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2016年4月

イラスト頂きましたので・・・

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瑠環さんからの3ヶ月遅れのバースデイプレゼント!
ミュラのイラスト頂いちゃいました。ありがとうございます。

そこで簡単にショートストーリーを考えてみました。

縁側に座って一人何やら呑んでいるミュラ。そこにミュラの家に住み着いている神様、つくねが声を掛けて……。

情景などは各自の妄想で補ってください。

 

「なんじゃ?誰かと思えばミュラ坊か」

 

「あ、つくね様」

 

「良い香りがするのぅ。酒か?あのミュラ坊が酒を嗜むようになったとは年月が経つのは早いものじゃ」

 

「そんなわけないです。わたしはまだ14ですよ?これは裏のおじいちゃんにもらった甘酒です」

 

「……怪しいの?どれどれ儂も一杯……ふむ美味い。しかし明らかに酒精が入っておるな」

 

「なかなか美味しいですよ?ね?つくね様」

 

「……まぁ良いか。その格好は神楽の衣装かえ?馬子にも衣装じゃな。誰かと思ったぞ」

 

「つくね様、ひどいです。誰のために稽古してると思ってるんですか」

 

「もうすぐ祭りか。ふん。あんな退屈なもの見せられてもの。まだ奉納相撲を見ている方が面白い」

 

「えーっ!つくね様のためにやってるのに!なんで好きでもないのにやらせてるんですか?」

 

「人の世が変わっていくように、神の趣向も移ろうものじゃ。しかし近年になってそろそろ止めようかと思っておったら、県の無形文化財に指定されたとかで今更止められんと言いおる。まったく、誰に捧げるための神楽かわからんのう」

 

「なんですかそれ!毎年みんな一生懸命練習してるのにひどいです」

 

「何百年も同じものを見せられればそりゃ飽きるわい。しかし、今年はお主が舞うのであれば少しは楽しめるかの?期待しておるぞ?」

 

「やめてください。面白いことなんてしませんよ?」

 

「つまらん奴になったものじゃ。以前のお主なら喜々として皆が驚くようなことをしでかしてくれたものを……。儂の知ってるミュラ坊は、どこに行ってしまったのじゃ?」

 

「……わたしも成長したのです」

 

「そうかの?あまり変わってるようには見えんがの?」

 

「もうつくね様の背丈だって追い越しましたし、身体も中身も昔のわたしでは無いですよーだ」

 

「ほほう?どれどれ?」

 

「ひゃっ!?つくね様ってば、触り方、触り方っ!?」

 

「ふむふむ、確かにいい締まり具合じゃ。鍛錬は怠っていないようじゃの」

 

「つ、つくね様、いったいどこ触ってるんですかっ!?わたしの成長具合見るんじゃないのですか!?」

 

「……ふん。人などあっという間に歳をとって行くものじゃ。お前が成長したところで儂はちっとも面白くなんかないわ」

 

「……つくね様、寂しいんですか?」

 

「……手間の掛かる坊がいくらでもおる。そんなわけなかろう」

 

「あはは、つくね様可愛いです」

 

「ミュラ坊のくせにからかうな。酒じゃ、もう一杯よこせ」

 

「はい。つくね様。……わたしは、つくね様のお傍にずーっといますから、大人になっても、お婆ちゃんになっても、死んじゃってからもずっとずっと傍にいます。何とかしていてあげます」

 

「……馬鹿者。とっとと嫁に行け」

 

 

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ふぁるぷだいありぃ その8.1

                         おことわり

この作品は、セガから発売されているオンラインゲーム。ファンタシースターオンライン2を元に、勝手な解釈と設定を持ち込んで書かれた二次創作物です。

そういったものが苦手という方や、不愉快に思うファンの方もいるかと思います。

まして、作者は素人であり文章もあまり読みやすいものではありません。全ては作者自身の自己満足のために書かれたものですので、本来読むことをお勧めはいたしません。

しかしそれでも、読んでやろうじゃないか!!という方、その後発生する感情を自己責任で処理するという事で、読んでいただくようお願いします。

 

