・・まったく、婆様も形無しだな。

さて、考えを戻そう。

ミュラさんは、きっと寂しかったんだ。

事件から時間だってまだそれほどたってない。それなのに教団から出て、ガーディアンズに入ってからも一人でずっと、辛いのを我慢していたんだろう。誰にも話すことができないから・・・。

そこへ、共通の思い出を持つ僕と会ってしまった。

親しかった僕と会ったことで、我慢してきたミュラさんの心の箍がついに外れてしまい、話さずにはいられなかったと考えるなら、一応筋は通る。

一通り考えをまとめて、僕は目をあけた。

「さて、ごはん食べに行くか」

「ウイッス」

僕はミズチの頭をひとなですると立ち上がる

明日から大変だからな。しっかり食べて、鋭気を養っておかないと・・・。

    

「貴様!!ミュラに何をした!?」

支局にもどったとたん、ものすごい剣幕のソウライが僕につめよってきた。

どうしたって言うんだ?急に・・・。怖いじゃないか。すごく・・・。

「え?何したって、僕は別になにも」

僕がしたことといえば、闇討ちしようとしたくらいだけど、それは未遂に終わって返り討ちにあったわけだし・・・。

ソウライがこんなに怒ることには心当たりが無い。

「シェフ~。落チ着クデアリマス」

「これが、落ち着いていられるか!あいつさっきルウに自室謹慎を命じられたんだぞ?お前さっきまで一緒にいただろう?いったい何があった!?」

・・・なんで知ってるかは置いといて、自室謹慎とは穏やかじゃないな。

ミュラさんがそんな処分をうけるとしたら、教団での事件を僕に話してしまったこと意外に考えられない。

でも、いくら怖い顔で迫られたからって、僕がそれをここでそれを言うわけにはいかないわけで・・・。

「いや、分からないって。僕は海岸で訓練を見せてもらって、その後ダンゴモチをご馳走になったくらいだから」

知らぬ存ぜぬを、通す他はない。あとは、ソウライが尋問だ、拷問だの強硬な手段に出ないことを祈るのみだ。

「なんだと!?お前、ミュラのダンゴモチを食ったのか!?」

しかし、意外なところでソウライの表情が怒りから、驚きへと変わることになったようだ。肩をつかまれる力は一層強くなってしまったけれど。

なぜ、ダンゴモチにそれほどまでに反応する?

「それが、どれだけ幸運なことかわかってるのか?」

何もそんなに興奮しなくても・・・。いや、ソウライの興味がそっちにそれたのなら、それでいいのだけれど・・・。

「たしかに、すごく美味しかったけど、それがどうかしたのか?」

「そのダンゴモチには餡子がかかっていただろう?今日、ミュラの実家から荷物が届いていたはずだ」

「うん。そんなこと言ってたよ?たしかお父さんが餡子の職人なんだって」

「・・・ミュラの父親はニューデイズ一、いや、宇宙一の餡子職人だ。ニューデイズの老舗『闇月庵』からの再三の誘いも断り、小さな村の外れで餡子を作り続けているという。彼の餡子は『闇月庵』の他数えるほどの店にしか卸されていない。あとは、昇空殿か。かの巫女様もお気に入りだと聞いている」

・・・そんなにすごい餡子だったのか。

「そして、ダンゴモチは先日ミッションに出る前にミュラがその手でこねて作ったダンゴモチ。あれほどのダンゴモチがこの宇宙に他にあるか?いや、無い!!」

拳を握って力説。ミュラさんが作ったというダンゴモチは、それだけで宇宙一の職人の作った餡子とつりあう物になるらしい。

・・・確かにミュラさんがあの小さな手で、生地をこねて団子を作っているのを想像すると・・・。

いや・・・、変な意味でなく、とても貴重なものに思えてきた。・・・本当に変な意味でなく・・・。

なるほど、そういうことか。

ソウライはミュラさんが好きなんだ。・・・そうだよな、可愛いし。

それでミュラさんのこと気にしてたわけか。

いや、案外二人はとっくに付き合っていたり?そういえば僕はここでのミュラさんのことを何も知らない。

・・・それが今、少し寂しく感じた。

「ひょっとして、ミュラさんと付き合ってるの?」

直球。ソウライのような(自称?)硬派なタイプにまどろっこしい聞き方しても、面倒なだけだ。

「な!?何を馬鹿言ってやがる!!俺は料理人として、最高のものを食ったお前をちょっと嫉妬しただけだ」

真っ赤になって否定。

うわ~・・・。こんな分かりやすい反応するやついるんだな・・・。

でも、なんだ・・・。付き合ってるわけではなさそうだ。

でも、ミュラさん昔から食べること好きだったし、ソウライは料理人でいい奴だし。このままいけば・・・。

・・・いや、邪魔しようなんて考えてないけど?

「ダンゴモチなら、言えばくれるだろう?ミュラさん意地悪したりする子じゃないし」

「そしたら、あいつの分が減ってしまうだろうが!」

・・・すまん。僕はそこまで考えられなかった。

喜べソウライ。ミュラさんへの想いは、間違いなくお前が宇宙一だ。

「まったく、そんなこと言ってるから、いつまでたっても進展しないんだわさ」

背後から変ななまりのある声がして・・・。振り返ると・・・。

うわっ、まぶしい・・・!?

