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ふぁるぷだいありぃ その5

各地で猛威を振るった台風は北の海で温帯低気圧となったらしい。

学園から帰ってきてしばらく、リビングのソファで横になる。エアコンがあるリビングはこの時期とても居心地がいい場所である。

ニュース番組にしてもなんとなくつけているだけで特に意識して見ているわけではない。

ただぼーっと、エアコンという人類の英知の賜物の恩恵にあずかり、一人の寂しさを紛らわすためにテレビを垂れ流す。

そんな隙だらけな状態だったため僕は、チャイムもなく玄関のドアが開く音がしたものだから少なからず驚いたとしても仕方のないことだろう。

「ただいま~」

なんだ瑠環か。まったく、脅かすんじゃない。

見慣れたお下げ頭が顔を出す。

「おう、おかえり」

時計は午後5時を回っている。帰宅部のくせにやけに帰るのが遅い気がする。

この時期、日が長いとはいえ、女の子があまり遅くまで寄り道したりするのは感心しない。

「随分遅かったな。遊んでたのか?」

「特訓してた」

「特訓?」

「今週末、相撲大会」

ああ、そういえば中等部にはそういう面倒な催しがあったっけか。

「どうだ調子は?」

「たぶんミュラちゃんの二連覇」

「そうか・・・」

去年、2年生女子で優勝を果たした無敵のわんぱく姫は今年も絶好調らしい。

「シャワー使うね」

「おう」

瑠環が浴室へと向かい僕はニュースに目を戻す。

これからしばらくは、はずっと晴れの日が続くそうだ。

・・・いや、ちょっと待て。

何を自然に人の家帰ってきてるんだよあいつは・・・?

「おい瑠環、お前なんでうちに・・・」

不意な来訪と未確認な状況によって、僕は注意を怠っていたと言わざるおえないだろう。

浴室と繋がっている洗面所は脱衣所も兼ねている。

そこにシャワーを借りると言って女の子が入っていったことが、今何よりも重要なことだったもではないだろうか?

しかし僕はそこに考えが至らず優先順位を誤り、その引き戸を開いてしまった。

「「あ゛」」

僕と瑠環の声が重なった。

まず目に入ったのは肌色。それを覆うわずかな面積のライトグリーンと・・・。

瑠環の手には今まで身につけていた中等部の制服。

肩にかかるほどの黒い髪。いつも見慣れたおさげ髪が解かれて、まるで別人のように思えた。

「きゃぁぁぁぁっ!!!」

おそらくは向こう3軒先まで聞こえただろう悲鳴が上がった。

「ご、ごめん!」

瑠環の手が振り上げられるのを見て、僕は歯を食いしばって衝撃に備えた。

有罪。弁解の余地はない。

ばっちぃぃぃん!!!

左の頬に強烈な張り手をくらって、僕の体は廊下の壁まで吹っ飛ばされた。

「むぅぅ」

怖い顔で睨まれて、勢いよく引き戸が締められる。

このラッキースケベ。

脳内で誰かにそう言われたような気がした。

 

「もう!信じらんないっ!」

しばらくして瑠環はバスタオル一枚巻いただけで戻ってきた。まだ怒りは収まっていないのだろう。廊下を素足でどんどんと踏み鳴らしながらだ。

信じられないくらいはしたない。

赤らんだ肌(怒りからかもしれないが)とか、湿り気を帯びた髪とか、華奢な肩とか、鎖骨とか・・・。

僕は直視しないように視線を逸らす。

「あの、瑠環さん?なしてあなたはそんな格好で人の家うろついてるんでしょうか?ここにはあなたの着替えなんてありはしませんよー?」

洗面所の方から洗濯機の音が聞こえる。瑠環の手には着てきた制服は見えないから、今それらは洗濯機の中なのだろう。

こいつはいったい何を考えているのだろう?洗濯が終わるまでどうするつもりなのだろうか?

あ、そうだ。

「待ってろ、今Yシャツ取ってくるから」

「や、いいから」

瑠環の目は「じとーっ」という擬音が聞こえて来るかのようだった。

そうだな、落ち着け、僕はお兄ちゃんだ。

「着替えならちゃんとあるよ」

瑠環はリビングのドアの向かいにある引き戸を開ける。

なんだそりゃ。

目の前の光景に僕は言葉を失った。

そこは普段使っていない和室の客間だったはずだ。

しかしそこには僕も見覚えのある瑠環の私物が運び込まれ、すっかり女の子の部屋に変貌していた。

「いつのまに・・・」

「あたし今日からしばらくここに住むんだよ?聞いてないの、お兄ちゃん?」

「・・・はい?」

そんな楽しい話、一度聞いたら忘れるわけが無い。

「うちを改築するから、その間ここに住まわせてもらうって話」

確かに似たような話なら聞いている。

瑠環の家が改築するから、瑠環のとこの一家が隣町に住む母方の祖父母の家に厄介になるという話だ。

しかしそれは瑠環の学校のことを考えて夏休みに入ってからじゃなかっただろうか?

それがなんでうちで暮らすことになっているんだろう?

「業者さんの都合で工事が前倒しになったんだって。それで工事してる間あたしはお兄ちゃんとこ

泊めてもらえって。・・・おじさん達から聞いてなかったの?」

まったくの初耳だった。

僕はスマホを取り出すと、親父に電話をかけてみた。親父のいるアメリカは深夜のはずだったか、案外あっさり繋がった。

「・・・お前のとこから話がいってるものだと思ってたそうだ」

「えー?」

今度は瑠環が、電話をかける。おそらく瑠環の親父さんだ。

「あたしから伝わってると思ってたみたい」

うちの親といい、しょうがないな・・・。

まぁ、差し当たっての問題は・・・。

「夕飯の買い物いくか?冷蔵庫の中は空っぽだ」

何が嬉しいのか、瑠環の顔がぱぁっと明るくなる。

「待ってて、すぐ着替えてくる」

「急がなくていいから、髪の毛しっかり乾かしてこいよ?」

「はぁい」

瑠環が自室となった客間に消えると、僕はほっと息を吐いた。

ドア越しにドライヤーの音が聞こえる。

僕はスマホを取り出して中のデータを確認する。さっき親父に電話したとき、ほんのちょっといじっているフリをして撮った動画だった。

画面の中のバスタオル一枚という刺激的な格好の瑠環を見てひとつ小さくため息をつく。

ほんの数秒だったが思いのほか良く撮れていた。

幾度か再生を繰り返して、僕は動画を削除した。

いったいこれからどうなるんだろうな?

腫れてきた左の頬を撫でながらそう思った。

 

 

 

              あとがき

女の子とひとつ屋根の下。そこで起こるハプニング。外せないイベントですね。瑠環さんの尊い犠牲の下、これにて舞台が整いました。

主人公はかわいい幼馴染に陥落寸前。

誘惑もいっぱいで、下手すれば人の道踏み外しかねない危険な状態。

・・・そういうの表現したいのですが、どうでしょうか?

まあ、いつものように他にいい表現とか思いついたらまた変更します。

最近仕事増えて、PSO2も忙しくて、ますます更新がおそくなっていきそうですが、協力してくれてるチームの皆さん、今後もなにとぞよろしくお願いします。

 

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PSO2小説」カテゴリの記事

コメント

ベタベタですな!だがそれがイイですす!!

投稿: エトワール | 2014年8月30日 (土) 17時27分

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