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いろえんぴつ白書 その3

「あれ?お姉ちゃん傘は?」

しっかり者の妹が姉の手に傘がないことに気がついた。

「ぅ?ぁー、持ってくるの忘れたぁ」

うっかり者の姉は妹に指摘されてそのことに気がついたらしい。空はどんよりと曇っていて、今にも降り出しそうなくらいだ。事実、天気予報では今日から明日にかけて雨となっていた。学校が終わる頃までには間違いなく降り出しているだろう。

「今日は午後から降りそうだよ。ちょっとまってね、折りたたみ傘持ってるから」

妹は鞄から赤い折りたたみ傘を取り出しておろおろしている姉に渡す。

「ぉー、メリアありがとぅ」

笑顔で受け取る姉。

「どういたしまして。あと、お弁当はちゃんと持ってきた?」

「ぅん。例え教科書を忘れても、これだけは忘れないぉ」

「うーん。教科書も忘れないようにしようねお姉ちゃん」

「ぅん・・・」

実に微笑ましい光景だった。

方や姉の方は長い髪をツインテールに垂らし、足には派手な紅白ストライプのニーソックス。よく似た背格好の妹は髪は清楚に頭の後ろでアップにして、着ている中等部の制服もきっちりしている。

「おはよう、吉乃さん」

「ぉー。おはよぅ」

「おはようございます」

二人が僕に気がついて振り返った。

学園でもちょっと知られた美人姉妹。

明るくてポップな印象の姉、吉乃 クレアさんと。

良くできたしっかり者の妹、吉乃 メリアさん。

クレアさんは僕と同じ高等部1年4組のクラスメイトだ。妹のメリアさんはその一つ下で中等部の3年生だが、背丈は同じくらいで双子といっても通じるくらい顔立ちもそっくりだ。