 

 

女の子が弱いなんて嘘だ。

誰だこんなひどい嘘を言いだしたのは。

昨今の草食系男子、肉食系女子の増加が話題となっているが、これは恋愛に奥手な男性が増えていることを言っているのかと思っていたがそれは大きな勘違いだった。

文字通り、女の子は獰猛な肉食動物だったのだ。

彼女達は獲物を見つければ力尽くでねじ伏せてくる。抗おうにも圧倒的な戦力差は腕力だけではなく、容姿、匂い、声の一つ一つがこちらの戦意を根っこから挫いてしまうのだから抵抗は無意味だ。

そうして捕らえた獲物の身も心も屈服させてた上で捕食にかかるのだ。

しかもそれが二人に増えたら、獲物を取り合って争ったりもするのだから野生の肉食動物と何が違うというのだろう?

そんなの相手にどうやって身を守れというのか?

…などと、状況に流されるままだった言い訳を頭の中で巡らせながら、肌が痺れるくらい熱めのお湯をはった湯船に顎まで浸る。

今日は楽しい一日になるはずだったのになぜだろう?

いや、ほんの1時間前まではそうだったのだ。

今日はとても楽しかった。相撲大会で後輩達に声援を送り、その後一緒に鍋を囲んだ。今日という日は充実した時間を味わった満足感の中で終わるはずだったのだ。

しかし公園での一件が何かを狂わせた。

 

ガチャ、ガチャ…。

 

今耳元で聞こえる浴室のドアを開けようとする音が、その変化を現実として僕に突きつけていた。

 

 

 

ダイニングの椅子に腰を下ろして大きく息を吐いた。

帰るまでの道のりで瑠環は一言も発することは無く、さながら連行される被疑者になったような気分だった。

まあ、それは当たらずしも遠からずなのかもしれないが。

それでも家に帰って少し落ち着いたのか瑠環は、公園で見せた激しさは鳴りを潜め、いつもと変わらないように思われた。

心身ともにすり減らすかのような息苦しさから解放されて、僕はダイニングの椅子に腰をかけた。

「お兄ちゃん、なにか飲む?」

「うん貰うよ。麦茶ある?」

「ん」

瑠環は冷蔵庫から麦茶の入った瓶を取り出すとグラスを二つ用意してそれぞれ注ぐ。

瓶を冷蔵庫に戻すと瑠環はグラスを手に僕の隣に座る。

「えへへ。はい、どうぞ」

「あ、ああ。ありがとうな」

違和感があった。

この家での瑠環の定位置は僕の向かい側の席だったはずだ。こうして自分から隣に座ることはこれまでなかった気がする。しかも座るとき椅子を少しこちら側にずらしたのだろうか?なんか妙に距離が近い。

やっぱり今の瑠環は何かが変だ。

「えへへ」

肩と肩が当たって、はにかむように笑う瑠環が可愛くて、気がつかないふりをして麦茶に口をつけた。

何でもないように装いながら無言の中で飲んだ麦茶はこっちの体温が上がっているせいかいつもより冷たく感じられた。

緊張と混乱で何も言い出せなくなってる僕に対して、先に言葉を発したのは瑠環だった。

「お兄ちゃんお風呂入る?」

それは、一旦距離を取る絶好の機会だ。

僕は即座にそれに乗ることにした。

「そうか。なら先に入らせてもらうよ」

この家で一緒に暮らすようになってから風呂は決まって僕が先に入ることになっている。

別に瑠環が居候だからというわけでは無く、瑠環がそうさせたがるのだ。

瑠環が入った後、そのお湯を飲んだりする趣味はないのだが…。そう思ったこともあったが、実際は熱めのお湯が好きな僕に対して、瑠環は温めのお湯にゆっくり浸かるのが好きなのだと今は理解している。

しかし…。

「ねぇ、お兄ちゃん一緒に入ってもいい?背中流してあげよっか?」

やっぱり瑠環が変だった。

…本気じゃないよな?

