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2014年7月

青春力充填中

海を見に行きました。

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泳ぎにとか、遊びに、とかそういったつもりはなく、山育ちのわたしには海に対する憧れがあるのでしょう。

何をするでもなく、ただ見に行きたくなることがあるのです。

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道連れはZZR250。海浜公園はこの子とのデートの定番コースです。

さて、ここへ来た目的はもう一つ。

三国の町並みを見て回りたくなったというのがあります。

グラスリップというアニメの影響で。

え?1話で切った?

それはそれで仕方ないかもしれませんが、なかなかどうしていい青春物語やってます。

そこでちょこっと青春分を分けてもらおうかなと・・・。

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龍翔館。中は資料館です。入りませんでしたけど・・・。

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漁港の街ですね。お昼どきに行ったら、魚貝を炭火で焼くいい匂いが漂ってきてました。

まぁ、これだけです。

モデルとなった学校の近くをカメラ持ってうろうろしてたら通報されそうな気がしたのでやめました。

望んでも戻らない日々、されど憧れる青春の日々。

この気持ちはチムメン小説にぶつけるといたしましょう。

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ふぁるぷだいありぃ 番外編

それは僕がこの街に引っ越してきた、小学校5年生の夏休みのことだった。

「こっち、こっちだよ」

古めかしい石の鳥居の前で瑠環が手招きしている。

これまで商店街や今度から通う事になる小学校やらを案内してもらってさんざん歩いたというのに、

瑠環は疲れた様子もなく、とてとてと常に僕の前を歩いていく。

「ちょっと待ってくれよ」

昼過ぎの一番熱い時間。天気もよくて日差しもきつい。

おまけにすごい蝉の声だ。こんなの前にいた街ではこれほどではなかった。

瑠環はよく平気でいるものだ。

僕はすでに汗びっしょりでTシャツが肌に張り付いて気持ちわるいのだが、瑠環の蓬色のワンピースは爽やかな清涼感を保ち続けている。

僕も2つも年下の女の子の前で情けないところを見せたくないから結構やせ我慢してるんだけどそろそろ限界が近い。

鳥居をくぐるとそこは何もない。ただの広場だった。

「こっちだよ、ここ上がったところ」

マジですか?

瑠環が指さしたのは広場の奥、天まで続いているんじゃないかという長い石段だった。

「ここを上がるのか」

「うん。この上にいるよ」

友達を紹介したいって瑠環が言うからついてきたけれど・・・。

僕は石段を見上げた。

「どれくらいあるんだよこれ・・・」

「ゴジラを尻尾の先から頭の上に登るのと同じくらいって先生が言ってた」

「わかりやすいな、それ」

でもゴジラって時代によって倍ぐらいの大きさになってた気がする。

せめて昭和ゴジラでありますように。

僕はそう祈りつつ軽やかに駆け上がっていく瑠環を追って石段を登り始めた。

 

平成ゴジラだった・・・。

ようやく登りきった時にはやせ我慢するための体力すらも尽き果てていた。

登りきった先は小さな社とお堂があるだけのちょっとした広場だ。

広場の真ん中で腕を組んで仁王立ちしているのが、瑠環が会わせたがっていた友達だろう。

「来たか瑠環ぴょん」

なんだよぴょんって・・・。

変なあだ名とその様子を見て、あいつがなぜこんな場所にいるのかわかった気がした。

煙となんとかは高いところに登りたがるってやつだ。

「なんだ?これくらいでばててるのか?」

なんだこのイケメン。

それがそいつの第一印象だった。

背丈は僕よりちょこっと低いくらいだが、ノースリーブのシャツとショートパンツやら伸びた日に焼けた手足はすらりと長く、ひきしまっててかっいい。その上顔も小さくて、少し眺めの髪がなんかキザったらしく見えた。

「情けないな、瑠環は平気な顔してるじゃないか」

初対面の相手に対して失礼なやつだ。

「お兄ちゃんはまだ慣れてないから」

「瑠環、会わせたかった奴ってこいつか?」

「うん。ミュラちゃん。あたしの友達だよ」

ミュラ?男の名前じゃないよな・・・。こいつ女だったのか。    

いや、確かにボーイッシュな美少女とみればその方が納得できる。

「よろしくな、お兄ちゃん」

「あんたにお兄ちゃんって呼ばれる筋合いはない」

「いいじゃないか。お前5年だろう?わたしは4年だからな」

一つ下のくせにお前呼ばわりかよ。

僕はこのミュラに対する警戒心を上げる。

こういうのに舐められると面倒なことになりそうだ。

「大体、こんなところで何やってるんだよ?何もないじゃないか、ここ」

ちょっとした広場だがそれだけだ。ボールを使った遊びもこの高台では不向きだろう。ふとした拍子にボールがどこまで落っこちるかわかったもんじゃない。

「そうか?石段上がるの競争したり、虫捕まえたり、木登りしたり、相撲したり。見晴らしもいいし、ここでお弁当食べると美味しいんだぞ?」

今時、男子でもそんな遊びはしない。

とんだわんぱくキングじゃないか。

「あたしもミュラちゃんと遊ぶのは楽しい」

・・・こいつもか・・・。

「いつも二人なのか?」

「ううん。今日は暑いから、みんなは学校のプールに行った」

「そうだ。お前のためにわざわざここで待ってたんだぞ?」

この場所は彼女達のグループにとって特別な場所らしい。

たまり場、いや、きっと秘密基地なんだ。

でも、できれば僕もプールに行きたかった。

転校は2学期からだけど、使わせてもらえないだろうかと考えてみる。

「でもその様子じゃ、一緒にここで遊ぶのは無理かもな。瑠環ぴょん、どうする?」

「お兄ちゃん、ここ登るのつらい?」

つらい。とは言えなかった。

僕にもお兄ちゃんとしてのプライドがある。

「こ、これくらい何でもないよ。本気になれば、女の子に負けたりはしない」

柄にもなく僕はムキになっていたと思う。

「ふぅん、なら勝負だよ」

「な、なんだよ?」

随分挑戦的な奴だ。まさか喧嘩でもしようって言うんじゃないだろうな?

僕は周囲からはおとなしい方と言われている。兄弟もいないし、友達も似たようなタイプが多かったから、蹴ったり殴ったりの喧嘩なんて小学校に入ってからはほとんどやってない。

しかしそいつは、内心で怯んでいる僕のことなどお構いなしという感じで柔軟なんぞはじめている。

足がほぼ180度開いている。どんだけ体柔らかいんだよ。

見るからに運動できますって感じだけど、この様子だと実際できるんだろう。

「さぁ、こいっ!」

足を開き、腰を低く落として地面に拳を付いたこの独特の構えは・・・。

「相撲かよっ!」

「うん?別に喧嘩したいならそれでもいいよ?」

流石にそれは無い。

女の子を殴るくらいなら負け犬でいいけれど、勝負から逃げるのも格好悪い。

何より瑠環が見ている。瑠環の前で逃げ出すような真似はしたくなかった。

「お兄ちゃん、がんばって」

瑠環も止める気はないらしい。

僕は腹をくくった。

絶対こいつに勝つ。

「土俵は?」

「ん?瞬殺してやるからいらない」

笑って言いやがった。

上等だっ!

