PSU二次創作小説「星霊の守護者・上」
おことわり
この作品は、セガから発売されているオンラインゲーム。ファンタシースターユニバースシリーズを元に、勝手な解釈と設定を持ち込んで書かれた二次創作物です。
そういったものが苦手という方や、不愉快に思うファンの方もいるかと思います。
まして、作者は素人であり文章もあまり読みやすいものではありません。全ては作者自身の自己満足のために書かれたものですので、本来読むことをお勧めはいたしません。
しかし、どうしても読んでやる!!という方は、後の感情の処理は全て自己責任でお願いいたします。
~星霊の盾・上~
早朝の支天閣に鋭い音が響く。
それは二人の少女が、激しく剣を打ち合わせる音だ。
一人は活動的なショートカットの髪型に、10代とは思えない大人びた雰囲気を持つ少女。カレン・エラ。
小ぶりの一対の小剣と、しなやかな身体から繰り出される体術を組み合わせた、アクロバティックな動きは、まるで舞を舞うかのように優雅だ。
相対するのは、警衛士の制服を着た、仮面をつけた少女だった。カレンより頭ひとつは背の低い小さな身体に、細い両手に不釣合いな二刀流。長い黒髪をなびかせながら、俊敏で縦横無尽な動きでカレンへと打ち込んでいく。
カレンが優雅に宙を舞う蝶ならば、仮面の少女は小刻みに高速で飛び回るトンボといったところだろう。
深く身体を沈ませ、低い姿勢から強く踏み込む。ばねが跳ねるかのような急加速。一瞬で間合いを詰めて必殺の突きをカレンに放つ。
しかしカレンも、その突きを小剣に沿わせる用にいなして交わすと、そのまま身体をひねり片足を軸に、まるでコンパスのように身体を回転させた、強烈な回し蹴りで返礼する。
その蹴りが少女のちょうど仮面の鼻先を捕らえる寸前のところで、少女は身体を後方へと大きくそらせて回避。ばく転で後方へと距離をとると、攻防が逆転。
追撃をかけるカレン。次々繰り出されるカレンの攻撃。それを仮面の少女は巧みにかわす。
一進一退の激しい攻防が続く。傍目には互角に見えるが、カレンの表情にはまだ余裕がある。
かすかに笑みを浮かべたカレンは少女との勝負を心から楽しんでいるようだ。
相手の顔は仮面に隠されて見えないが、もしこの場に達人と呼ばれるものがいたならば、この少女に余裕がないことを見抜くことができただろう。
生き生きと剣を振るうカレンに対し、少女の動きは次第に単調なものへとなってきている。
やがて、一瞬の隙をついたカレンが、相手の剣をかいくぐり、その眉間に小剣の切っ先を突きつけた。
数秒の沈黙。
やがて仮面の少女が力なく剣を降ろした。
「まいりました・・・」
その声はまだ幼い。おそらくカレンより幾つか年下なのだろう。
「こちらこそ有意義だった。ありがとうミュラ」
そしてカレンも両手に持った小剣を納めた。
パチパチ・・・。
カレンとミュラと呼ばれた仮面の少女が、互いに向き合い礼をしたところで小さな拍手が鳴った。
その場にいたもう一人の人物からだ。
カレンの双子の妹であり、教団の象徴。現幻視の巫女。ミレイ・ミクナである。
双子であるがゆえに、ミレイはカレンに背格好と顔立ちがよく似ている。傍目につく大きな違いは、その長い髪くらいだろうか。
しかし細かく言うなれば、カレンよりやや女性らしく丸みを帯びた身体つきや、カレンより柔和で穏やかな雰囲気など、並んで見比べなければ双子であるどころか、姉妹である事さえ気が付くものは少ないだろう。
「今日もお見事でしたわ、姉さん、ミュラ」
ミュラと呼ばれた仮面の少女は、ミレイを前にして深く頭を下げて礼をする
彼女、ミュラ・ルルホは近衛警邏隊に所属する少女である。
「恐れ入りますミレイ様。申し訳ありません。また勝てませんでした・・・」
教団の象徴たるミレイを前にして、一武官としての一定の敬意こそはらってはいるものの、ミュラの口調やしぐさはどこか砕けていて、それはまるで学校生活における先輩、後輩の関係での話し方に近い。
ミレイにしてもそんなミュラの態度を気にする様子も無いようだ。
カレンは詳しく聞いているわけではないが、ミレイとミュラは幼いころからの知り合いらしい。
「うぅ・・・、連敗記録がまた更新です・・・」
カレンが客人として来てからの二週間、ミュラは傍付きの護衛官としてミレイ、カレンと共にここ支天閣で生活している。
カレンとの朝稽古もそれ以来続いているが、それはミュラの連敗記録と一致する。
守るべきミレイの前で客人であるカレンに、連日負け続けているのだから、護衛官としてミュラは立つ瀬が無い。
その表情は仮面で見えないが、肩を落としたその様子から、それなりにへこんでいるようだ。
カレンはそんな彼女に優しく笑いかける。
「ふふ、その歳でそれだけの腕がありながら、ミュラは欲張りだな」
現在ミュラは14歳。カレンとは3つ歳の開きがある。
しかし、ただの年月の差だけでは無いとミュラは感じていた。
身体能力や技量にそれほどの差は感じないのだが、彼女の剣には底の見えない懐の深さがある。
おそらくそれが、経験してきた修羅場の差なのだろう。
過酷な現場、極限状態で培われてきた判断力や応用力、また精神的な余裕。それらが技術だけでは越えられない、厚い壁となってミュラの前に立ちふさがっているのだ。
カレンがガーディアンズになったのは、今の自分と同じ14歳だったらしい。
あと数年歳を重ねたとき、自分は彼女に追いつけているのだろうか?
