« SG-550vsS-550 | トップページ | 2017 »

特命風紀委員みーこ

                      おことわり

この作品は、セガから発売されているオンラインゲーム。ファンタシースターオンライン2を元に、勝手な解釈と設定を持ち込んで書かれた二次創作物です。

そういったものが苦手という方や、不愉快に思うファンの方もいるかと思います。

まして、作者は素人であり文章もあまり読みやすいものではありません。全ては作者自身の自己満足のために書かれたものですので、本来読むことをお勧めはいたしません。

しかしそれでも、読んでやろうじゃないか!!という方、その後発生する感情を自己責任で処理するという事で、読んでいただけると嬉しいです。

 

 

 

『こちらブレイバス。これよりミッションを開始する。各セクション、状況を報告しろ』

『こちらカスタムレイ03です。Gを確認しました。目標到達までおよそ500秒』

『バリスタリーダーよりブレイバスへ。動員が遅れた。現在移動中』

『カスタムレイ12からブレイバスへ。接触して時間を稼ぐ!』

『ブレイバス了解。無茶はするな?』

『ああ、まかせろ!行くぜBaby!!Halo!! haw are you?』

『ブレイバスよりバリスタへ。時間が無い。配置はまだか?』

『こちらバリスタリーダー。あと30秒くれ!』

『急げ!』

『こちらカスタムレイ12。すまん、限界だ、撤収…、くそっ!だめだ!Mに補足された!』

『大丈夫か!?すぐに援護を送る!』

『いや、もう遅い。俺に構わず任務を遂行してくれ』

『すまない。カスタムレイ12。君はいい仕事をした』

G再び移動を開始。到達まであと300秒』

『こちらバリスタ、配置完了!』

『よし!突入しろ』

『了解!GOGOGO!!』

『バリスタ02、目標発見……、クリア!』

『バリスタ05、対象確保!』

『お、おい!みんなこっちへ来てくれ!』

『バリスタ06か?どうした?』

『こ、これを見てくれ……』

『ん?これは!?なんてことだ!?』

『こちらブレイバス。バリスタリーダー、どうした?トラブルか!?』

『バリスタリーダーからブレイバス。すごい数だ……。こちらの装備では手に負えん。指示を乞う』

『……了解。検討する。少し待て』

『カスタムレイ03より、GおよびM、あと120秒で接触します』

『こちらミズーリ02、配置完了……。ふぁ~眠い……』

『同じくミズーリ03、配置完了やで!』

『きたか!!バリスタ、部室の窓は開けられないか!』

『くっ、駄目だ!暗幕の裏に板が入っている。そう簡単には……くそっ、これが限界か』

『ミズーリ03、目標の窓は確認できるか?確認できたらそこからグレネードを叩き込め!外すなよ!』

『は、はい!?あれ、腕一本分の隙間しかないやん!そんな無茶な~』

『いいから、やれ!・・・全員、耐ショック、耐閃光防御!!』

『もう、どうなっても知らんで!?』

…。

……。

…………。

『やった!成功だ!目標は完全に消去!目標は完全に消去だ!!ひゃっほー!!」

『よくやった!ミズーリ03!後でビールをおごってやる!』

『や、うちまだ中学生やから。っていうかあんたもまだ高校生やろ!』

『カスタムレイ03より作戦中の各員へ。G、接触します』

 

写真部。

アークス学園に勤める教師であり、生徒指導を担当するゲッテムハルトがそう書かれたプレートのドアを開けると少し焦げたような臭いがした。

「あ?なんだ?焦げくせーな?」

「あ、ゲッテム先生、ちーっす」

写真部は文化部の中でも高い実績を上げている部活動で、そこそこ広い部室を割り当てられている。

教室と同じ広さのそこには10名程の男子生徒。その中の半数は先ほど突入した風紀委員会の実行部隊だ。その中のひとりがゲッテムハルトを見て挨拶をする。

「あん?お前、写真部じゃねーよな?お前ら風紀委員か?」

「ういっす。先生も巡回っすか?」

「まぁな」

鋭い視線で周囲を見回し、軽く部室の中を物色して苛立たしげに舌打ちをする。

この学園の写真部は影で生徒の写真を売買することで、少なくない利益を上げているという噂があった。

生徒指導部でも度々問題に上がってはいたものの確固たる証拠も掴めていなかったため、これまでは手を出せずにいたが、今日あたり写真部が撮りためた写真をまとめて現像するという情報があったために抜き打ちで査察に入ったのだ。