「か、からかうなよ。駄目に決まってるだろう?なんてこと言うんだお前は!」

「からかってないよ!お兄ちゃん今日は疲れてるだろうから癒してあげたいって思ったの!」

「今日忙しかったのはお前だろう。そうだなお前先に入るか?」

日中の相撲大会にその後の鍋パーティ。どっちも頑張ったのは瑠環だ。早く休みたいだろうと思っての提案だったが瑠環は首を縦に振らなかった。

「ぶー、いいよお兄ちゃん先に入って」

不満そうだった。

本気で一緒に入りたかったのだろうか?

ふと思いついたが、今までの瑠環の行動を考みるにありえないとは言えない。

「ん。じゃお先に」

深入りは厳禁だ。

僕は早々に会話を切り上げて着替えを持って風呂場へと向かうと、手早く衣服を脱いで浴室へと入る。その時一抹の可能性に備えてその鍵をしっかりかけたのだった。

 

しばらくすると思った通り、脱衣所に誰か入って来くる音が聞こえた。

浴室のドアはぼかしの入った透明なアクリル板が入っているから、その向こう側で誰が何をしているかくらいは把握できる。他に誰もいないし、体格からも瑠環なのは間違いない。

脱衣所には洗濯機もあるからそれ関連である可能性もあるが、みるみる増えていく肌色から瑠環が服を脱いでいることは明白だった。僕が今入っていることはわかっているはずなのに。

そこから目を背けて僕は湯船に顎まで浸かって目を閉じた。

静かに息を殺して、ガチャガチャとノブを引く音を意識でシャットダウンする。

「ぶー」

瑠環が諦めて脱衣所を後にするのを音で感じて、どうやら本気で受容できない事態に陥ってる事に僕はようやく気がついた。

瑠環の歯止めが飛んだのだと。

 