僕はミュラと向かい合って、同じように構える。

行司役は瑠環だ。なんか慣れてる気がするのは、きっと目の前にいるこいつのせいだろう。

「はっけよい、のこった!」

体格では勝っているのだ。ぶっとばしてやるつもりでぶつかっていった。

しかし力負けしたのは僕の方だった。

倒れそうになるのを相手にしがみついて堪えようとしたが、あっさり投げられて地面に大の字に倒されていた。

たぶん5秒も経ってないだろう。本当に瞬殺だった。

「ミュラの勝ち。お兄ちゃん大丈夫?」

澄んだ青空を遮って、瑠環が覗き込んでくる。仰向けのまま動かない僕を心配したのだろう。

投げられたダメージはあまりない。あまりにあっけなく負けたことが衝撃的で起き上がれないでいただけだ。

「大丈夫だよ」

格好悪くて顔を背けた。

「・・・弱い。これならまだ瑠環ぴょんの方が強いよ」

「お、お兄ちゃんはまだ慣れてないからっ!」

追い打ちをかけてくるミュラ。

フォローになってない瑠環。

くそっ!

僕は起き上がって言った。

「もう一回だ!」

 

だめだ、勝てない・・・。

時間はそれほど経ってはいないようだが、何度も投げられて僕は全身汗と土にまみれ、膝や肘に出来たは擦り傷からは血がにじんでいる。

「そろそろ降参かな」

一矢も報いることができないまま、僕はもはや起き上がることもできない。

負けを認めざるを得なかった。

「お腹すいた。ねぇ、お団子買ってきて」

しばらくして僕が起き上がれるくらいにまで回復すると、ミュラがこっちを見て言った。

「パシリかよ。なんで僕が」

「負けたんだから当然」

くそっ。だから舐められたくなかったんだ。

「あたしも行こうか?」

「ダメだよ瑠環ぴょん。これはお兄ちゃんを鍛えるためなんだから」

別にお前に鍛えてもらうつもりはない。

「金ならもってないよ?」

もし家から持ってきてまで奢れとか言うようなら、瑠環には悪いけれどこのまま帰ろう。

そう考えて立ち上がった。

「それは大丈夫。これを使いなよ」

そう言ってミュラはポケットからしわくちゃになった紙切れを取り出した。

紙幣ほどのそれには、明らかに子供の手作りといった感じで、だんご10本券と書いてあった。

「これでどうしろって言うんだよっ!」

からかっているんだとしたら、ずいぶん用意周到だ。

「神社の石段下りたところに闇月庵って和菓子屋があるから、そこででそれを見せればいいんだよ?」

「見るからに手作りだろう、使えるのかよ?」

「大丈夫、ちゃんともらえるよ」

ミュラはともかく瑠環は僕を騙したりしないだろう。

ご町内の企画で、こういうサービスをしているお店もあるかも知れない。

「行ってくる」

10分以内というミュラ声を無視して僕は石段を下り始めた。

 

本当にもらえたよ。

まぁ、理由はなんてことは無い。

あの和菓子屋、ミュラの家だったんじゃないか。

闇月庵は木造平屋建ての歴史を感じさせる和菓子屋だった。

そこでお店にいた女性に「おだんご10本券」をみせると、その女性は目を丸くして僕のなりを見た。それで全てを察したらしい。

「娘がごめんなさいね」と言って擦り傷の手当と、3人分の紙皿と紙コップ、麦茶の入った水筒まで持たせてくれた。

それらの入った闇月庵のロゴの入った紙袋をもって、僕は石段を上がっていく。

携帯の時計で時間を見ると20分が立っていた。

ようやく僕が石段を登り終えて見たものは、広場の真ん中で倒れている二人。

「大丈夫かっ!?」

慌てて駆け寄る。

よく聞く熱中症とかだろうか?

すぐに大人を呼ばなければいけない。いや?救急車か?

携帯電話を取り出して、119を押そうとしたところでむくりと瑠環が起き上がった。

心配する僕に、白い歯をみせてVサイン。

晴れやかに笑う顔も蓬色のワンピースも泥だらけだ。

「敵はとったよ」

あっけにとられた僕の手から携帯電話が落っこちた。

「負けたぁーっ!」

大の字になったわんぱくキングの声が夏の空に響いた。

 

「「「乾杯」」」

それを合図に僕たち三人は一気に紙コップの中身を飲み干す。

のどはからからだったし、冷たい麦茶はめちゃくちゃ美味しかった。

「本当にこいつに勝てたのか?」

正直信じられなかったのだが、瑠環は僕の言葉に頷く。

「まわしをしてたら無理だったかも」

それを聴いてなるほどと思った。

今日の瑠環は蓬色のワンピース。ミュラには掴むところがないというハンデがあったわけだ。

「ほら、食べよう。うちのお団子は美味しいよ。今朝わたしも作るの手伝ったんだからね」

もらってきた団子をミュラが紙皿に取り分けている。

団子は10本。僕たちは3人。

ミュラは紙皿に3、3、4で分けると。4本入のを僕にくれた。

「何だよ、いいのか?」

串に刺さった団子は3つ。余った一本は独り占めしなくても、それをバラして分ければいい。

「ん。いっぱい食べて強くなれ」

団子をくわえた瑠環もほむほむと同意の意思を示している。

なんだ、こいつ結構いいやつなんじゃないか。

僕のミュラへの印象はいつのまにか好意的なものに変わっていた。

もらった団子を一本ばらすと一個ずつ二人の皿に置く。

「ミュラは僕に勝ったご褒美、瑠環は敵をとってくれたお礼ってことで」

二人はちょっと不思議そうな顔をして顔を見合わせると、もぐもぐと口の中を空にして。

「もらっておこう」

「いただきます」

二人は同時にその一粒をほおばった。

 