クレアさんが子供っぽい跳ねるような動きで僕の周りをくるくると見回す。

ツインテールの髪と、妹よりやや大きめの胸がゆさゆさと揺れていた。

「あれぇ?今日は瑠環ぴょんとチコにゃんがいないぉ?」

悪かったな。僕一人で。

「そういえば、さっき走って行くのが見えたかも」

「ぅーぅ。教えて欲しかったぁ・・・つまんなぃー」

小さくて可愛い二人は彼女のお気に入りだ。残念そうにクレアさんは肩を落とす。本当、悪かったな、僕一人で。

「まぁまぁお姉ちゃん」

フォローを入れるメリアさん。本当に良くできた妹さんだ。

聞く所によれば成績も優秀で、家事も得意らしい。

去年中等部男子で密かに行われていた彼女にしたい女子アンケートでは常に5位以内に入っていただけはある。

対して姉のクレアさんの方はというと、少なくない特定票は集めていたが上位10名からはランク外となっていた。

ただし、写真部が極秘裏で行っている女子の写真の販売数で見ると、クレアさんがうつっている写真が他の追随を許さないほどの販売数を誇るらしい。

特に体操服姿や、水泳の授業での写真は、その売上で最新のデジタル一眼カメラが買えたという逸話を残したほどだ。

ちなみに僕は買っていないのだが・・・。

「ぅー、どっかーん!」

瑠環もチコちゃんもいなくて退屈した、クレアさんが歩きながら肩をぶつけてくる。

決して太ってはいないがむちむちした体型で当たった感じもやわらかい。

かなり誤解されそうな行動だが、この手のスキンシップは彼女とある程度親しければ普通にあることだ。

だだ、男種族を勘違いさせそうな隙の多いところが、なんとも危なっかしい。

・・・そう、世界はトラップでいっぱいなのだ。

例えば・・・。

「お姉ちゃん足元にバナナの皮がっ!」

ああ、なんてことだろう・・・。

メリアさんの声は悲鳴に近かった。気が付くのが遅れたのだ。

僕もそれを見た。クレアさんがまさに踏み出そうとする先にある黄色い物体を・・・。

メリアさんが手を伸ばす。

いや、だめだもう間に合わない。

バナナの皮を踏んずけたクレアさんの体がぐらっと傾く。

期待を裏切ることなくすっ転んで、あられもない姿を見せるであろう予想した僕はさっと目を閉じて

顔を背けた。

「おぉ~とぉっ!?」

片脚でバランスをとり、バレリーナのようにその場で一回転して停止する。

「エヘヘ~」

照れくさそうにに笑ってVサイン。僕とメリアさんが同時に「おお~」っと感嘆の声を上げて小さく拍手。

その時、パタパタと飛んできた鳩が彼女の頭に止まった。

「ぅ?」

くるっくー。鳩は一声鳴くとまたパタパタと飛んでいった。

「ぉぉぅ!?」

クレアさんが驚いてバランスを崩し・・・、踏まれたままのバナナの皮がその潜在能力を遺憾無く発揮した。

どってーん。

派手に尻餅、というよりひっくり返った。

「お姉ちゃん!?」

「クレアさん大丈夫?・・・なっ!」

息を飲んだ。

「痛いぉ・・・」

目にいっぱい涙を溜めているクレアさんには申し訳ないが、僕の方はそれどころじゃなかった。

吉乃さんのスカートが大きくめくれいる。

ストライプのニーソックスの上の方。絶対領域は崩壊しむっちりと肉付きの良い白い太ももがすっかりあらわになっていた。

そしてその先には・・・。白だった。

「お姉ちゃんスカート!」

「ぅ?ひぃ!」

メリアさんの声に自分の格好に気がついて慌ててスカートを抑えるクレアさん。

その同じタイミングで、僕も顔をそらした。今更遅いっていうのはわかっている。

「ぅぅ~」

半泣きのままメリアさんが手を貸してもらって起き上がるクレアさん。

「ぅーぅ。見たぁ?」

うるうると涙目でこっちをじっと見つめてくる。

「ごめん」

90度の角度で礼。

刺激的すぎる光景はしっかり僕の脳裏に焼き付いている。バレバレの嘘をつくよりましかと素直に謝罪することにした。

「ぅーぅ。メリアぁ~。ボクもうお嫁に行けないぉ」

よよよと泣き崩れるクレアさんをよしよしとなだめるメリアさん。

「先輩」

「な、なんでしょうか?」

背後に、ごごごごご・・・、という擬音がついてきそうな雰囲気に、僕は気を付けの姿勢で固まる。

表面的にはメリアさんはにこやかだが・・・、しかしメリアさんがお姉ちゃん大好き。お姉ちゃん至上主義であることは周知の事実である。

見ちゃったのは悪いけど、全部クレアさんの自爆であり、不条理に思わなくはないが、メリアさんが大好きなお姉ちゃんを辱めた僕を見逃すはずはない。

「先輩、責任とってくださいね」

さらりと重いことを言ってのけるメリアさん。こっちは冷や汗が止まらない。

責任ってどうやってとればいいんだろう。

一生大事にすればいいってことだろうか。

相変わらず涙目のクレアさん。

顔は可愛いし、グラマーだし、性格はちょっと癖があるが明るくていい子だし、ほんわかと柔らかそうで、むちむちしてて・・・。

さっきの光景が頭の中ではっきりと再生されて、僕も腹を決めた。

「今日のことは一生の思い出として大切にいたします!」

メリアさんの背後に黒いオーラを放った般若が見えた気がした。

すみません忘れます。

「僕は何も見ておりません。クレアさんの脚線は健康的で大変すばらしいと感じましたがそれだけです。えっ?クレアさんの今日の下着ですか?黒のレースなんて似合うんじゃないですか?」

僕は太もももパンツも綺麗さっぱっり記憶から消し去ることをその場で誓った。

その誠実な宣誓にメリアさんは満足したようだけど・・・。

「ぅ~ぅ~ぅ」

なぜかクレアさんは電柱の隅で背中を丸めていじけていた。

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結局学校につくまでの時間、僕はクレアさんをなだめ、誤り倒した末、日曜日に好きなおやつをなんでも奢るということで許された。

「エヘヘ。何にしようかなぁ?」

「よかったねお姉ちゃん」

さっきまでとはうって変わって上機嫌になったクレアさん。

今日は学校に着くまでに随分疲れた。、でも一日はまだ始まったばかりなんだよな・・・。

もう帰りたい。そんな気分で僕は校門をくぐった。

 

 


        あとがき

やっと主人公が学校にたどり着けました。

アニメかゲームならここでOPが入ります・・・。

ただそれだけのシーン書くだけなのに結構時間かかってしまいました。

マイルームのパパガイさんクチマネドールが早よ早よと急かす急かす・・・。

まったくもー、誰の仕業ですかね?

さて、今回は吉乃さん回です。

予告通りすっ転んでもらいました。それはもう思いっきり!!

文句は後でいくらでも・・・。

多少のキャラ崩壊は許して欲しいです。

ではではまた~。

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コメント

今回の挿絵はクレアさんがこけたところ希望します!(ェ

投稿: エトワール | 2014年7月21日 (月) 00時13分

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