風呂場から出ると部屋着に着替えた瑠環が待っていた。

「お兄ちゃん、お風呂長かったね」

「ああ、疲れてたからかな。少し寝ちゃったよ」

瑠環が入ろうとしたことに気がつかなかった言い訳作りのために僕はわざわざ長湯をしたのだ。

おかげで喉がカラカラだった。

ダイニングのテーブルにはさっき麦茶を飲んだグラスがそのまま置かれていた。僕は自分が使った方を手に取って冷蔵庫にあった麦茶を注ぐとそれを一気に飲み干した。

まさに染み渡る爽快感である。

「えへへ、やったぁ、間接キス」

…。

その嬉しそうな声に瑠環に図られたことを知る。

どうしようもない敗北感だった。

僕は何気なく自分が座っていた席に置いてあったグラスを使ったが、長湯した僕が麦茶を飲むことを予測した瑠環がグラスを自分が使っていたものとすり替えていたのだろう。

…気がつかなかった事にした。

しかし、その後も瑠環のターンは続く。

「お兄ちゃん、疲れてるならマッサージする?」

申し出は嬉しいし、瑠環はマッサージが上手いから魅力的な申し出だが、今瑠環と密着するのはとても危険だ。

今の僕の状況は獰猛な肉食動物と同じ檻の中にいるそれに等しい。刺激せず、距離を取って安全な場所へ退避することが求められる。

瑠環は小さくて可愛いけれど、本気になればミュラ以上の力を発揮する。実力行使で来られたらとても敵わない。

まずは刺激しないことだ。僕はできるだけいつもと同じ調子であるように振舞わなければならない。

「ありがたいけど、汗もかいてるだろうし早く風呂入りたいだろう?いいよ、また今度で」

あえて汗をかいている事を意識させて自ら風呂へ向かうように仕向ける。我ながら見事な誘導だ。

瑠環が風呂に入ったらあとは自室に篭ってしまえばいい。

案の定瑠環は自分の身体や髪をクンクンと匂いを嗅いで、何か思うところがあったのか、僕の言葉に従うことにしたようだ。

「う、うんそうだね。あたしもお風呂入ってくる」

「おう、ゆっくり入っておいで」

そう言ってから僕がくるりと背を向けて歩き出そうとすると、瑠環にシャツの裾を掴まれた。ドキリと心臓が高鳴る。

「ど、どうした?」

振り返ると、瑠環は掴んでいた裾を放してくれたので僕は内心ほっとしていた。

「あ、あのね、お兄ちゃん。…後であたしの部屋に来ない?今日DVD借りてきたの。一緒に見よう?」

DVDなら居間で見ればいいじゃないか。今までもそうしてきたはずなのに…。

瑠環の部屋にあるのは瑠環が普段ネットやゲームをするのに使っているているノートPCだ。画面は決して大きくない。

DVDは瑠環の趣味だからホラー系だろうか?

瑠環は怖がりなくせにホラー好きで、スプラッタ満載の海外製パニックホラーから、しっとりとした摩訶不思議な和製ホラーまでとにかく心臓に悪そうなのを好む。

ただし、一人では見ないから、大抵は僕が付き合わされるし、僕がいなければチコちゃんやミュラを巻き込んでいるようだ。

二人並んで身を寄せ合いながら画面に向かう姿を想像する。怖がる瑠環を至近距離で鑑賞するのは…悪くない。

しかし駄目だ。これは罠だ。

「ごめん。今日はもう疲れたから部屋でやすむよ。お前も今日は忙しかったんだから早く休めよ?それじゃあおやすみ」

そう言って逃げるように足早に階段を上がっていく。

「お兄ちゃんのいくじなし」

上がりきったところで、小さく下からと声が聞こえた気がしたけれど、たぶんきっと気のせいだ。

…そう思いたい。

今の瑠環なら夜中に部屋に潜り込むくらいやりそうな気がして自室に戻るとすぐに鍵をかけた。

まるで軒下や巣穴に飛び込む小動物だ。情けないが、今はこうして距離を取るしかないだろう。

一晩たって瑠環が元に戻ってくれればいいんだが…。そう願うしかない。

そうして僕は部屋の明かりを点ける。しかし安全なはずの自分の部屋は、どういうわけか無人ではなかった。

公園に放置してきたはずのミュラが人のベッドの上で膝を抱えていたからだ。

「うわっ!?」

つい驚いて声を上げた僕に向かって、ミュラは口の前に指をやって声を上げないようにジェスチャーで訴えている。

どうやら瑠環に気がつかれたくないようだ。

自宅には帰っていないのだろう。着ているのは公園で別れた時と変わらず制服のままだった。

「お前どこから入ったんだ?」

僕がお風呂に入っている間、この家の一階にはずっと瑠環がいたがずだ。

普通に正面から入れば絶対に一悶着あっただろうがそんな気配はなかったし、こっそり侵入するにしても気がつかれずに2階のこの部屋までたどり着くことはいくらこいつでも無理だろう。