しかし目に付く限り、郷土の風景や、学園の日常を写したもの、又は特撮を用いてでっち上げたとみられるUFOUMAなどの写真ばかりで、生徒が売買するようなものには見えない。

「なんだい?この匂いは?」

ゲッテムハルトに少し遅れて入ってきたのは同じく生徒指導の体育教師のマリアだ。

「実はさっき証明機材で暗幕の一部を焦がしてしまったんですよ」

「おいおい、ぼやとか洒落になんねーぞ」

「それでこの匂いかい。大事には至らなかったみたいだが、気をつけるんだよ?今度から何かあったらすぐ報告するんだ。いいね?」

「はい、すいません」

写真部の部室の中はフィルムの現像を行うために一部が暗幕で覆われている部分があった。

「ああ、そっちは暗室になってるんで……」

写真部部長の男子生徒が怯えたように小さな声で言う。なぜかこの部長、ゲッテムハルトが入ってきた時には既に涙目になっていた。いや、この部長だけでなく、写真部の部員全員がそんな感じである。

「大丈夫、そのへんは心得てるよ」

いくら傍若無人なゲッテムハルトやマリアであっても、一応教師である。生徒の作ったものや作品を理由もなく壊したりするような真似はしない。

手作りと思われる暗室の入口、二重になった幕を慎重にくぐってその中に入る。

「すごい数だね。いつもこれだけの数現像してるのかい?」

「いえ、最近はこの部でもデジタルがメインです。けれど、フィルムがいいって部員も多いですからそれで。でも現像するのには手間かかるからまとめてやるんです。それで量ふえてしまって」

「なんだいこりゃ。ここにあるネガ、全部まっしろじゃないか」

「今さっきのトラブルでちょっと……。どうも光が当たっちゃったみたいで」

「「ちっ!!」」

マリアとゲッテムハルトが揃って舌打ちをしたので、写真部部長が怯えたように身をすくませる。

「……ふぅん。まぁしょうがないねぇ」

マリアもゲッテムハルトからもそれ以上の言及はなかった。そこにあるのが光で使い物にならなくなったフィルムばかりだとわかると暗幕の外に出る。

「特に問題は無い……か?まぁいいだろう。面倒がないならな」

「この学園の生徒はみんな真面目ですからね。我々風紀委員も仕事がありません」

「ふん。まぁ、そういうことにしておいてやらぁ」

そう言って部室を出ていくゲッテムハルト。続いてマリアも退出しようとして、ふとその場にいた風紀員に向かって言った。

「そういえば、さっきあたしらの前で突然ウィッキーさんの真似をしてきた馬鹿がいたんだが、あれもあんたらの仲間かい?ひどい発音だったから英語のうらら先生のとこに補習にやったんだが」

「いえ、知らないですね。……ところでウィッキーさんって誰なんですか?」

「ふむ。あんたたちの世代じゃ知らないだろうねぇ」

マリアが退出すると、その場にいた風紀委員は揃って校舎に向かって手を合わせた。

すまないカスタムレイ12……。君の勇敢な行動を僕たちは決して忘れない。

諜報部隊カスタムレイは風紀委員以外の生徒で構成され、普段から風紀委員との関わりを知られないように行動している。

その役割は情報収集の他、風紀委員の実働部隊の準備が整うまでそれと分からないよう教職員を妨害したりなど影ながら風紀委員をサポートするのが彼らの任務だ。

『こちらカスタムレイ03、GおよびM警戒範囲外に出ます。戻ってくる様子はありません』

『よし、ブレイバスより全メンバーへ、作戦終了。みんなよくやってくれた!速やかに撤収しろ』

『『『『『了解!!』』』』』

 