夏休みが終わって、学校が始まると僕もクラスの中で新しい友達ができたりしてそっちと遊ぶことが多くなり、だんだんミュラとは疎遠になっていった。

その後、僕がアークス学園中等部に進学するとすっかり会うこともなくなり、あの夏遊んだ記憶も薄れっていった。

そして1年が過ぎた春。

中等部二年生になって最初の登校日。

桜並木を歩く僕の背中を誰かが叩いた。

「おはようございます、先輩」

振り返ると、知らない少女がそこにいた。

長くて黒い髪をポニーテールにした小柄な子だ。

新入生だろう。真新しい制服が初々しい。

健康的な色の肌と、ややあがり気味の目元が特徴的な、きらきらとした黒目がちの目は彼女の溢れ出る活力を表すかのようだ。

一度会ったら忘れそうにないような可愛い子なのだが、生憎本当に覚えがなかった。

「えっと、君は?前に会ったけ?」

喜怒哀楽がはっきりしているのだろう。その子は不服そうに頬を膨らましてみせる。

「あの?本気で言ってるんですか?」

上目遣いなその様子が可愛くてドキリとした。

「ええ・・・。はい・・・」

「本当の本当にわかんないんですか・・・?」

少女には悪いが、「イエス」と答えざるをえない。こくりと頷く。

少女は諦めたように大きく息をはいた。

「もう。先輩って、頭まで弱い人だったんですね」

なかなかに失礼な後輩だ。

なんだよ、頭までって・・・。

「昔一緒に遊んだじゃないですか?瑠環ぴょんと先輩の三人で」

「あ、あーーっ!」

ようやく思い当たるフシを見つけて、僕は声を上げた。

瑠環を瑠環ぴょんとか変な呼び方してたのは記憶の中で一人だけだ。

言われてみれば、日焼け具合と髪型を変えれば確かにこの顔には見覚えが有った。

「闇月庵とこのミュラか、ごめん。わからなかった」

女の子らしい口調で、僕のことを先輩なんて呼んでくるのだ。

目の前の可憐な少女と、かつてのわんぱくキングを同一人物として重ねて見ることが困難で僕は驚きを隠せない。

「こう言ったら失礼かもしれないけれど、すごく女の子らしくなってたから、本当、驚いた」

「えへへ」

僕の反応に満足したようで、ミュラは笑うと時代がかった仕草でスカートのを端をちょこっと掴むと優雅に一礼をしてみせた。

「先輩の方こそ背も伸びて、体つきもなんだか逞しくなって。・・・まあ、わたしはすぐに気がつきましたけど。今ならわたしに勝てるかもしれませんね」

口調や仕草はかわったけれど、雰囲気は変わってない気がする。

あの夏、遊んだあの頃と・・・。

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        あとがき

この話、本当はクレアさんとのデートの前の前座くらいにするつもりだったのですが、これも自キャラ愛故でしょう。

なんか長くなってしまったので番外編扱いです。

過去回というか、相撲回?

ミュラに倒されまくった主人公が変な性癖に目覚めないことを祈ります。

PSO2では非力でダメージが与えられないミュラですが、作中では結構パワフルなキャラということで。

あと、舞台のイメージをつかむために取材をしたりもしました。

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地元にあるお社です。奥に見える石段は実際には昭和ゴジラ並み。

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登ったところ。草ぼうぼうで遊ぶには危ないですが、作中ではもう少し綺麗なイメージで。

きっとミュラ達がが手入れをしてるのです。

まあ、こんな感じ?

さて、PSO2でのチーム名が「ふぁるぷ」となったので、タイトルを変更しました。

いまいちしっくりきてないのでまた変わるかもしれません。「ふぁるぷだいありぃ」って全平仮名で読みにくいですね・・・。これもまた(仮)ということで、いいタイトル思いついたらまた変えます。

仕事が忙しくなって、これから先更新が遅くなるかもしれませんが、しょうがねーなーくらいに思って、期待しないで待っていてくれると助かります。

 

 

 

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挿絵 その3

またもや瑠環さんより挿絵いただきました。

しかも2枚!!

仕事早いですねー。見習わないとです・・・。

すっころびクレアさんは、ゲームとかでもお約束のシーン。

さすが、瑠環さんも譲れないところだったようです。

サプライズのメリアの絵もナイスです。

背後の鬼面・・・。ツボですね。

お見事です。

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いろえんぴつ白書 その3

「あれ?お姉ちゃん傘は?」

しっかり者の妹が姉の手に傘がないことに気がついた。

「ぅ?ぁー、持ってくるの忘れたぁ」

うっかり者の姉は妹に指摘されてそのことに気がついたらしい。空はどんよりと曇っていて、今にも降り出しそうなくらいだ。事実、天気予報では今日から明日にかけて雨となっていた。学校が終わる頃までには間違いなく降り出しているだろう。

「今日は午後から降りそうだよ。ちょっとまってね、折りたたみ傘持ってるから」

妹は鞄から赤い折りたたみ傘を取り出しておろおろしている姉に渡す。

「ぉー、メリアありがとぅ」

笑顔で受け取る姉。

「どういたしまして。あと、お弁当はちゃんと持ってきた?」

「ぅん。例え教科書を忘れても、これだけは忘れないぉ」

「うーん。教科書も忘れないようにしようねお姉ちゃん」

「ぅん・・・」

実に微笑ましい光景だった。

方や姉の方は長い髪をツインテールに垂らし、足には派手な紅白ストライプのニーソックス。よく似た背格好の妹は髪は清楚に頭の後ろでアップにして、着ている中等部の制服もきっちりしている。

「おはよう、吉乃さん」

「ぉー。おはよぅ」

「おはようございます」

二人が僕に気がついて振り返った。

学園でもちょっと知られた美人姉妹。

明るくてポップな印象の姉、吉乃 クレアさんと。

良くできたしっかり者の妹、吉乃 メリアさん。

クレアさんは僕と同じ高等部1年4組のクラスメイトだ。妹のメリアさんはその一つ下で中等部の3年生だが、背丈は同じくらいで双子といっても通じるくらい顔立ちもそっくりだ。