「窓の鍵が掛かってなかったから、そこから失礼しました」

ベランダに通じている窓を指差す。確かにそこは網戸ははめてあるが鍵はかかっていない。ここが二階でなければ確かに入るのは簡単だろう。ここが二階でなければだ。

もっとも、僕も今更そのくらいの非常識は気にならなくなっていたのだが…。

「ごめん。あやすけにはいっぱい迷惑かけちゃったね。どうしても謝りたかったんだ。それに瑠環ちゃんのこともそのままにしておきたくなかったし」

今の時代ならそういうことは電話やメールでと思うが、ミュラは携帯も持ってないし、僕の番号も知らないだろうから話がしたければ直に会いに来るしか無かったのだろう。

家に電話したらまず瑠環が出るだろうし…。

「いや、僕のことはいいんだけど。お前は大丈夫なのか?」

瑠環に倒された時相当激しく打ち付けられていたように見えた。制服は土や草で汚れていたけれど見たところ怪我はなさそうだった。

「あはは…。身体は大丈夫なんですけどね。こっちの方は割とぼろぼろです」

ミュラが胸に手を当てて言う。

試合で負けて、今度は瑠環と喧嘩してまた負けて、プライドが傷つくのはわからなくもないのだが、あまり同情する気にはならなかった。

「わたし、瑠環ちゃんとこれまで喧嘩した事なかったから、どうしたらいいかわからなくって瑠環ちゃんすごく怒ってた。あやすけ、どうしよう…」

どうやら得意の相撲で負けたのがショックだったわけではないらしい。

ミュラは瑠環を怒らせてしまったことを相当気にしているようだ。しかし瑠環に面と向かう度胸が無くて先に僕のところへ来たらしい。

「どうしようって、そんなのこっちが聞きたいくらいだよ」

ミュラには悪いが、瑠環のことで頭を悩ませられてるのはこっちも同じなのだ。

もっともミュラとは逆で好意を向けられすぎて困っているわけだが、これまでになく積極的になり始めた瑠環とどう接すればいいのかさっぱりわからない。

この家で一緒に暮らすようになって一週間。それまでは気持ちを抑えるのは僕の方だと思っていたけれど、まさか瑠環の方の歯止めが先にぶっ壊れることになろうとは思いもしなかった。

「あやすけも喧嘩したんですか?やーい、ざまーみろです」

「いや、そういうわけではなくてだな」

今までよりスキンシップを求めることが多くなったり、お風呂に一緒に入ろうとしたり、夜に部屋に誘ったりと、これまで自然と避けてきた一線を瑠環は越えようとしてきている。

しかし、案の定というか、僕が瑠環の変化をミュラに話すと容赦の無い勢いで顔面に枕が飛んできた。

「ぐふぉ!」

「地獄に落ちろこの幸せ者!」

不条理だとは思わなかった。確かにミュラの気持ちはわからなくもない。

「でも、確かにまずいです。瑠環ちゃんなんでそんな事を。もう一緒にいられなくなっちゃうかもしれないのに」

僕は頷いた。

僕と瑠環の今の生活は、僕を信じて日本に残してくれた両親と、瑠環を任せてくれた瑠環の両親からの信頼があってこそある。

その信頼を裏切った先にあるのは茨の道だ。

「ごめん、ごめんねあやすけ。わたしの悪戯でとんでもないことになっちゃったね」

ミュラは彼女なりに事態を招いた事を反省しているようだが、僕は元々ミュラのせいだなんて少しも思ってはいなかったから、逆にこっちが申し訳なく思ってしまう。

この事態はちょっとしたきっかけで何時でも起りえたんだ。

「ミュラのせいじゃないよ。瑠環を不安にさせてしまったのは僕がしっかりあいつの事見てやってなかったからだ。これは僕自身がまいた種だよ。明日になったら瑠環の頭も少しは冷静になっていると思うから、そしたら瑠環とちゃんと話す。そこでお前の事も許すように頼んでみる。それから二人で謝ろう。大丈夫。僕に任せてくれ」

任せてくれなんて、自分でもらしくない事言ってるとは思っている。でもミュラに責任を感じて欲しくはないし、何より二人の仲を修繕出来るなら一切その手間を惜しむつもりはない。

「あやすけ、ありがとうね」

ミュラが顔を上げたから、僕はその頭を優しく撫でた。くすぐったそうにしながらも拒むことなくそれを受け入れるミュラ。

しかし、その顔に若干笑顔が戻ったかと思ったその時、ミュラが急に顔をこわばらせ、小さく悲鳴を上げた。

「…ひっ!?」

そして僕も気がついた、背後から感じる尋常ならざる気配、突き刺すような視線。そう、僕は自分が油断していたことに気がついた。突然のミュラの来訪に意識がそれて、自分が猛獣と同じ檻にいたことを忘れていた。

ミュラが入ってこれたのだ。他の誰が来たとしてもおかしくはない。

恐る恐る振り返った僕は心臓が止まる思いだった。いや、心臓を一瞬で握りつぶされたといった感じだろうか?