・・・と、つい目を覆いたくなるぐらい、すごい美人のキャストの女性が立っていた。

印象的な白い肌と鮮やかな金色の髪、すらりとした、綺麗なスタイルをなぜか割烹着で隠している。

「うちのシェフが失礼しただわさ、あたしはここで用務兼受付やってるレノアだわさ。」

「あ、いえ、こちらこそお邪魔してます」

どこか不思議な訛りのあるしゃべり方。どこの言葉だろう。

「こら、レノア。サラダの用意はできたのか?」

「そんなのとっくに終わったじぇ。あとはメインの仕上げだけだから、呼びにきたんだわさ」

それで割烹着か。なるほど料理中だったわけだ。

「忙しいなら、全部あたしがやっちゃうじぇ?」

「やめろ、俺の料理が壊れる!!」

「だったら早く来るだわさ。もうみんな集まってるじぇ。準備さっさと終わらせて、ミュー子のところに差し入れでも持っていくだわさ」

「だから俺は別に・・・。って掴むな!!・・・お前も早く来いよ!?」

レノアさんはソウライの襟元をがしっと掴んで引っ張っぱっていく。傍目には目つきが悪く、『こわい系』なソウライに全く物怖じしている様子は無い。

信頼関係というより、力関係なんだろうな。

「なんだったんだ・・・?いったい」

二人を見送る僕としては、そういう他はないと思うんだ・・・。

   

僕の歓迎会にかこつけた、賑やかな夕食会。

ミュラさんはいなかったけど、誰もがそのことに触れようとはしなかったので、僕も触れずにいることにした。

ソウライが腕によりをかけたと言うだけあって、とても美味しかった。

クリスティ博士からも貴重な話しが聞けたし、他の職員の方も紹介してもらって、とても有意義な時間だった。

そんな中、少し席を離れた僕はルウに呼び止められた。

「ディックさん。申し訳ありませんが、こちらにサインをお願いします」

そういって、一枚の書類を渡される。

機密保持契約書・・・?

ああ・・・。やっぱりね。あの話、やっぱり聞いてただではすまなかったみたいだ。

そんなの無くても誰かに話すつもりなんて無いけれど、ルウ達ガーディアンズ側にも立場がある。

書面には、今後事件の真相が公表されたとしても、自分は知らなかったという事にしておけという内容も含まれていた。つまりは、全て聞かなかったことにしてほしいということだろう。もっとも僕はガーディアンズの人間ではないから、本来は聞く必要は無い。この書類へのサインは、ガーディアンズ側からのお願いでしかない。

ただし、こっちは人質をとられている。他でもないミュラさんだ。

僕がこれにサインをして、話を聞かなかったことにしなければ、ミュラさんは相応の処分を受けることになる。そうしたら、依頼はどうなる?

依頼を受けれる、ガーディアンズは今ここにはミュラさんしかいないのだ。当然キャンセルとなるだろう。

・・・誰も得することはない。いや、損得なんて関係なく誰にもしゃべる気はないけれど。

僕がサインすると、ルウはいつもの無感情な声で礼を言う。

「ありがとうございます。・・・これでミュラを謹慎させておく理由がなくなりました。よければミュラを呼んできてもらえませんか?ミュラから聞きました。あなたはミュラの過去を知り、とても親しい間柄だったとか。今あの子を呼びに行くのはあなたが適任でしょう」

そういうことなら喜んでいきますよ。

「わかりました。ミズチ、一緒に来てくれますか?」

「ウイッス」

とりあえず案内役を確保。次はソウライに声をかける。

「ソウライ、ここの料理、3人分くらいとっといてくれる?今から大食らいつれてくるから」

「心配するな。ちゃんと用意してある」

さすがに、言うまでも無かったようだ。

こうなることまでは予想してなかっただろうけど、後で差し入れに持っていこうと考えていたのかもしれない。

「じゃあ、シチューも温め直してくるじぇ~」

クリスティ博士達とお酒を飲んでたレノアさんも厨房へとむかう。

博士達も自分達の料理やつまみを取り分け始める。

温室で栽培された野菜のサラダに、島で獲れたという動物のステーキ。グリルにした魚。グラスに注いでいるのは、支局でこっそり鋳造してると自慢していたよくわからない果実酒じゃないか?

おいおい・・・。ミュラさんは未成年だぞ?まさか酒まで勧めたりはしないだろうな?

とにかく、ここにいる誰もがミュラさんのことを心配していたことは間違いないようだ。

「ディック~。早ク行クデアリマスヨ~?」

ミズチが呼んでいる。とりあえず彼女を連れてこよう。

ミズチの後を追いながら、僕はミュラさんと顔をあわせた時、何て言おうかを考えていた。

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ためしに日記に上げて見ます。PSU小説第3話です。改訂のため予告無く消す可能性がありますのであしからず・・・。

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PSU小説2章 あとがき

まだ時期尚早な気もしますが、とりあえずPSU小説「依頼人とガーディアン」をお届けです。

エトさんやをあさ師匠が順調に進めてますからね・・・。

もうちょっと煮詰めたかったとこですけれど、手直しに次ぐ手直しで、半分訳わからなくなってきてたこの第2章を、この辺で出してしまおうと思っての投入です!!

エトさんのとこではかっこよく書かれてるミュラさんですが、こっちでは・・・。さて、どうでしょう・・・?

オリジナルのキャラクターを立たせるのはむずかしいですね。おかげで、再現の楽なルウの会話が多くなってしまいました・・・。自分の中でミュラというキャラはそれなりに出来てるつもりでいたけれど、実際表現すとなると・・・。

こんなのになりました・・・。

グラールで出会えるミュラさんとは別人ですのであしからず・・・。

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