「それにしても、ガーディアンズは本当に腕がたつのですね。この本山でもミュラに勝てるものはそうはいないというのに」
ミュラの心境など、お構いなしに、ころころと穏やかに微笑むミレイに、ミュラも息を荒げて反論する。
「笑い事ではありませんミレイ様!!わたしには近衛警邏隊の名誉がかかってるです!!」
近衛警邏隊は巫女を守るために存在する。
しかしそれは、名誉職としての意味合いが強く、また危険も少ないことからその大半は名家の出身者などで占められており、その能力にはかねてから疑問視する声も多かった。
その上先日、ミレイの暗殺未遂事件が起こり、それをガーディアンズに助けられるということがあったことから、近衛警邏隊は現在教団内で、肩身の狭い思いをしているのだ。
しかもここ数日は、一般庶民の出身ではあるが、腕と才能を買われて入隊した、期待のホープであるミュラが、ガーディアンズの客人に連敗続きであるという噂がすでに広がっており、ばつの悪さにさらなる拍車をかけることになっていた。
「ん・・・。最近ごはんのおかわりがしづらいんです・・・」
「あはは。それは大変だな」
「カレン様まで・・・。もう、笑い事じゃないのに・・・。最近食堂で、ごはんの盛り方が少ないような気がするんです・・・」
しょんぼりと声を落とすミュラ。それを見てカレンとミレイが同じタイミングで同時にふき出す。
「ん・・・?何がおかしいんですか?」
声を上げて笑う二人にむすっとした声で言う。仮面の下にわずかに見えるミュラの頬が、やや赤みを帯びて膨れているのが見て取れた。
ミレイとカレンは、ひとしきり笑うとミュラをなだめる。
「すまない。笑ってわるかった。ふふふ・・・」
「うふふ、ごめんなさい。でも、食堂の方たちは決してミュラを悪く思ってはいませんよ?ミュラは姉さんと稽古するようになって、食べる量増えたでしょう?」
「ん・・・。それは、力使うんですから仕方ないじゃないですか」
「ああ、そうだな。でも丼で食べるならせめて3杯までにしておけということだ」
「そういえば、私たちガーディアンズと、ミレイが関わった事件のとき、ミュラの姿が見えなかったが、
あのときミュラがいたなら事態が変わっていたかもしれないな」
そう、たしかにガーディアンズがミレイの危機を救ったのは二度あった。
一度目は星霊祭の最中に暴漢が襲い掛かるという事件。
二度目がミレイの乗るシャトルに細工が施され、危険な原住生物が生息する森深くに墜落するという事件。
偶然にも二度ともカレンとその仲間が関わっていたのだが、いずれの事件にもミレイの傍らにこの小さな少女はいなかった。
カレンはミュラを励ますつもりで言ったのだろう。しかし、ミュラとミレイはそれについては苦笑することしかできない。
それはどちらも、星霊祭などの重要な場での警護では、名家出身の者が警護を勤めているという、教団と警邏隊の古い伝統が招いた失態だったからだ。
腕が立つとはいえ、庶民の出身で職歴も浅いため、近衛警邏隊内でのミュラの立場は低い。そのためにミュラは星霊祭期間中、警護仕事を外されていたのである。
だがさすがに事件以降、その体質も変わろうとする動きも出始めている。ミレイの休養期間中、ミュラがミレイの傍突きの護衛官として、共に生活していたのもそのためだ。
「ん・・・。ごめんなさい・・・」
「いや、ミュラがあやまることじゃないだろう?」
「そうですよ。それにミュラには他に大事な用があったでしょう?」
ミレイが携帯ビジフォンをいじると、星霊祭中の映像が映し出された。
それは社で行われた巫女神楽の様子だった。大勢の大衆のまえで、舞う白と赤の巫女装束を着た少女が伝統音楽にあわせて舞い踊る。
「ほう?これはもしかしてミュラなのか?」