「ご苦労だったなミズーリ3。いや、みーこ」

風紀委員会室では、冷えた350mlのペプシの缶を手に、高等部の1年生して風紀委員長であるジョウがよみねこが来るのを待っていた。

他のメンバーの姿はない。どうやらジョウは用があって彼女だけを呼び出したらしい。

よみねこ(通称みーこ)は風紀委員会に所属する中等部3年生。

ジョウは高等部の1年生ではあるが、中等部から風紀委員として多くの作戦に参加してきた実績が認められてこの春から風紀委員長の任についている。

さっきまでブレイバスのコードネームで作戦の指示を出していたのも彼女だ。

「会長ごちになります!」

よみねこはペプシ受け取るとプルタブを開け喉を鳴らしてそれを煽った。

「ぷはーっ、最高ですわ!」

「うむ。仕事の後の一杯は格別だな」

そう言ってジョウも自分の分を手に取ってそれを掲げる。二人はカツンと小さく乾杯すると残りを飲み干す。

アークス学園では高等部、中等部と生徒会や部活動はそれぞれ別々に分かれているが、委員会は合同で運営されている。

それは図書室や保健室、購買など共有施設の運営の為だが、学内の秩序を守るために中高の枠組みを超えて活動する風紀委員会もそんな数ある委員会の中の一つなのだ。

「しかしよくやってくれたな。おかげで今週も処分者ゼロを達成できそうだ」

「まったくや!30メートル先のちっさい隙間に矢を通すなんて真似、そうそうできんで!?」

ミズーリ3、よみねことミズーリ2、フェリオがあの場にいたのは本来写真部が逃走を測った場合。もしくはどうしても間に合わず、教師を強引にでも妨害しなければならない場合に備えてのことだった。

よみねこは弓の、フェリオは射撃の名手だ。

よみねこが使ったのは、矢の先端部分に科学部が制作した閃光弾を取り付けたもので、あのとき、大量のネガを隠す時間が無いと判断したジョウは、わずかに開けることができた窓の隙間から閃光弾を投入して現像中のネガを真っ白に判別出来なくしてしまおうという作戦を指示した。

距離はあったが近づくことは許されなかった。

学園内に火気、爆発物を持ち込むことは校則違反だ。そのためよみねこは学園の敷地外からの狙撃を求められたのである。

もしよみねこが外していたならば、次の矢はフェリオの銃弾と共にゲッテムハルトに向けて放たれていただろう。

「しかし、今日は危なかったわー。ゲッテム先生達はなんで写真部が今日現像始めることがわかったんやろ?ピンポイントで狙ってきましたよね?やっぱ部員の密告かなんかやろうか?」

「ふむ……。それも無いとは言えないが、今回は違うだろうな。実は写真部が今日の為に使う資材を仕入れたとき領収書を業者に忘れてきたらしくてな。それで業者が学園側に問合わせてきたのだそうだ。そこから生徒指導部は近々写真部が現像を始めるだろうと網を張っていたのだろう。まぁ、写真部の損失は大きいだろうが、我々が気に病むことじゃない」

「なるほどなー。もっともうちは全く同情はしてないんやけれど……」

写真部が影で売買しているのは主に学園内でも人気のある生徒の写真だ。その中には当人の承諾を得て撮ったモノもあれば、隠し撮りをしたようなモノもある。

よみねこも以前写真を撮らせてくれと頼まれたことがある。

最初のうちはおとなしめのポーズで気分良く撮られていたのだが、次第に要求されるポーズはグラビアアイドルのような際どいものにエスカレートしていき、カメラが下から覗き込むような角度になってきたところでその写真部委員をおもいっきり蹴り飛ばしたということがあった。

そのときは画像のデータの消去と、パフェとラーメンを奢らせることで許してやったのだが、彼らがそれで懲りていないことは知っていたし、彼らが写真の売買で稼いでいる額は月販で諭吉二桁になるとか言われているのだ。大量のフィルムを失わせた事も気にしていない。