窓の向こうに白く小さな人影があった。それはベランダから血の気を感じないくらい冷たい気配を漂わせて、表情のない顔でこちらをじっと見つめていた。

「「きゃーーーっ!!」」

僕とミュラが悲鳴をハモらせる中、その人影はこちらをずっと見据えたまま、ゆっくり、静かに部屋へと入ってくる。

言うまでもないだろうが、それは瑠環だ。

風呂から上がって間もないのだろう。その髪はしっとりと湿ったままでいつものようにおさげに結んでいない。

パジャマではなく、代わりに大きめのワイシャツを着ているのはなぜだろう?白いワイシャツと濡れた髪で、窓の外に立つ姿は人を脅かすには十分なインパクトだが、それが目的だったとはどうにも思えない。

下着は、上はどうも付けてなさそうだ。

ワイシャツはサイズが大きくて確認できないが、下は穿いてるだろうか?穿いていてほしいな…。

「お前、なんて格好で…、なんでそんなとこから」

瑠環の視線は僕ではなく、ミュラの方に向けられていた。僕はその視線を遮るようにふたりの間に立った。そうしなければ瑠環は今にも飛びかかりそうな雰囲気だったからだ。

「お兄ちゃんどいて、そいつ殺せない!」

ああ…、だめだこの瑠環、早く何とかしないと!

「お前こそなんでそんなとこから入ってくるんだよ。しかもそんな格好で!お前こそいったい何考えてるんだよ!」

「お兄ちゃんが悪いんだよ…。お兄ちゃんが逃げるから。あたしがお兄ちゃんの事好きなの気がついてるくせにはっきりしないから!」

ぐっさりとと瑠環の言葉が胸に刺ささった。

予期せぬ告白だった。そして最悪な状況での告白だった。

狂いそうなくらい瑠環が愛おしく思えて、拒むことなんてできそうになかった。

瑠環を抱きしめたい衝動に駆られた。今すぐ抱きしめて、キスをしてミュラつまみ出して瑠環をベッドに押し倒したい。

瑠環の背中に自然と手が伸びる。

「駄目だよあやすけ!」

後ろでミュラが叫ぶ。

「今は駄目だよ!今そんなことしたら、もう二人は一緒にいられなくなっちゃうよ!」

でもその言葉は今の僕たちには届かない。

そんなの大きなお世話だ。

いいじゃないか。お互い好き合ってるんだ。

例え誰に叱られたって、世間に後ろ指刺されたって瑠環さえいればそれでいい。

身分違いの恋ってわけじゃない。

年が離れすぎてるわけでもない。

僕と瑠環との間にある問題は一つだけ、早すぎるってことだけだ。

もう何年かすれば誰に憚ることもなく瑠環と付き合うことができるだろう。それが少し早まるくらい

それは些細なことじゃないか。

瑠環との顔が近づいていく。これはもう確定だ。僕たちは戻れない道を歩んでいくことになる。

でも、瑠環と一緒なら構わないと思った。

 