舞手の少女の顔はこれまた仮面で隠されてはいたが、小柄な体つきはミュラのものと一致する。
「わわわっ!?ミレイ様、なぜそれを!?」
慌てて声を上げたミュラが、空間投影された画面を必死に手で覆い隠す。
「うふふ。妹弟子の晴れの舞台ですもの。本当はわたしも見に行きたかったのですけれど、どうしても予定が合わなかったので、ナズナ先生に頼んで送ってもらったんですよ」
ミレイの言う「ナズナ先生」というのは、彼女達が師事するナズナ流作法の現家元のことである。
一流の礼儀作法だけでなく、巫女として必要不可欠な雅楽、芸能ごとを彼女達はその「ナズナ先生」に仕込まれた。
「たいしたものじゃないか。こういったものはわたしにはよくわからないが、すごく綺麗だと思う」
「ええ、本当に」
「恥ずかしいです・・・。わ、わたしは不器用で楽器とか全然だめだったから・・・。ナズナ先生も仕方なくわたしにやらせたというか?・・・そんな感じで・・・」
二人にほめられて、ミュラは照れているのか居心地悪そうに体を縮める。
「うふふ。そろそろ食事にいかないと、朝議に遅れてしまいますね。行きましょうか、ミュラ」
「はい。ミレイ様」
暗殺未遂事件から二週間。ミレイは支天閣で療養していたが、今日から公務に復帰することになっていた。
「そうか、ならここでお別れだな」
「え?カレン様帰ってしまわれるのですか?」
「ああ、わたしもそういつまでも仕事休むわけにはいかないからな。」
「そうですか。朝食まではご一緒できるとおもってましたのに」
ミレイはカレンが今日帰ることを聞いていたのだろう。残念そうでは会ったがミュラのように驚いた様子は無かった。
「すまない。これから少し人と会う約束をしているんだ」
「ん・・・。またお会いできますか?」
「ああ、もちろん。また手合わせしよう」
「はいっ。絶対、絶対ですよ!?」
そういってカレンが差し出した右手。ミュラはそれを握り返す。
「ああ、絶対だ。ふふ、あいつらもお前ほどの可愛げがあればいいんだが」
「ん?あいつら?」
「いや、こっちの話だ」
「ガーディアンズは危険な任務も多いと聞きます。どうか、お気をつけて。姉さん」
姉妹は真剣なまなざしでしばし見詰め合う。
ミレイの言葉は祈るかのようだ。
無理も無い。ガーディアンズは今、統合軍と共にSEED事件解決に向けて最前戦で戦っている。
しかし、得体の知れないSEEDウィルスに対して、有効な解決策を見つけられないまま、後手に回らざる得ない状況が続き、ガーディアンズは相当な犠牲をだしつつの消耗戦を強いられている。いくらカレンといえど、確実に生きてまた会える保障なんてないのだ。
「ここへ来てよかった。ミレイやミュラに会えたからな」
カレンはミュラを見て言った。
「守りたいものがたくさん増えた。守りたいものが多ければ多いほど、私は強くなれる気がするんだ。大切な約束もできたしな。だから、また会おう。ミレイ、ミュラ」
そしてその日事件は起きたのである。
・・・続く?
あとがき
月初めに宣言したとおり、小説を一本とりあえずお届けです。
今まで書き溜めたものの中から、一番完成が早そうなものを、削ってまとめてとにかくでっち上げました!!
この「星霊の盾」は、ミュラさんがガーディアンズになる原因になった事件。PSU無印のエピソード、「幻視の巫女」を別サイドから見た話になります。ですから、原作ファンにはかなり不快に思う方もかなり多いかと思っています。
本当にごめんなさい。
趣味でやってることなので、大きな心で流していただけると幸いです。
とりあえず、今後月一回は、小説もあげていきたいとおもいますので、よろしくお願いいたします。
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