クレアさんが子供っぽい跳ねるような動きで僕の周りをくるくると見回す。

ツインテールの髪と、妹よりやや大きめの胸がゆさゆさと揺れていた。

「あれぇ?今日は瑠環ぴょんとチコにゃんがいないぉ?」

悪かったな。僕一人で。

「そういえば、さっき走って行くのが見えたかも」

「ぅーぅ。教えて欲しかったぁ・・・つまんなぃー」

小さくて可愛い二人は彼女のお気に入りだ。残念そうにクレアさんは肩を落とす。本当、悪かったな、僕一人で。

「まぁまぁお姉ちゃん」

フォローを入れるメリアさん。本当に良くできた妹さんだ。

聞く所によれば成績も優秀で、家事も得意らしい。

去年中等部男子で密かに行われていた彼女にしたい女子アンケートでは常に5位以内に入っていただけはある。

対して姉のクレアさんの方はというと、少なくない特定票は集めていたが上位10名からはランク外となっていた。

ただし、写真部が極秘裏で行っている女子の写真の販売数で見ると、クレアさんがうつっている写真が他の追随を許さないほどの販売数を誇るらしい。

特に体操服姿や、水泳の授業での写真は、その売上で最新のデジタル一眼カメラが買えたという逸話を残したほどだ。

ちなみに僕は買っていないのだが・・・。

「ぅー、どっかーん!」

瑠環もチコちゃんもいなくて退屈した、クレアさんが歩きながら肩をぶつけてくる。

決して太ってはいないがむちむちした体型で当たった感じもやわらかい。

かなり誤解されそうな行動だが、この手のスキンシップは彼女とある程度親しければ普通にあることだ。

だだ、男種族を勘違いさせそうな隙の多いところが、なんとも危なっかしい。

・・・そう、世界はトラップでいっぱいなのだ。

例えば・・・。

「お姉ちゃん足元にバナナの皮がっ!」

ああ、なんてことだろう・・・。

メリアさんの声は悲鳴に近かった。気が付くのが遅れたのだ。

僕もそれを見た。クレアさんがまさに踏み出そうとする先にある黄色い物体を・・・。

メリアさんが手を伸ばす。

いや、だめだもう間に合わない。

バナナの皮を踏んずけたクレアさんの体がぐらっと傾く。

期待を裏切ることなくすっ転んで、あられもない姿を見せるであろう予想した僕はさっと目を閉じて

顔を背けた。

「おぉ~とぉっ!?」

片脚でバランスをとり、バレリーナのようにその場で一回転して停止する。

「エヘヘ~」

照れくさそうにに笑ってVサイン。僕とメリアさんが同時に「おお~」っと感嘆の声を上げて小さく拍手。

その時、パタパタと飛んできた鳩が彼女の頭に止まった。

「ぅ?」

くるっくー。鳩は一声鳴くとまたパタパタと飛んでいった。

「ぉぉぅ!?」

クレアさんが驚いてバランスを崩し・・・、踏まれたままのバナナの皮がその潜在能力を遺憾無く発揮した。

どってーん。

派手に尻餅、というよりひっくり返った。

「お姉ちゃん!?」

「クレアさん大丈夫?・・・なっ!」

息を飲んだ。

「痛いぉ・・・」

目にいっぱい涙を溜めているクレアさんには申し訳ないが、僕の方はそれどころじゃなかった。

吉乃さんのスカートが大きくめくれいる。

ストライプのニーソックスの上の方。絶対領域は崩壊しむっちりと肉付きの良い白い太ももがすっかりあらわになっていた。

そしてその先には・・・。白だった。

「お姉ちゃんスカート!」

「ぅ?ひぃ!」

メリアさんの声に自分の格好に気がついて慌ててスカートを抑えるクレアさん。

その同じタイミングで、僕も顔をそらした。今更遅いっていうのはわかっている。

「ぅぅ~」

半泣きのままメリアさんが手を貸してもらって起き上がるクレアさん。

「ぅーぅ。見たぁ?」

うるうると涙目でこっちをじっと見つめてくる。

「ごめん」

90度の角度で礼。

刺激的すぎる光景はしっかり僕の脳裏に焼き付いている。バレバレの嘘をつくよりましかと素直に謝罪することにした。

「ぅーぅ。メリアぁ~。ボクもうお嫁に行けないぉ」

よよよと泣き崩れるクレアさんをよしよしとなだめるメリアさん。

「先輩」

「な、なんでしょうか?」

背後に、ごごごごご・・・、という擬音がついてきそうな雰囲気に、僕は気を付けの姿勢で固まる。

表面的にはメリアさんはにこやかだが・・・、しかしメリアさんがお姉ちゃん大好き。お姉ちゃん至上主義であることは周知の事実である。

見ちゃったのは悪いけど、全部クレアさんの自爆であり、不条理に思わなくはないが、メリアさんが大好きなお姉ちゃんを辱めた僕を見逃すはずはない。

「先輩、責任とってくださいね」

さらりと重いことを言ってのけるメリアさん。こっちは冷や汗が止まらない。

責任ってどうやってとればいいんだろう。

一生大事にすればいいってことだろうか。

相変わらず涙目のクレアさん。

顔は可愛いし、グラマーだし、性格はちょっと癖があるが明るくていい子だし、ほんわかと柔らかそうで、むちむちしてて・・・。

さっきの光景が頭の中ではっきりと再生されて、僕も腹を決めた。

「今日のことは一生の思い出として大切にいたします!」

メリアさんの背後に黒いオーラを放った般若が見えた気がした。

すみません忘れます。

「僕は何も見ておりません。クレアさんの脚線は健康的で大変すばらしいと感じましたがそれだけです。えっ?クレアさんの今日の下着ですか?黒のレースなんて似合うんじゃないですか?」

僕は太もももパンツも綺麗さっぱっり記憶から消し去ることをその場で誓った。

その誠実な宣誓にメリアさんは満足したようだけど・・・。

「ぅ~ぅ~ぅ」

なぜかクレアさんは電柱の隅で背中を丸めていじけていた。

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結局学校につくまでの時間、僕はクレアさんをなだめ、誤り倒した末、日曜日に好きなおやつをなんでも奢るということで許された。

「エヘヘ。何にしようかなぁ?」

「よかったねお姉ちゃん」

さっきまでとはうって変わって上機嫌になったクレアさん。

今日は学校に着くまでに随分疲れた。、でも一日はまだ始まったばかりなんだよな・・・。

もう帰りたい。そんな気分で僕は校門をくぐった。

 

 


        あとがき

やっと主人公が学校にたどり着けました。

アニメかゲームならここでOPが入ります・・・。

ただそれだけのシーン書くだけなのに結構時間かかってしまいました。

マイルームのパパガイさんクチマネドールが早よ早よと急かす急かす・・・。

まったくもー、誰の仕業ですかね?

さて、今回は吉乃さん回です。

予告通りすっ転んでもらいました。それはもう思いっきり!!