「何が僕に任せておけですか!まったく使えないあやすけです」

襟首を掴まれたかと思うと、脚を払われて僕はベッドに放り投げられていた。

「瑠環ちゃんのことが好きなのはあやすけだけじゃないんです!瑠環ちゃんの将来考えられない馬鹿に任せようとしたわたしが大馬鹿でした!」

ミュラの言葉にぐうの音も出ない。

僕は自らの欲求に負けて、瑠環の事も瑠環を愛しているたくさんの人の気持ちを忘れていた。

茨の道を進んで傷つくのは自分ひとりじゃないのだ。

「すまん」

「瑠環ちゃんはわたしが止めてあげます。あやすけはそこで黙って反省してやがれです」

しかし僕を乱暴に扱い、暴言を吐いたミュラを瑠環が黙ってる見逃すはずがない。

瑠環がミュラに飛びかかると二人はもつれ合うように倒れた。

その時瑠環が着ていたワイシャツの裾から白とパステルグリーンのストライプが見えて、僕は内心で小さく安堵していた。…よかった穿いてた。

…状況は少しも良くはなかったけれど。

「ミュラちゃん、どういうつもり?」

一見瑠環がミュラを押し倒したかに見えた。

しかし、重なり合うように床に倒れた二人はミュラが瑠環をぎゅっと抱きしめる状態で膠着していた。

確かにどういうつもりだろう。ミュラは本気で相手をする気は無く最初からこれを狙っていたようだ。

技を掛けるわけでもなく、締め付けるわけでもなく、ただ大事なものを放したくないといった感じで瑠環を抱きしめているだけだ。

「瑠環ちゃんごめん。全部わたしが悪かったんだ。今は落ち着いてわたしの話を聞いて欲しい」

「いやっ!放してっ!話すことなんてないよ!ミュラちゃんもお兄ちゃんのが好きなんでしょう?お兄ちゃんに近づきたくてあたしのいないところで会ってたんでしょう?」

「大丈夫。わたしはあやすけをとったりしないよ。わたしは瑠環ちゃんとずっと仲良しでいたいんだ。わたしにとってはそっちの方が大事なんだよ」

「…本当に?」

「うん。公園では大会で負けた腹いせにあやすけで遊んでただけなんだ。だからわたし、こんなことで瑠環ちゃんと喧嘩なんてしたくなんてないんだよ」

「なら、なんでお兄ちゃんの部屋にいるの?ここで何をしていたの?」

「あやすけに謝りたかったのと、それから瑠環ちゃんと話をしたかったんだ。でも怖くて優しいあやすけに頼ってしまった。わたしが勇気を出して瑠環ちゃんに話に行けてれば瑠環ちゃんは不安な思いしなくてよかったんだよね。…ごめんね」

「だったらどうして邪魔するの。喧嘩はしない。揉め事はお相撲で決めるのがルールだよね。あたしが勝ったんだから邪魔しないでよ!」

「そうだね。だからわたしは決めたんだ。二人の仲を応援するって。誰にも邪魔されず、誰からも祝福されて、誰もが羨ましがるくらい幸せになってもらうために応援するって、わたしは決めたんだ」

ミュラの言葉に僕は涙が出そうだった。

僕が目指そうとしていて見失いそうになっていた理想形を、この友人は応援してくれると言っているのだ。

これから瑠環ちゃんはもっとずっと素敵な女の子になる。あやすけが他の女の子に目移りなんてできないくらい素敵な女の子になるんだから焦らなくたっていいんだよ」

「ほんとう?」

「本当だよ」

「ほんとうのほんとうに?」

「本当の本当だよ。瑠環ちゃん。だからごめんね。わたしを許して欲しい」

僕は目頭が熱くなって喉の奥に痛みを感じていた。歳下の女の子二人の前で泣くなんて格好悪いと思ってはいたがどうしようもなく、溢れる涙でどんどん視界が揺らいでいく。

もう安心だ。瑠環もミュラも僕もこれで元通りだ。幸せな未来に向かって、また明日から平穏で楽しく過ごしていけるのだろう。僕はそう思った。

これが友情の力か。

「あたしも、ほんとはミュラちゃんとずっと、仲良しで…いた…い…きゅぅ」

無言の時間が数秒過ぎた。

結局僕は涙を止められなかった。頬を伝い涙がポロポロとこぼれ落ちて床を濡らしていた。

ミュラは相変わらず瑠環をぎゅっと抱きしめている。

瑠環は何も言わず身を任せているようだった。

だから次のミュラの行動と言葉の意味が僕にはわからなかった。

「…やったか?」

見るとミュラはぐったりとした瑠環をその場に横たえるとそのの頬をつんつんとつつく。

それを見ていた僕は目がくらむほどの目眩を覚えた。信じたくないが、まさか絞め落としたのか?にこやかに仲良しでいたいとか綺麗な事言いながら油断させて絞め落としたのか!?