 

「さて、話は変わるがお前に来てもらったのは他でもない。次の仕事の話だ」

「はい?」

「お前は今度の相撲大会には参加するのか?」

「……はい?」

相撲大会はアークス学園中等部で1学期の終わりに各クラスからの代表と、自ら出たがるもの好きが集まって毎年開催されている行事だ。

正直よみねこは興味なかった。

この時期の体育の授業が相撲になったりして、いい迷惑だと思っていたくらいである。

「そんなの出ませんよ、うちのクラスからはみゅらりんが出るの決まってるし」

幸いにも今年のよみねこのクラスには、去年の優勝者がいたため代表の出場者を決めるための予選もくじ引きもじゃんけんも行われなかった。

「そうか、お前はあのポニテと同じクラスだったな」

風紀委員ではミュラを何かと騒動を起こしやすい生徒として要注意人物に指定していた。よみねこにとって良い友人ではあるが、騒動を起こすという点で異論はない。

「実は今度の相撲大会絡みで大規模な賭博が開催されるという噂がある」

「ほんとこの学校は面白いこと考えるやつ多いなー」

写真部による隠撮り写真の案件が片付いた矢先にこれである。

よみねこは武道の名門校として全国からなの知られるアークス学園に入学したとき、そこに通う生徒は部活動や勉学に青春を燃やす真面目で汗臭い連中が多い学校を想像していた。それはそれで当たっていたのだが、ここにはそれと同じくらい真面目に馬鹿やる生徒も多かった。

「うむ。我々風紀委員がこうして影でもみ消して回らなければ処分者は後を立たないだろうな。そうなれば、学園からの部活同や生徒への引き締めが強くなり、貴重な技能や個性が後世に伝えられることなく、結果この学園は凡庸な田舎の学校となり廃れていくことになるだろう」

ジョウの言うことはあながちも冗談でもない。

例えば先の写真部にしても、撮影だけでなく現像も自分たちで行うばかりか、機材の開発などもやっているらしい。そんな技術を持つ彼らだであっても、もし写真の売買が明るみになり処分を受けていたならば、規模と予算を縮小され、それらの技術は継承されることはなく廃れていくことになったかもしれないのだ。

ジョウの言葉によみねこは深く頷く。

風紀委員会が危険を犯してまで学園側を出し抜き、事態の収拾に当たるのはそれを防ぐためだが、実のところみんな楽しいからやっているのだろうとよみねこは思っている。それはジョウだって例外ではないはずだ。

特に今日のような生徒指導部を出し抜くミッションは、日常では味わえない高揚感をもたらしてくれる。ミッションが失敗すれば風紀委員も学校側から相応の処分を受けることは間違いない。

先のミッションで彼女が放った閃光弾は写真部と仲間を救った。記録には残らないし、武勇伝を語ることもできないが、困難な状況を乗り越えたこの達成感と満足感は他では味わえないだろう。

これだから風紀委員はやめられない。

次はどんなミッションが舞い込んでくるのだろうか?期待に胸をふくらませるなという方が無理なのだ。

「そこでお前に潜入捜査を頼みたい」

「潜入捜査!?」

潜入捜査という期待以上に魅力的な言葉に目を輝かせるよみねこ。

「身分を偽って賭博開いてる組織に侵入するんやな?そりゃ面白そうやわ!」

自然とインポッシブルで大作戦な音楽を脳内で再生しながら、ドイツ製の小ぶりな自動拳銃を片手に、変装して組織に潜入する自分の姿を想像してしまう。

面白そうだ。ぜひやりたい!