文句は後でいくらでも・・・。

多少のキャラ崩壊は許して欲しいです。

ではではまた~。

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設定の変更

いろえんぴつ白書は、以前あとがきでも記載したとおり、個性的な美少女ぞろいのPSO2でわたしが所属するチーム(類が友を呼んだとも言う)でギャルゲー作ったら面白いんじゃね?から始まった物語です。

いろえんぴつ白書というタイトルは、「いろえんぴつ」というのが、今後改名予定である次期チーム名有力候補だからであって、今後チーム名の確定に伴いタイトルも変更になることを今のうちに申し上げておきます。

さて、このいろえんぴつ白書(仮)ですが、設定がまったく決まってないにも拘らず見切り発車した思いつき企画です。

そのため、後から次々設定が変わります。

その度に文章の方にも修正を入れていまして、今日も今まで主人公の通う学校は、付属高校。付属中学校としてきましたが、物語のネタ的に設定の盛り込みが必要となったため、アークス学園、高等部、中等部変更しました。

やっぱりギャルゲーの舞台といえば学園ですね。

これで登場キャラみんな大人の都合で18歳以上と言い張れます。

しませんけど。

健康的な色気は出しても、エッチなのはダメです。わたしもそんなのかけません。

しかし、このような変更は今後度々あると思います。

まぁ、修正パッチがかかったと思ってくださるとありがたいです。

ここで未定なものと、決定している設定を整理してみたいと思います。

まず、舞台となるのは宇宙を旅するオラクルやアークスシップとは関係なく、地球の現代日本としています。街などの地名はまだ決まっていません。ただ山間の小さな街というイメージは持っています。

主人公たちが通う学校は安直なネーミングですがアークス学園としました。理由は中学校組と高校組みとの垣根をより低くしたかったからというのがあります。

これによって、昼休みに高等部の主人公と中等部の瑠環が昼休みに一緒にお弁当を食べることができるようになるでしょうと・・・。

そんなの書くかわかりませんが、キャラが使いやすくなるということです。

さて次に登場人物の設定です。

キャラの見た目は主人公以外は、チームの方々のキャラの見た目に準じますが、舞台が現代なのでキャストやニューマンといった種族的なものは見ないことにして進めていきます。

主人公。人物名未定。一人称は僕。高等部1年生。成績は瑠環の家で下宿させられるのが嫌で必死に勉強してるため、すごく良くはないけれど割と良いといったところ。運動は並み。

日々成長している幼馴染の瑠環に陥落寸前だが、これでいいのか?と疑問を持っており、本気で恋できる相手を見つけようとするのが物語の大筋です。

吉乃 クレア。主人公のクラスメイトで一人称はボク。メインヒロインです。まだ登場させてないし、どうやってメインヒロインとして他のヒロインキャラと差別化しようか全然思いつきませんが、メインヒロインなのは決まっているのです。髪の色がピンクだったから仕方ないんです・・・。

リコリス。主人公のクラスメイトで悪友。一人称はオレ。ギャグとサービス担当。

ジョウ。主人公のクラスメイト。一人称未定。自称戦士。

ショコミソ。主人公のクラスメイト。一人称未定。メガネでうさみみ生えてる委員長。

ミュラ。主人公の後輩。中等部3年生。一人称わたし。老舗和菓子屋闇月庵の娘で、清楚可憐なわんぱくキング。

吉乃 メリア。クレアの妹。中等部3年生。一人称わたし。お姉ちゃん大好き。

瑠環。主人公の幼馴染兼妹分。中等部2年生。一人称あたし。お兄ちゃん大好き。

Chicory。主人公の後輩瑠環の親友。中等部2年生。一人称チコ。主人公と瑠環の仲を持とうとするが、自分も主人公のことが気になっていて・・・。という王道パターンが期待されます。

もふ。街に出没する謎の占い師。一人称ウチ。

さてさて、るなさんをどう使いましょう・・・?フィリオさんもどうしましょう・・・?

他にもだれかいましたっけ?

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挿絵その2

瑠環さんがまた挿絵書いてくださいました。本当にありがたいですね。

主人公の腕を掴むチコちゃんです。

下の方でむくれている瑠環もかわいい。リコさんと同意見です。

わたしも鞄の描写忘れてましたね~。

瑠環が持って行っちゃったのかな?いや、まさかのナノトランサー?

きっと教科書もノートもすべてアイテムストレージの中です。

さて、次の話では誰が出てくるのかな?

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いろえんぴつ白書 その2

玄関に可憐な花が咲いていた。

とまあ、これは比喩表現である。

白く清純さを感じさせる花が、彼女にはよく似合うだろう。

「おはようございまーす」

背丈は瑠環と変わらないくらいだが、体つきはこっちがだいぶスリムだ。

可愛らしくセットされたさらさらの栗色の髪と、パッチリした目。校則の範囲内でおしゃれに制服を着こなした、いいとこのお嬢さんを思わせる女の子。

ああ、眩しい。元気な声についそう感じてしまった。

純真なものを見て眩しく感じるほど、僕もまだ荒んではいないつもりだったんだが。

「おはよう、チコちゃん」

「はい~」

瑠環の親友でクラスメイトのチコちゃん(Chicory)だ。

一方親友同士の二人は最近お気に入りらしい、謎の挨拶を交わしていた。

「るっわるっわるぅ~」

「ちっこり~」

この妙な挨拶は、僕のクラスメイトが原因となってるのだが、それはまた今度でいいだろう。

 

いつものように前を歩く二人が楽しげにおしゃべりするのを眺めながら、その後ろを彼女達の歩調に合わせて歩く。

僕たちが通うアークス学園は本校である大学のキャンパスはやや離れた場所にあるが、中等部と高等部の校舎は隣あった場所にあり、共用の設備や合同で行われている部やクラブなどがある。だから学校が変わっても、三人でこうして登校するのは変わること無く続いている。

