PSU学園小説 プロローグ
おことわり
この作品は、セガから発売されているオンラインゲーム。ファンタシースターユニバースシリーズを元に、勝手な解釈と設定を持ち込んで書かれた二次創作物です。
そういったものが苦手という方や、不愉快に思うファンの方もいるかと思います。
まして、作者は素人であり文章もあまり読みやすいものではありません。全ては作者自身の自己満足のために書かれたものですので、本来読むことをお勧めはいたしません。
それでも、読んでやる!!という方だけお読みください。
迎える者たち
ガーディアンズ訓練校の設備は、最新かつ最高のものが揃えられている。
それは訓練場の、環境設備にしても例外ではない。
このGコロニーで、赤く燃えるような夕日が見たかったら、訓練場にくればそれが叶う。
「美しい」
その光景を遠くから眺め、ヘビーガンは誰聞こえることなくつぶやく。
真っ赤な太陽がそこにあった。
太陽は赤茶けた荒野をさらに赤く染め、灼熱の大地を作り出す。
大気がゆがんで見えるほどの強烈な暑さ、と乾いた空気。しかしそれは本物ではない。すべて再現されたものである。
高性能の設備は、決してその風景を楽しむためのものではない。それは過酷なモトゥブの環境を再現するためのものであるはずだった。
ヘビーガンはキャストである。
そして多くのキャストは、自分のように感じることは無いことを彼は知っている。
この光景も、肌で感じる暑さも、焼けるような土の匂いも、全て造られたものだ。そんなものに感慨を持つことなど彼らの中では考えられないことだろう。
しかしヘビーガンは自分はそれでいいと思っている。
赤く染まった訓練場の500メートルトラックでは、今も何人もの訓練生が鍛錬に励んでいる。
トラックを走っていた、訓練生の少女が転んだ。
すると、同じチームの仲間なのだろう。先を走っていた集団から少年1人、転んだ人少女に駆け寄って手を差し伸べる。
しかし少女はその手を振り払うと、自分の力で立ち上がりまた走り出す。そして少年はその少し後ろを少女のペースにあわせて走る。
「美しい・・・・・・」
訓練生の足元に伸びた長い影ぼうしを眺めながら、彼の口からまた同じ言葉が漏れる。
彼が心打たれたのは、高性能な機械が見せる風景だけでは決して無い。
ヘビーガンは、同盟軍第13独立部隊所属の中尉であった。
SEED事件以前では考えられなかった事だが、昨今ではガーディアンズと同盟軍の間で連携作戦が行われることも多くなってきている。
そのためにガーディアンズでは、訓練校の教官として同盟軍から顧問を招き、軍隊式の訓練をそのカリキュラムに取り込むことになった。
ガーディアンズ側から持ちかけられたこの話に、ヘビーガンは志願してその役割を引き受けた。彼はその当時の同盟軍キャストの中では珍しく多種族に対して偏見をもっていなかったのだ。
いや、むしろ彼は、キャスト種族としては極めて珍しいことに「人」が好きだった。
「中尉。訓練生の様子はどうかの?」
背後から声がした。振り返ると小柄な老キャスト。もし自分が女性であったならここで一騒動あったところだろうなと、ヘビーガンは思う。しかし、幸い男性である自分は尻をガードする必要は無い。
「ネーヴ校長。お戻りになられていたのですか」
ルカイム・ネーヴ。このガーディアンズ訓練校の校長だ。
しかし彼はここ最近ガーディアンズとして現場へ赴くことが多く、訓練校を留守にしがちにしていた。
「こっちはようやく一区切りついての。留守中、中尉には迷惑をかけてすまんかったの」
「いえ。こっちも日々色々学ばせてもらってますよ。熱意ある若者を見るのはいいものですね。確かに効率的では無いかもしれ無いが、ここには軍の士官学校には無かったものがあります」
ふぉふぉふぉと、ネーヴが笑う。
「今からそう老け込むこともなかろう?ところで、最近の様子はどうじゃ?しばらく見れんかったが、訓練は進んでいるかの?」
「それなのですが・・・・・・」
ヘビーガンは携帯ビジフォンから入学予定者のデータを取り出した。
その中から、一人のデータを開く。中肉中背で、穏やかで人のよさそうな男がその場に映し出された。
「なぜ教会の守護騎士がここに来るのですか・・・・・・?」
ネーヴはそれに対して、やや言いづらそうに、「むぅ・・・・・・」とうなる。