しかしジョウの次の言葉が、よみねこの想像をを木っ端微塵にぶち壊した。

「いや、まわしをつけて相撲大会に参加しろ」

「えーっ!そっちー?」

「そうだ。お前がまわし姿で悪戦苦闘してる姿をぜひ見たい……。と、いうのは建前で、実際に重要なのは裏で行われる賭博自体ではなくて、それによって八百長が行われるかどうか、その有無を探りたいというのが本音だ」

「いま、本音と建前を逆に言いましたよね?間違えましたよね!?」

ジョウはコホンと小さく咳払いをひとつして椅子に座り直すと、その鋭利な相貌をよみねこに向けて言った。

「まあ、聞け。ぶっちゃけて言うと賭博の方はどうでもいいんだ。ほうっておけばいい」

「はい?いいんですかそれほっといて」

悪を見逃すというジョウの発言に、ジョウのを闇落ちを疑った。まぁ、それはそれで面白そうだと思いながら、ジョウの話を聞く。

「あのなみーこ。俺たちはプロじゃないんだ。もちろん道徳的には悪いことかもしれないが、学校行事の相撲大会で学生同士、誰が勝つか負けるかで、焼きそばパンや妖怪メダルを賭けるくらいどうでもいいじゃないか」

「はぁ…、まぁそうですねー」

確かにそうかもしれないが、どこか釈然としない。そんな様子のよみねこを置いてジョウは話を進める。

「しかし、八百長はまずい。お前は中等部の相撲大会が実は生徒会主催で催されているのは知っているか?」

「え?それって生徒による自主開催ってことですか?なんでわざわざそんな面倒な事を?」

よみねこもこのアークス学園入学して3年目になるが、全くの初耳だ。

正直、今すぐ生徒会室に大会なんてやめるように殴り込みに行きたい。

「疑問に思うのも仕方がないが、これにはやむを得ない事情があってだな。この学園は武道系の部活動に関しては全国でも屈指の強豪校だ。まぁそれらは専用の練習場と充分な予算が確保されている。しかし、この学園にはそれ以外の部活動は存在するが、その数の多さから予算はもちろん、活動場所に関しても充分とは言えない。まぁ、そういうわけで部活動同士で色々揉めるわけだよ」

「まさか、それを収めるためにやってるんですか?」

「そうだ。揉め事は相撲で決着をつけろ。それがこの学園の暗黙のルールだ」

「うち、入る学校間違えたかもしれへん……」

「まぁ地元の風習みたいなものでな。この学園もそれにあやかっているわけだが、他所から来た生徒の中にはお前みたいに知らない者も多いだろう。それで中等部では、わざわざ公の場を用意しているというわけだ。だから八百長があるとかの噂はまずい。正々堂々真剣勝負で決着をつけるという定義が崩れれば、大会の存在意義を失う。それで下手に学園側からの横槍で大会が開けなくなると中等部生徒会としてはいろいろ面倒になるんだよ。これまでそれで納得してきた生徒たちも騒ぎ始めるだろうしな」

「学園に大会やめさせる動きがあるってことですか?」

「確証はないがな。お前も去年の結果は知っているだろう?」

こくこくと頷いた。

去年優勝した生徒はよみねこのクラスメイトで友人だ。

応援にも行っていたからもちろん知っている。

相撲に興味のなかったとはいえ、体格で勝る相手を次々破っていく友人をそのときは熱くなって応援したものだ。

結局その友人は女子の部で優勝したばかりか、その後悪ノリで行われた男子の優勝者との対決にまで勝利している。

「まさか、去年の大会で不正があったと言うんですか?」

「いや、それはないな。そんなことをして誰が得をする?」

「ですよねー」

「しかし、あまりにも衝撃的な結果に、当時も八百長の噂がたったのも事実だ。まぁ、それはすぐに収まったんだが、ここへ来て大規模賭博の噂だ。再び大会に不正があるのでは?という疑惑が浮上してきたとしても仕方がない。それに、去年の大会の後、相撲部ではモチベーションは下がり、しばらく成績不振が続いた。しかもあのポニテに破れた男子の主将も部を辞めている。有力選手を失い学園にとっては手痛い損失だったろうな。まぁ、この学園の相撲部は他の武道系と違って全国的にはそれほどレベルが高くはないんだけどな。全国大会に出場しているのも近隣に相撲部がある学校がほとんど無いからだしな」