チコちゃんは明るい性格と愛らしい容姿と相まって、入学したときからとても人気があった。そして瑠環も見てくれは悪くない。

そんなふたりを連れて登校してたものだから、やっかまれるのも不本意だけど仕方ないかもしれない。

途中他の生徒からの視線や、殺気を感じたりするし、他にもご近所から奇異の目で見られたり、たまにどこからか通報するような声が聞こえてきたりもする。

まあ、だいぶ慣れてはきたけれども。

前を歩く二人から中間テストの結果について話が聞こえてくる。

元々成績の良いチコちゃんはいい感じだったようだけど、瑠環は・・・。まぁ、いつものことだ。

瑠環はなんでもこなせるようにみえるが、実は勉強のほうはイマイチなのである。

期間中家庭教師役を務めていた身としては、少しは責任を感じないことも無い。

「お兄さん」

チコちゃんが振り返った。

「お兄さんはテストどうだったんですか?」

テストがあった時期は同じくらいだった。その期間中、高等部が早く終わるのを羨ましがられたものだ。

「まあまあだったかな」

一応上の下から中の上くらいの点数は取れていた。

これでも結構頑張って勉強しているのだ。

成績が下がったり、遅刻が多かったりと生活が乱れてるといったことが親の耳に入ったりしたら、僕一人で置いておくのは不安と判断されて、瑠環の家に下宿させられてしまう。

「そうですか。高等部のお勉強は大変そうです」

「覚えることは多いけれど、まだ始まったばかりだからね。それにチコちゃんなら大丈夫さ。成績いいんだし」

横で上目遣いで渋い顔を送ってくる瑠環の方は見ないようにする。武士の情けである。

「チコちゃんならもっといい高校に行けるだろう。ほら、例えば・・・」

僕は近場で名門女子高と言われている学校の名前をあげた。

体育会系のイメージが強い今の学校より、そっちのほうが彼女に似合っているような気がしたからだ。

しかし当人にその気は無いらしい。

「えー。チコは、瑠環ちゃんと一緒がいいですー」

と、いかにも親友らしいことを言うが、僕は内心頭を悩ませる。

アークス学園は中等部、高等部、大学とエスカレーター式ではない。進学する際は外部からくる入学志願者と同じ入学試験を受けなければならない。

たしかに同じ学園内で推薦枠が多いという有利はあるが、これは武道系の部活動に力を入れてる学園が脳筋のために設置しているようなものだ。

現在帰宅部である瑠環にはおそらく縁がない。

それにアークス学園の学力のレベルが低いというわけではない。文武を重んじる硬派な校風で人気が高く、その偏差値は全国の平均より高めである。

このままだと瑠環の進路はだいぶ限られるだろう。

僕の脳裏にはカラフルな頭と着崩した詰襟の男子ばかりが闊歩し、タバコの臭いがそこかしこから漂い、バイクのエンジンと生活指導のゴリラのような先生の怒声が轟く、某工業高校っぽい高校に迷い込んだ哀れな子羊となった二人を思い浮かべてしまった。

やばいな。割と現実的な未来に思える。

「瑠環、名門女子高へ行くため今日から猛勉強だ」

これ以上なく本気だった。チコちゃんのために。

瑠環が僕の制服の袖をぎゅっと掴んだ。

「あたしはお兄ちゃんと一緒がいい」

いじらしい態度は可愛らしいが、それでも相当頑張らないといけないからな?

しかし折角瑠環が目標を示したのだ。協力を惜しむほど薄情なお兄ちゃんであるつもりはない。

とりあえず、今夜お邪魔した時にテストの見直しから初めてみるかと考えてみる。

「それならわたしも一緒でーす」

反対側の腕にチコちゃんがしがみついてきた。

「えっ?チコちゃん?」

あまりに驚いて、考えていた瑠環の学習計画が頭からすっとんでいってしまう。

チコちゃんがこんな積極的な行動にでるのは初めてだ。

正直に言うが、僕はこれまでチコちゃんに触れたことなどほとんど無いのだ。

「えへへ。ずっとやってみたかったんでーす」

頬を赤く染めて、恥ずかしそうに僕を見上げている。

かわいい・・・。自分の顔が熱くなるのを感じる。

「む」

こら瑠環。対抗するな。

左腕にやわらかいものが当たる感触。

しかし残念だったな。世の中にはレア度というものがある。

右腕★11

左腕★6

もっとも衆目の集まる場所での両腕に花状態。

さっきからとても好意的とは言えない視線に晒されて、幸せな両腕と裏腹に背中の方は冷や汗で冷たい。

もちろんまんざら悪い気がするわけでも無いのだが。

「チコちゃんそろそろ・・・」

放して欲しいとはっきり口にできなかった。未練である。

「もうちょっと、こうしてたいです」

「あはは・・・。仕方ないなー」

「むむ」

左腕が軽くなった。

「痛っ!!」

「お兄ちゃんのばーか」

僕の脛を蹴り飛ばし、悪態をついて走っていく瑠環。

おかげで驚いたチコちゃんが腕をはなしてしまったじゃないか。

「まったく、なんてやつだ」

「瑠環ちゃんヤキモチやき屋さんです」

原因を作ったのチコちゃんじゃありませんか?これまで、もしかしたらと思っていたがチコちゃんは結構天然なのかもしれない。

「お兄さん、瑠環ちゃんのこと大事にしてあげないとダメですよ?お兄さんチコのことばかり気にしてました」

「それは仕方ないじゃないか。チコちゃんがあんなことしてくるから」

それを聞いたチコちゃんが、めずらしく眉を釣り上げる。

「それでもお兄さんは瑠環ちゃんのことも意識してあげなきゃダメなんです。さっきだって・・・」

チコちゃんが強く僕の腕を引いた。

「わわっ」

急に体を引き寄せられて、僕はたたらを踏みつつ前のめりになる。僕とチコちゃんの顔が近づく。その距離ほっぺとほっぺの間で役15センチ。

しかし、チコちゃんの表情は真面目だった。

「こうやって、わたしたちを一緒に引き寄せて、『三人で一緒に勉強しよう。ずっと一緒にいられるようにね』って言ってあげなきゃいけなかったんです。お兄さんがチコを見るときは、瑠環ちゃんも忘れちゃダメです。チコに優しくしてくれるのは嬉しいけれど、チコに優しくするときは瑠環ちゃんにも同じくらい優しくしなくちゃいけないんですよ」

そんなスーパーハードな事言えるかっ!

チコちゃんの二股大肯定の言葉に心の中で絶叫する。

年頃のかわいい女の子に同時に優しくするということは、女性に優しくするというフェミニズムや兄弟や娘を平等に接する家族の愛とは違う。

社会一般的には、僕は蹴飛ばされて正しかったはずだ。

しかし愛と、下心と、ヘタレ心について講釈しようとした僕の口は、結局次のチコちゃんの言葉で開かれることは無かった。

「瑠環ちゃんはお兄さんのことが大好きなんです。一緒にいたくて、いっぱい頑張ってるんです!辛いことにも我慢してるんです!だからお兄さんは瑠環ちゃんの気持ちに答えてあげなきゃいけないんです!」

強い口調でそう言ってチコちゃんも走って行ってしまう。

チコちゃんが怒ったところなど初めて見たが、そのことは今頭に無い。考えていたのは瑠環のことだ。

おそらくチコちゃんは僕が知らない瑠環の悩みを知っているのだろう。それも僕がかかわることでだ。

学校で何かあったのだろうか?

小さくなっていくその背中を見送りながら。僕は呆然と立ち尽くしていた。

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とんとん。

フリーズしていた僕の肩を叩くものがいた。

見ず知らずの男子生徒。

いや、こいつはさっきまで僕に敵意むき出しの視線を送っていたやつじゃないか?