「・・・・・・それについては一応教会側にも問い合わせてみたんじゃが。どうも教会はこの件にはなんの意図も無いらしくての。処遇は任せるから好きにしてくれと返してきおった」
『騎士』。それは古今東西さまざまな物語の主人公として、時に悪役として描かれてきた、最強無敵のヒーロー。
元の存在は今より遥か昔、今の文明がまだ幾つもの国家に分かれていたころ、教会騎士といわれる者たちが、ある地方を治めていたのがはじまりとされる。
長い時代の変化の中で彼らも姿を消していったとされているが、実際のところ、『騎士』は今でもその役割を変えて現存しており、ときおり気まぐれのようにグラールの歴史に介入する。
その強さはまさに一騎当千。たった一人で戦局を左右するとまで言われ、その活躍はかつて在った数々の戦場で多くの伝説を残している。
そして履歴書に堂々と『守護騎士』と書いてきたのが、フェイト・アストレイという男である。
ただのホラ吹きかとも思われたが、面接や入学試験を担当した者に言わせると、どうも本物らしい。
「そうですか。ならば、早々に卒業いただき、現場で存分にその腕を振るっていただきたいですな」
「アストレイ氏がそれを望めばの。どんな経歴を持とうと、ここでは一介の訓練生にすぎん。全ては当人の意思しだいじゃて・・・・・・」
「ははは。まぁ、そうなのですが」
世界がSEEDの脅威に晒されている今日、せっかくの技能を何故活かさないのか?
彼が噂どおりの力を持っているならば、いったいどれだけの人を救えるのだろう。それを思うとヘビーガンは歯がゆくて仕方が無い。
「ふぉふぉ。こん期の新人はなかなか変り種がそろってるのぅ。守護騎士殿の他にも、モトゥブの狩人に、各機関にブラックリスト入りしているA級ハッカーまでいおる。SEED事件以来ガーディアンズには各方面から人材が集まってきておる。そういったのは頼もしいが、クセも強い・・・・・・。果たして使えるように出来るか、我々の腕のみせどころじゃ」
「ええ。また、財界や同盟軍に強いコネクションを持っている者もいます」
「大手カスタムガンメーカー。ガン・マイト・ウェッソンの御曹司に、外宇宙艦隊指令、マゼラン・モガミ提督のご息女か・・・・・・。こりゃ、やりづらいのぅ」
ガン・マイト・ウェッソン社。
銃器類のカスタムパーツメーカーとして、有名な会社である。フォトンリアクターの製造こそしていないが、この会社の製品は実用的で質が高いため、世界中から支持されている。実際、テノラ・ワークスの銃では、フォトンリアクター以外の大半の製造を、ガン・マイト・ウェッソンに委託することでその品質を保っているとさえ言われていた。
そして、統合軍屈指の名将として知られるマゼラン・モガミ准将。
キャスト社会の同盟軍において、ニューマンでありながら優れた知略と人柄によって外宇宙艦隊指揮官にまでなった人物である。
「そして、あの、吉乃 アレクの妹・・・・・・」
やれやれといった感じでヘビーガンが言う。
ネーブの高笑いが、訓練場の高く見える空へと響いた。
「姉の方は、結局気づかんと卒業していったようじゃが、今度来る妹の方はどうなることか・・・・・・。見ものじゃのう」
訓練生を統括する組織。それが学徒会である。その業務はアルバイトの斡旋や、訓練生の間すごす寮内でのまとめ役といったものであったが、何年か前に吉乃 アレクという男がその代表に就任してからその様相は一変した。
彼は賛同者を集うと、非合法すれすれな危険な依頼や、利益無視の奉仕活動など、企業であるガーディアンズでは受けることのできないような仕事を、訓練生のアルバイトの斡旋を名目に、引き受け始めたである。
今では彼等を、裏のガーディアンズと人は言う。
もちろん教官陣からしてみれば、卒業を放棄して勝手な活動に明け暮れる不良集団なわけだが、
ガーディアンズ本社がようやくその活動の実態を掴み始めたころには、彼らが作り上げていったコネクションは各分野にひろがり、その影響力、活動資金も馬鹿にならないものになっていた。
現在で寮の運営や、訓練校の備品管理などは学徒会が行っており、ガーディアンズ本社もその活動を容認せざるをえなくなってしまった。
この訓練場の基材も、学徒会の提供によるものだ。