返せ!友情に感動していた美しい時間を返せ!

「お前なんてことを!」

「うるさいな、起きちゃうじゃないか。もう腕力で適わないんだから、こうでもしなきゃこの子止められないから仕方なかったんです」

「だからって、お前さっきの言葉全部でたらめだったのかよ!」

そうだと言ったら僕は絶対こいつを許さない。

後輩だろうが女の子だろうがぶん殴る。たとえ適わなくても絶対ぶん殴る。

「そんなわけないです!全部本心です!でも言葉だけで理屈だけで、愛とか憎しみだとかを止められるなんて思ってるほどわたしも甘くはないんです」

僕は黙るしかなかった。僕はさっき愛だなんだと考えながら、欲望のままに瑠環を求めようとしたのだ。

ミュラはよいしょと気を失った瑠環を肩に担ぎ上げる。

「おいこら!お前瑠環をどうするつもりだ?」

てっきり介抱するためベッドに寝かせるのかと思いきや、ミュラはそのまま窓の外へと向かう。

「だ、だって、このまま瑠環ちゃんここに置いといたらどうなるか…。と、とにかく瑠環ちゃんは先輩にはまだあげません!そういうわけでしばらくこの子は預かります。大丈夫。心配しなくてもそのうちちゃんと返すよ」

「こら待て!いくらなんでも横暴、っていうか危ないだろ!こっち戻れ、瑠環返せ!」

「ふーんだ!悔しかったらわたしを倒して奪ってみやがれです!」

あっかんべぇーっと舌を出してミュラは瑠環を抱えたまま窓を飛び越えて夜の闇に消えていった。

僕は人さらいだ!と叫びそうになったその言葉を必死に飲み込んでその姿を見送るしかなかったのだった。

 

 

ミュラの言うとおり次の日の昼前に瑠環は帰ってきた。

「おおきなくじら~ほえ~るわ~、あまくてふわふわるわっふるぅ~」

ご機嫌で歌いながら昼食の用意をする瑠環の表情は、昨日の事など無かったかのようだ。

「ふわふわるわっふるぅ~。わっふるわっふる~」

瑠環は二人分のナポリタンを皿に盛り付けるとサラダと一緒にテーブルに並べる。それは隣あった席ではなくて、今まで通りの向かい合った席だった。

ナポリタンは辛めが好きな僕の好みに合わせたバジルとタバスコが効いていてとても美味いしかった。

瑠環も自分用にチーズをたっぷりかけたナポリタンを美味しそうに食べている。出来にも満足しているみたいで相変わらずご機嫌なようだ。

そこで僕は昨夜の事を聞いてみることにした。

「昨日の夜はミュラ話をしたのか?」

それは恐る恐るで、表情が曇るようならそこで話は切り上げるつもりだったがその心配は無駄だったようだ。

「話したよ」

あっけらかんと言うその表情は晴れやかだ。

「へ、へぇ…。どんなこと話したのかな?お兄ちゃん気になるなー?」

瑠環は少し迷ったような様子を見せたが、とびきりいい笑顔だけ見せて教えてはくれなかった。

「だーめ、教えてあげない。だってお兄ちゃんだもん」

うーん、女の子はまだまだ謎が多い…。

 

 

 

                                       あとがき

 

ごめんなさい今年は、ちゃんと内容あります。

はっきり言ってわたしは素人で、人生経験にも乏しく、人の感情や人生についての描写が苦手です。っていうか元のノウハウがありません。

だからこのシーンは書き始めからどん詰り状態でした。お倉入りでも別にいいだろうと思っていましたが、ネタ的には美味しくて出さないのももったいないわけで、書き上げるのが一年遅れることになりました。

そのために時間が戻ることになってしまいました。

この1年で主人公に名前が付いたのでミュラが主人公の彩乃介を「あやすけ」と呼んだりと設定も変わってきています。

どこかでこれまでのとこリニューアルしたいなと思いながら実行できない根性と気合の足りない作者なのでした。

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