そいつは下手なウィンクをして親指を立てて歩いて行った。

その後何人かの男子生徒に、肩や背中を叩いていく。

どいつもこいつも満足気な顔をして・・・。

 

まったく、台無しだった

 

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挿絵をいただきました

先日書いたPSO2小説を読んだ瑠環さんが挿絵を書いてくださいました。

本当にありがとうございます。

せっかくなので話の中に挿ませていただきました。

いじらしい表情のコケティッシュな瑠環さん。たまりませんね。

自分で考えたシチュエーションではありますが、やばいですね。手を出したら犯罪っておもえてきます。

そして話の期待値が上がっていって、わたしも逃げ場無しに・・・。

とはいえ。チムメンをネタにしてしまった以上、半端に終わらせるわけにもいけません。

極力早く次の話をお届けしたいと思います。

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いろえんぴつ白書 その1

                    おことわり

この作品は、セガから発売されているオンラインゲーム。ファンタシースターオンライン2を元に、勝手な解釈と設定を持ち込んで書かれた二次創作物です。

そういったものが苦手という方や、不愉快に思うファンの方もいるかと思います。

まして、作者は素人であり文章もあまり読みやすいものではありません。全ては作者自身の自己満足のために書かれたものですので、本来読むことをお勧めはいたしません。

しかしそれでも、読んでやろうじゃないか!!という方、その後発生する感情を自己責任で処理するという事で、読んでいただけると嬉しいです。

 

 

 

 

愚鈍浅薄脆弱無為、弁えよ。

 

宇宙に轟く声とともに放たれた波動に、僕は大きく吹き飛ばされた。

「ぐっ・・・」

叩きつけられ、僕は奥歯を噛み締めて衝撃に耐える。

なんとか手放さなかった大剣を支えに立ち上がり、周囲を見回す。

傍に仲間の少女が倒れている。何度も死線をくぐり抜け、共に戦った仲間だったが、少女のバイタルを示す反応はすでに消えていた。

倒れた仲間は彼女だけではない。当初12人いた仲間はもすでに僕を含め3人になっていた。

仲間を失った悲しみは既になく、今あるのは恐怖。そして怒りだった。

大剣を構えて、僕は奴を睨みつける。

小惑星ほどの巨体を持つ敵。

奴の表面で小さな爆発がみえた。続いて閃光がはしり、巨体の表面を削り取った。

生き残っていたレンジャーとフォースからの攻撃だった。

しかしそれはそれは巨大な岩の一部に針でつついたほどのものでしかないのは見ていて明らかだった。

 

全力で潰すのみ

 

奴の腕が振り下ろされた。

フォースがテクニックの光弾を放つが、ただ圧倒的な質量の前に茄すべはなかった。

轟音と衝撃が響き、足場にしていたな船の残骸が大きくひしゃげる。

レーダー上にあった彼らの反応が消失した。

最後に残された僕は、唖然それを眺めているしかなかった。

奴が、こちらを見た。僕は自身の最後を悟った。

 

刮目せよ、我こそダークファルス・エルダーなり

 

巨大な影が視界を覆い尽くす。こちらを押しつぶすつもりだろう。

限定された空間で、その巨体から逃れる術もない。

「ちっくしょぉおおおっ!!」

一矢報いようと僕は頭上に大剣をかざす。せめてやつの表面だけでもえぐってやろう。それがやつにとって蚊に刺されるほどの痛みにもならないとわかっていたとしても。

そして、その巨体も拘らず急速に迫った大質量に押しつぶされる衝撃を感じることもなく、僕の意識は消滅した。

 

 

「ぐふぉっ!?」

衝撃で、一瞬で僕の意識は覚醒した。

「るぅわぁ~。なんてことするんだよ」

目を開けると、思った通りの少女の顔。

「おはよ、お兄ちゃん。起きた?」

僕の抗議などどこ吹く風という感じの淡白な声。

多毛症ぎみのややもっさりした髪をゆったり太めに編んだおさげをたらし、着ているのは3月まで僕も通っていたアークス学園中等部の女子用の制服、夏用。

毎朝僕を起こしに来るふたつ年下の幼馴染、瑠環だった。

「ああ、おはよう。・・・まったく、プロレスごっこは卒業したと思ったんだけど?」

年頃の女の子にあるまじき攻撃で僕に強制覚醒をもたらした幼馴染に、僕は眉をしかめ恨みがましくささやかな嫌味を言ってやる。

おそらく行われた攻撃はフライングボディプレス。それも十分高さの乗った一撃だ。

そうでなければ小柄な瑠環の体格であの衝撃は説明がつかない。

しかし、当人はまるで悪びれた様子もなく、僕の上にのしかかったままだ。

だいたい起こしに来たくせに何故マウントポジションをとっているんだ?矛盾してるじゃないか。

「そうかな?今でも友達とよくやるよ?」

何でもないことのように言ってぐいっと僕を押さえつける力が増した。

さすが武の名門アークス学園の生徒。小柄で体重もたいしたことないくせに、身長で20センチ以上は高いだろう僕でも簡単には振り払えそうにない。

しかも、いつのまにかはっきり確認できるようになった胸のふくらみが、半袖の夏用制服から伸びた、ふっくら丸みを帯びた腕に押し上げられて、胸を強調するような姿勢になっている。

思わず顔をそらした。

流石に本気になって取っ組み合うわけにもいかず、僕は交渉のによって我が身の開放を求めることにした。

「・・・起きるからどいてほしい」

顔をそらしたままそれだけ言うのが精一杯だった。

年上のお兄ちゃんとはいえ、僕も思春期真っ盛りの15歳。仕方がないだろう?

要求は受け入れられた。

体にかかっていた圧力が消えて、僕は内心そっと息を吐く。

とはいえ僕は、すぐにベッドから出ることはできない。僕はこの季節の男子にありがちな格好。Tシャツとトランクス姿で寝ていたからである。

以前気が回らずこの格好を瑠環の前に晒したときは、「きゃーっ」という可愛らしい悲鳴と、「お兄ちゃんのえっち」という可愛らしい台詞と、強烈なビンタを喰らうことになった。

「すぐに行くから、先に食べてなよ」

「はーい」

ベッドから降りた瑠環が部屋を出ようとする。だけどその前に聞いておくべきことがある。

犯行動機は明確にしておかなければならない。

「で、今日の起こし方はなんだったのかな?」

返答よっては倍返しだ。とは心の中で付け足した。もちろん物理攻撃ではなく、精神的なものでだ。

「こころぴょんぴょんだったから」

「はい?」

こいつ今なんて言った?

つまりあれですか?ぴょんぴょん気分でやってきて、ぴょんと飛び上がってボディプレスに及んだと?・・・倍返し確定。

瑠環が部屋をあとにするのを音で聴きながら、今度は大きく息を吐いた。

さて、着替えるか・・・。

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体を起こしたとき、ほのかに柑橘系の匂いを感じた。瑠環が残していったシャンプーの匂いだろう。

とたんにドクンと心臓が高鳴ったような気がした。

心の中で警鐘が鳴る。防壁がやばいと。

薄い夏布団ごしに感じた瑠環のやわらかい感触と体温。

真っ白な制服ごしにうっすら透けて見えた下着のライン。

丸い輪郭が制服の上からでもはっきり確認できたバストは。僕の同年代と比べても、良好な成長具合と言えるだろう。

顔だって十分に可愛い部類にはいる。

至近距離で感じた息遣い。僕を見ていたあどけない表情。

感覚とともにさっきまでのやり取りがリアルに思い起こされてくる。

 

ガツン。

 

額を自らベッドの隅に強く打ち付けた。

衝撃と痛みで、頭がくらついたがそれでいい。

そして心に固く冷たい防壁を張る。

瑠環への気持ちが今以上に高まることがないように。

もし瑠環のことを本気で好きになったとして、瑠環は僕の想いに答えてくれるだろうか?