「吉乃 メリアは将来有望な訓練生です。人格的に問題無く、素質も高い。そして確固たる目標を持っています。おそらく学徒会に関わることはないでしょう。しかし、彼女に姉がいたとは・・・・・・。さぞ優秀なガーディアンズなのでしょうね」
「んむ。あれはいいものじゃった・・・・・・」
つぶやくように言うネーヴ。
恍惚、遠くを見つめるかのようなネーヴの表情は、そう呼ぶのがふさわしいものだった。
何かの感触を思い出すかのように、ネーヴが後ろで組んだその手がわきわきと動かしてていることに、ヘビーガンが気づくことは無かったが、その様子から、メリアの姉がすばらしい逸材であったとヘビーガンは解釈する。
「ほう。その姉君には、機会があればわたしも会ってみたいですな。」
「そうじゃのう。今、どこで何をしておるのかのう・・・・・・」
そのころ。
「弱った・・・・・・」
ガーディアンズ訓練校。その一角にある訓練生寮。
その最上階には、訓練生を統括するための組織、学徒会のためのフロアがある。
そして、その最も奥。会長室のプレートがかかる豪奢な扉の向こう側。上等な調度品がそろえられたその部屋で、部屋の主。学徒会長である吉乃 アレクはため息をついた。
「次女は長女にべったりだったからな。ここに来ることは当然予想しておくべきことではあったか・・・・・・」
舞い込んできた悩みの種に、頭を抱え、傍らにたつキャストの少女にぼやくように言う。
“Fi-fa” F2000Proto吉乃家に仕えていた教育係であった彼女は、現在アレクの補佐役として訓練校に在籍している。
「やはりまた、メリア様には秘密になさるのですか?」
「当たり前だろう。俺はパルムで真面目に会社員やってることになってるからな」
「はぁ・・・・・・」
妹達が笑って暮らせる世界を創る。それは、妹達に知られること無く行うことが彼の美学だった。
「フィー。おまえこそ、俺の傍にいつまでもいなくていいんだぞ?長女が卒業するとき、一緒についていくものだと思っていたんだが?」
「いえ、貴方を手助けすることが結果的にお二人のためになると信じていますので」
一番将来が心配で、目が話せないのは貴方です。とは、思っても口には出さない。
「うむ。わかってるじゃないか。妹達が幸せに暮らせる世界をつくるには、俺が世界の王様になるのが一番だからな」
そのため、必要な人脈作りのためにと入ってみたガーディアンズだったが、そこで始めた学徒会の活動にすっかりのめりこみ、いつしか数年が経つ。今では裏ガーディアンズと呼ばれるほどまでの規模にまで組織を拡大することができた。
「また、影からこっそり手助けなさるのですか?」
かつてメリアの姉が在学していた時、その卒業のため散々奔走させられたのは彼女だ。
「まさか。次女のことなら心配なんてするだけ無駄だ。手を貸さずとも、すぐ卒業して長女の所にとんでいくだろう。あいつは昔から出来が良いからな」
「さすがアレク様。メリア様のことをよくわかっていらっしゃるのですね」
「そりゃ、お兄ちゃんだからな」
「しかし、いかがいたしましょう?メリア様がご在学の間、アレク様も学徒会長として姿を見せないわけにはいかないでしょう?」
「それはそうだ。新人歓迎のスピーチはちゃんとやるぞ。今回は、ぜひお友達になっておきたいVIPのご子息、ご令嬢もおられるからな」
アレクは腕を組み、しばらく考えていたがやがて顔を上げて言った。
「そうだな。しかたない。また、あの手で行くか」
「クレア様の時に使ったあの手ですか?」
「そうだ。何、また半年ほどの辛抱さ」
アレクは席を立つと、部屋の隅へと足を運ぶ。そこには骨董品の壷や皿、武具といったものが並べて飾られている。
アレクが手に取ったのは、派手な装飾された仮面だった。
前に使ってからほったらかしていたが、掃除や手入れは“Fi-fa” がまめにやってくれているからぴかぴかだ。
それを被り、振り返る。
「皆に伝えてくれ、今日から俺はマスク・オブ・カイチョーだ!!」
“Fi-fa” は小さくため息をついて、自分用の仮面を取り出した。
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コメント
うわっ!フェイト何をやっているのですか?!
まぁ、あいつなら特に問題ないでしょうけどね……
投稿: エトワール | 2013年10月 4日 (金) 14時34分