「はぁ…」

どこか釈然としないが、学園にとって相撲大会を止めさせたい理由があるのは理解した。

「そこでお前の出番だ」

「はぁ…?」

「お前ちょっと出場して優勝して来い」

ジョウの無茶振りはいつものことであまり言いたくはなかったが、今はこの言葉を言わずにいられなかった。

「はい!?何無茶いってるんですか!?」

「後で何言われてもうちから優勝者を出しておけば黙らせることができるからな。行っただろう?揉め事は相撲で決めろって。勝者こそが正義だ」

「だったらみゅらりんうちに勧誘したらどうですか?あの子今も帰宅部で委員会もやってないし。だいたいなんでうちが」

「あのポニテについては学園内のあらゆる勢力が不干渉だ。奴はその立場を実力を持って手にしている」

「何やってるんあの子……」

学園中に喧嘩売ってるんじゃないかと心配してしまう。

「風紀委員の中等部で実働部隊にいるのはお前だけだ。それにお前も結構名前が知られてるからな。代表として申し分ない。だから、な?頼んだぞ!みーこ!」

「もう……。どうなっても、知らんよ?」

こうなっては何を言っても無駄だろう。よみねこは諦めて肩を落とすと、少しはまじめに稽古してみようかと真剣に考えていた。

 

 

 

大会当日、よみねこは必死で頑張った。全力全開、死力を尽くして試合に臨み、そして燃え尽きて散った。

「うぅ……。うち、もうお嫁にいけへん……」

会場である屋外相撲場は中等部の生徒だけでなく、高等部の生徒も大勢押しかけ例年に倍する観覧客が集まっていた。

昨年友人が成した活躍のせいか、もしくは件の大規模相撲賭博のためか。どちらにしても注目度が高まるのはよみねこにとっては不幸でしかなかった。

「あっはっは!いい試合だったぞみーこ!」

ジョウは見たいものが見れて満足したのだろう。晴れやかな笑顔で、よみねこの丸まった背中についたままの土を払った。

「すみません会長……。期待に答えられませんでした」

「これでいいんだよ。不正に縁のない風紀委員のエースが本気になって勝負に挑んだ。結果はどうあれ、本気ってのが重要だったのさ。そのおかげでオレや生徒会長は大会に不正は無いと胸張って言えるんだよ。それは他でもないお前のおかげだ」

その時試合の続いていた会場の方から、小柄な選手が大柄な相手を破り喝采が上がった。

「ふむ。早々に相撲部勢が全員敗退か・・・。今年も荒れたな。みーこ、大会後一騒動あるかもしれないからいつでも出動できるように備えておけ。ま、その格好のままでも俺は構わないがな」

今年も番狂わせが起こりまくっているようだ。ひと試合ごとに声援、歓声、悲鳴が巻き起こる。それらは時間が経つにつれてどんどん大きくなり、会場の盛り上がりは凄まじいものだ。

大会後は余韻で浮かれ、ハメを外す生徒もいるだろう。……これで何もなかったらこの学園に風紀委員会などありはしない。

「……嫌です。着替えてきます」

小走りで走り去っていくよみねが見えなくなったところでジョウの携帯が鳴った。賭博を捜査させている風紀委員からだ。

「俺だ。……例のモノを見つけたか!?いや、今は手を出すな。引き続き調査を頼む。取引の時間がわかり次第連絡を、……任せたぞ」

ジョウは電話を切ると大会に目を戻した。依然盛り上がる会場の様子に小さく息を吐いて目を細める。

今日は長い夜になりそうだ。

 

 

 

             あとがき

この話は以前よみねこさんに書いていただいた、小説にリンクするように書いた番外編です。

そちらの話はカテゴリー、頂き物小説から読めますのでそちらからぜひ!!

 

|

« SG-550vsS-550 | トップページ | 2017 »

PSO2小説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 特命風紀委員みーこ:

« SG-550vsS-550 | トップページ | 2017 »