答えのでないまま、感情を持て余したままにして今まで通り、僕は瑠環に接することができるだろうか?

もしかしたら瑠環を傷つけるようなことをしてしまうかもしれない。

つまり今の関係が壊れるか怖いのだ。

僕はまだ高校生になったばかりで、瑠環もまだ中2で、愛だ恋だ、彼氏だ彼女だといった話になるのはまだ先でいいんじゃないか?

先延ばし。それが多感なこの時期をもっとも楽しく過ごせるであろうと導き出した僕の結論だった。

ヘタレ、とか言わないで欲しい・・・。

 

やがて気分を落ち着かせ、着替えを済ませて部屋を出た僕は、いつものように1階へと下りると洗面所で顔を洗い、歯を磨いてからリビングに向かう。

 

僕がリビングに着く頃には、瑠環はもう朝食を食べ終わろうとしているところだった。

瑠環が座るテーブルの反対側。

普段僕が座る席の前には、僕の分のサラダとベーコンエッグがきれいに盛り付けられている。

サラダは袋入りで売ってるものを開けただけだが、ベーコンエッグは瑠環が作ったものだ。

少しやんちゃなところもある瑠環だけど、一般家庭で普通にに作られているような料理なら上手に美味しく作ることが出来る。

彼女のステータス欄には別に料理プロ並みだとか、家事万能といったものがあるわけではないが、瑠環は大抵なんでもそつなくこなす。

それは形よく綺麗にできあがったベーコンエッグが証明している。きみのところは僕の好みに合わせた、しっとりとした硬さ、になっているのは間違いない。

そして僕が入ってくるのを待っていたかのように、トースターがチンと音を立てた。

僕がリビングに入ってくる時間を予測した、完璧なタイミングだ。

「よしっ」

満足のいく結果に嬉しそうな声をあげる瑠環。

「さすが瑠環。タイミングバッチリだ。それにベーコンエッグもおいしそうだしね。ありがとう瑠環」

僕は賞賛とお礼を言うことを忘れない。

瑠環は僕にとって、もったいないくらい良くできた妹分だから、僕もできる限り良い兄貴分でいたいと思う。これは瑠環への好意が、一定以上にならないようにと防壁を作っているのと矛盾しているんじゃないかと分かってはいるが、何より嫌われたくもない。

「えへへ」

はにかみながら嬉しそうに笑う瑠環に再び防壁が軋み始めたが、。僕はそれ以上気持ちが高ぶらないよう、何でもないような顔をして席に着いた。

テレビをつけて、ニュースを見ながらの朝食。

ベーコンエッグは言うまでもなく、丁寧にほどよく塗られたマーガリンに、丁度いい焼き加減のトーストも焼きたてサクサクで、文句なく美味しい。

先に食べ終えた瑠環は、流しで自分が使った食器を洗っている。

僕は極力それを意識しないようテレビの方へと目を向けた。

天気予報では、今日の天気は曇りのち雨。降水確率50パーセント。今日、明日はあまり天気はよろしくないらしい。

休みの日は晴れてくれた方が、遊ぶにしても何にしても気持ちがいい。

明日土曜日はともかく、明後日、日曜日には天気が回復傾向にあるようだ。

(1勝1敗だな・・・)

と、僕どうでもいいことを考えることで、流しで女の子が食器を洗うという事象から連想されるようなことを、僕は考えないようにしていた。

 

さて、ここで僕の家族についても話しておこう。

僕の父さんは地元の博物館の学芸員をやっているのだが、学術調査のために頻繁に海外を行き来していて家にいないことが多い。それこそ月単位でいないこともざらだった。

また母さんも同じ博物館で事務の職員をしていたのだが、この春に僕が高校に上がったところで、「高校生ならもう一人でも大丈夫よね?瑠環ちゃんもいるし」などと言って、父さんについていってしまった。

うちの親と瑠環の親とは仲がよく、家も近所で昔から家族ぐるみの付き合いがあった。

そういう事情により、、母さんから僕のことを任された瑠環は、毎朝僕を起こすついでに、瑠環もこの家で朝食を食べるようになったというわけだ。逆に週3日、僕は夕食を瑠環の家で夕食をご馳走になっている。

本当は毎日でもおいでと言われているが、やはり申し訳なくて居心地が悪いのと、一人暮らしの気ままさを味わいたいという、僕の気持ちをくみとってくれての週3日だ。

「お兄ちゃん今日もうちで食べるよね?何が食べたい?」

洗い物をすませた瑠環が聞いてきた。

僕の都合で不定期に予定が変わったりもするのだが、月曜、木曜、金曜日の晩に瑠環の家でお世話になることになっている。

4月から2ヶ月。もう慣れてもいいようなものだけれど、週に1度以上、必ず聞かれるこの

質問が僕は苦手だった。

いくら親しいとはいえ、よそ様の家の献立に口出しするのは悪いと思っているので、できれば「なんでもいい」で済ませたいのが本心だったが、遠慮しすぎる間柄でもないのも事実だ。

「昨日、僕の意見でシチューにしてもらったからね。今日のメニューを決める権利は瑠環に譲ることにするよ」

できるだけ言葉を選んで返したつもりだったけれど、「ふーん」と瑠環は面白くなさげな反応を見せたが、そこは気がつかないフリをする。

そうこうしてる間にいつもの時間になって、玄関のチャイムが鳴ったので、僕はこれ幸いと、玄関へと向かった。

 

 

 

 

 

                あとがき

 
このお話は、株式会社SEGAのオンラインゲーム。ファンタシースターオンライン2(以下PSO2)で筆者が所属するチームが個性的な美少女揃いということで、このキャラ達でギャルゲーやったら楽しそうだね?というネタから生まれた物語です。

ちなみに、チームのみなさんの許可なんぞ取らずに勝手に出してます。知ったこっちゃないです。

さて、この冒頭の一幕は、幼馴染キャラが寝ぼすけ主人公を起こしに来るという定番シーンです。

幼馴染で妹分という、主人公にもっとも近いポジションのヒロインを演じますはチームのエース瑠環さん。

・・・下手したらわたし、ビジターに降格されちゃうんじゃないかとビクビクしてます。パワハラダメ!!絶対!!

次の登校シーンでは、チームのアイドルChicoryさんを押していきたいとおもいます。

期待しないでまっていてください~。

 

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